高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
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関連作品 《グランド・ジャット島の日曜日の午後》ジョルジュ・スーラ作
「Art and You 創造の世界へ」P.99掲載
《曇りの日のラ・グランド・ジャッド島》ジョルジュ・スーラ作 「高校美術2」P.15掲載

《グランド・ジャット島の日曜日の午後》の習作/1884/油彩/板/15.5×25cm/オルセー美術館蔵
Don de Mlle Thérèse et de M. Georges-Henri Rivière en souvenir de leurs parents 1948 © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
今回紹介するのは、ジョルジュ・スーラ(1859~91)の《グランド・ジャット島の日曜日の午後》(1884~86)のための習作です。点描法で描かれています。スーラに先立つ印象派の画家たちは、絵の具の混色による色彩の濁りを解消するために筆触分割による描画法を編み出しました。並置加法混色の効果を利用した印象派のスタイルは、より鮮やかに光を描き出し、当時の美術界に大きなインパクトを与えました。スーラはそのアイデアを色彩理論や光学理論に基づいて発展させ、独自の点描法に辿りついたのです。そして、その手法はやがて新印象派と呼ばれる芸術運動に繋がっていきます。
スーラが研究した色彩学の中には文豪ゲーテ(1749~1832)の「色彩論」(1810)があります。「若きウェルテルの悩み」「ファウスト」などの文学作品で知られるゲーテは、自然科学者としても多くの著作を残しているのです。スーラはその他にもミシェル=ウジェーヌ・シュヴルール(1786~1889)やオグデン・ルード(1831~1902)の色彩論も参考にしています。この習作の画面下半分、陰になった芝生の部分を見てください。黄緑の芝生の合間に紫の点が打たれています。紫は黄緑とは補色関係に近い色です。色彩学には、隣り合う補色同士の配色では、その2色はお互いを強調し合う、という理論があります。スーラはそういった補色対比を念頭にして、全体の調和をとりながら配色を施し、明るい色彩を演出しているのです。また、並置加法混色では補色同士は明度を高める組み合わせとなります。このことも画面を明るくする一因となっているのです。
数多くの下書きや習作を作るなど、念入りに下準備をしながら、2年の歳月をかけて描きあげられた《グランド・ジャット島の日曜日の午後》には、さまざまな配色の工夫が施されています。
(編集部)
<展覧会情報>
- 新印象派―光と色のドラマ
- 大阪展:あべのハルカス美術館 開催中~2015年1月12日(月・祝)
- 東京展:東京都美術館 2015年1月24日(土)~3月29日(日)
展覧会概要
- 印象派の筆触分割による光の捉え方を、より科学的に理論化した新印象派の作品約100点を展示。印象派のモネの作品から始まり、スーラ、シニャックによる新印象派初期の作品から、マティスの色彩あふれる作品まで、色彩表現の変遷が見どころです。
<美術館情報>
■大阪展:あべのハルカス美術館
- 所在地 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
- TEL 06-4399-9050
- 休館日 月曜日(ただし1月2日は開館)
※12月29日(月)~1月1日(木・祝)は休館
■東京展:東京都美術館 企画展示室
- 所在地 東京都台東区上野公園8-36
- TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 休室日 月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)
<次回展覧会予定>
■あべのハルカス美術館
- 高野山開創1200年記念 高野山の名宝
- 2015年1月23日(金)~2015年3月8日(日)
■東京都美術館
- 大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史
- 2015年4月18日(土)~6月28日(日)
その他、詳細はあべのハルカス美術館もしくは東京都美術館
でご覧ください。