学び!と美術
学び!と美術

今さら聞けない? 図工のキホン、あべ先生に聞いてみよう。
「図工で大切にしていることって?」「子どもの意欲を引き出すには?」などなど、図工に関する素朴な疑問やお悩みを、ABCシリーズでおなじみのあべ先生に聞いてみました。
子どもの意欲を引き出す題材名は、どのように考えればいいですか?
子どもたちの活動を観察してみましょう。どんな言葉を使い、どんなことに関心があるでしょうか。そこに子どもの心を動かす題材名のヒントが隠れています。子どもは身体性を感じる言葉がお気に入りです。「だんだん」「どんどん」などの活動の広がりを感じさせる言葉や「ぐるぐる」「ころころ」などの行為の楽しさや、動きの面白さ、「ふわふわ」「キラキラ」などの材料の質感や様態が発想を刺激します。
子どもが使っている「言葉」に注目
学びは喜びです。子どもの造形活動を観察すると、子ども同士で通じ合う「言葉」があります。決して音声として発せられたものだけではありません。まなざしやうなずき、つぶやき、ささやきなど、身体を基にした「言葉」があります。相手に伝えたい言葉もありますが、自分自身に発するような言葉の中にも、子どもの資質・能力が潜んでいます。「これ!なんか、いい!」もその一つです。題材名も、言葉を介しながら子どもの意欲に火を灯す働きがあります。「トントンギコギコ」などは、木を材料にしながら、金づちやのこぎりで、用具を用いて自分の思いを実現する様子まで浮かびます。ますます期待感がふくらみます。
子どもの心に触れる題材名に
題材名には、「トントンギコギコ」のように、おおよその授業内容がイメージできることはもちろん、つくりだす喜びを期待させる「わくわく感」が大切です。また、
「新しい学力観に立つ実践事例」(※1)には、「楽しみ色に輝く空にはしごをかけてのぼったら……、そこは想像もできなかった空の世界」などの題材名が並んでいます。また、補助的な題材名や複数の題材名を付けたりして、子どもの思いを広げたり、具体化するようなことも考えられます。ですから、決まりきった「運動会の絵」などという題材名ではなく、「(運動会での)忘れられないあの瞬間!」など、子ども一人一人の心に届く題材名が大切です。
このコーナーは、ABCシリーズからピックアップしたページを基に、再編集して掲載しています。今回は、「題材のABC」p17をピックアップ。
あべ先生による「ABCシリーズ」は、4コマ漫画で子どもや図工のことを学べる冊子で、累計30万部を発行。4コマ漫画と温かい語り口のコラムによる構成で、長年にわたって小学校の先生方に支持されています。Webサイトで全編をお読みいただけます。また、冊子でお送りすることもできます。
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※1:文部省『新しい学力観に立つ図画工作の学習指導の創造 小学校図画工作指導資料』日本文教出版 1993
1954年生まれ。元北海道教育大学岩見沢校教授。中央教育審議会 初等中等教育分科会教育課程部会 幼児教育部会委員、同芸術ワーキンググループ委員(平成29年)、文部科学省「学習指導要領等の改善に係る検討に必要な専門的作業等協力者主査(小学校図画工作)」(平成29年)などを歴任。著書に子どもや図工のことを学べる『ABCシリーズ』(日本文教出版)、『つくって楽しい 届いてうれしい 絵封筒のABC』(日本文教出版)、絵本『どこにいるの』(文芸社)など多数。