教育情報

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求められる心の健康への配慮
2015.04.22
教育情報 <日文の教育情報 No.136>
求められる心の健康への配慮
東京女子体育大学名誉教授 言語教育文化研究所代表理事 尾木 和英

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■気になる教職員のメンタルヘルス

 複数の学校において学校運営協議会にかかわらせていただいています。委員会の性格上,会議は午後6時ごろに始まり8時過ぎに終わります。
 会を終えて職員室前を通りかかっていて気づかされることがあります。多くの職員が職員室に残り,忙しそうに仕事をされているということです。明日の勤務は大丈夫だろうか。心配になっています。
 平成25年3月,教職員のメンタルヘルス対策検討会議が「最終まとめ」を公表しました。「まとめ」では,「学校教育は,教職員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであることから,教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるようにすることがきわめて重要である」としたうえで,「教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進が喫緊の課題となっている」と述べています。

■多忙化に意識を向ける

 日常的に7~8時までの勤務が行われていると,多忙化への課題意識が乏しくなるのではないでしょうか。まず,多忙化解消への鋭い課題意識が重要です。
 多忙化の実態は学校規模や学校の抱える課題等によって一様ではありません。また,メンタルヘルスに関してもケースによって対応は異なります。学校運営に当たっては,自校の実態を的確に把握し,深刻化を予防するという観点と,具体的な問題への対応という観点の両面から,教員の多忙感,孤立・消耗感,同僚間の人間関係などに対する配慮を中心に検討を加え,適切な対応策を講じることが重要です。
 特に注意を払いたいのは教職員の心の健康です。
 表情が暗く仕事への取り組みが消極的という教職員が見られる,職員室の雰囲気がとげとげしい,というような場合は要注意です。
 心の健康にかかわる問題が認められた場合は,その主たる原因がどこにあるのか,その解消のためには何が必要かといった課題意識が大切です。直ちに検討を加え,問題の改善に機能する体制を整え,適正な対応を行うことが求められます。
 多くの学校で多忙化の解消が課題になっていることを実感します。しかし,多忙化の実態は学校の規模や当面する課題等によって差があります。また同一の学校でも,職員体制や校務分掌などとの関係があって,教員による差も認められます。的確な実態把握が必要です。

■改善の重点把握

 校務に関しては,教育課程の編成,年間指導計画の企画・運営から授業時間の調整,教育評価の企画・実施にいたるまで,その内容は多岐にわたっています。7~8時までかかる仕事の大部分は,子どもの指導にかかわる内容でしょうが,そこにも多くの課題があります。心の健康維持のためには,その内容の整理と分担,職務展開の手順等に目を向けなくてはなりません。
 校長・教頭あるいは主任等として,まず校務にかかわる勤務校の実態,問題点等をきめ細かく把握し,校務の合理化の重点を整理してとらえる必要があります。そして,校長の学校運営方針の下,適正な職務の担当,組織マネジメントの確立によってどう多忙化を防ぎ,組織力の強化にどう結びつけようとしているか,学校体制を再確認するのです。
 特に,各主任や各学校の重点にかかわる職務の担当者に負担が集中しないこと,経験年数の少ない教職員に対する協働体制を整えることが重要です。また,もし問題を抱える教師があるときは助言をし,周囲の同僚が支えあうような人間関係,職場の雰囲気づくりに働きかけることが必要になります。

■協働の職場づくりを目指す

 「新任教師の多忙化は,そのうち解消するだろう」「重要なポストが忙しくなることは,ある程度やむを得まい」こういった認識は事態の深刻化を招く危険をはらんでいます。ここでも,決め手は早期発見早期対応です。次のような早期の働きかけを留意したいものです。
 ・校長の運営方針のもと,各組織の責任者が各部,各担当の任務と組織運営の基本方針を示し,職務展開の
合理化を図って各主任,その他の重点校務にかかわる担当者が力を発揮しやすくする。
 ・特定の教師への職務の集中を改善するため,校内体制,校務分掌に検討を加える。
 ・学年等の会合の設定に工夫を加え,支え合いを可能とする職場づくりに働きかける。

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