学び!と美術
学び!と美術

発想が浮かばず固まっている、手先が不器用でうまくできない、やる気がなく机につっぷしている…。図工の時間、そんな「気になる子ども」はいませんか?次へ進めるような声かけをしたいけれど、ぴったりな言葉が浮かんでこない…。そんな悩みを抱えている先生もいらっしゃるかもしれません。
「気になる」子どもは、なぜそのような言動をしているのでしょうか?現象として見えている子どもの姿の裏側には、
本連載では、現場の先生から寄せられた「気になる」子どもに関するお悩みについて、畑本先生といっしょに子ども目線で考えたいと思います。
子どもが
子どもはなぜ先生に聞いてきたのでしょうか。
作業手順だけを伝えていませんか?
授業中、子どもたちにどんな言葉で活動内容を伝えているか振り返ってみましょう。たとえば「はじめに輪郭線をかいて、次に絵の具で色を塗って、最後に背景を塗りましょう」なんて
もしそうなら、子どもたちは先生に言われたとおりに「作業」をこなすだけなので、当然「これでいいか」を決めるのは先生、ということになってしまいます。
子どもたちが自分の中にある思いに気付き、表したいことを見付けられるように促す声かけを一緒に考えていきましょう。
子どもに問い返し、お話ししよう
もし子どもたちが「これでいいですか」と聞いてきたら、いっしょに作品について話をしてみましょう。
「いちばん好きなところはどこかな?理由も教えてくれる?」
「そのとき、どんなことがあったのかな?」
「こだわったところを教えて?」
「なるほど!○○のイメージを表したかったんだね。それならどんな色や形がいいかな?」
本人も、自分の心の中にある表したいことやイメージをうまく掘り起こせていないときがあります。子どもとお話ししながら「自分はどうしたいのか」という思いを聞き出し、「そうなんだね」と思いを受け止めてあげましょう。そうすることで、子どもは自分の気持ちに自信をもち、次の「やりたいこと」が少しずつ出てくるはずです。
「手順」をやめたら、子どもたちの「言葉」が変わった!
知り合いの若い先生から、「『うごいて楽しいわりピンワールド』(教科書3・4上p.12-13)をやるんですが、どのように授業を進めたらいいか悩んでいて…」と相談を受けたことがありました。
その先生は、「作品例を見せて、割りピンの使い方を説明して、つくり方を説明して…」と手順を示していく授業をイメージしている様子でした。
そこで、「いろいろな大きさや形の紙を用意しておいたらどうかな?」「割りピンを使ってできる動きを試す時間をとったらどうかな?」とアドバイスしたんです。
授業後、その先生が「
「先生、○○を使いたいんだけど、ありますか?」
「先生、ここをこうしたいんだけど…」
「先生、こんなこと思い付いたよ!見て見て!」
実際に動かしたり試したりする中で、それぞれの思いやアイデアが生まれてきたのですね。
その先生は、これまでは「
「手順」で進める授業はたしかに「安心」なのですが、
実は、先生に言われたとおりに作業するだけのほうが
子どもが見付けたことをしっかりと受け止め、応援し、支えていきたいですね。
富山県富山市生まれ。図工専科教諭として、神戸市の図工教育に長年に渡り貢献。これまでに、神戸市立小磯記念美術館教育普及担当指導主事、神戸市小学校研修図工グループ研究部長、第71回兵庫県造形教育研究大会神戸大会研究局などを務める。初任校は肢体不自由の養護学校であった。特別支援教育コーディネーターも勤め、通常学級における特別支援教育の実践に取り組んでいる。一人一人の育ちの中で幼稚園・小学校・中学校の造形教育のつながりを大切にしている。好きなことは、季節の料理と電車。