読み物プラス

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グローバル人材とアクティブ・ラーニング
2015.10.30
読み物プラス <Vol.20>
グローバル人材とアクティブ・ラーニング
~SNSを活用したピアラーニング~
【特集】ICT教育 NEXT 03
立命館守山中学校・高等学校教諭 木村慶太

1.大学が求めるグローバル人材と連携して(附属校の特色を生かして)

 文部科学省は、平成26年12月22日に発表した中央教育審議会答申において、2020年度より実施される新しい大学入試のあり方について指針を示した。
 この答申においてこれからの時代の大学入試では、従来型の知識の再生を一点刻みで問う選抜方法ではなく、各大学で策定したアドミッションポリシーに基づく、「小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書」などの多元的な評価尺度が必要であるとしている。
 今後のグローバル社会で活躍するには、単に知識を有するだけではなく協働して課題にチャレンジし解決することのできる能力が求められるためである。
 筆者が勤務する立命館守山中学校高等学校は90%以上の生徒が立命館大学へ進学する附属校であり、立命館大学がめざすグローバル人材の育成という視点に基づいた資質・能力を育成する使命を有する。児童・生徒がいかに協働して能動的に学修し、どのような「結果」を出したかが求められ、アクティブ・ラーニングは、そのための学習方法におけるキーワードである。
 筆者らは、アクティブ・ラーニングとは、現行の学習指導要領で重視されている「言語活動」を、ICT活用によってさらに主体的・協働的にそのよさを促進するものであるととらえ、次の教育課程(社会に開かれた教育課程)を視野に入れて新しい「習得」の学習方法について模索してきた。そのひとつが2014年度より始めたRICS(Ritsumeikan Intelligent Cyber Space)と名付けた新しいシステムである。

2.能動的な自学自習のための学習プラットホーム、RICSについて

(画像1)ログイン画面

 本校では、2014年度より一人1台のiPadを持ち(BYOD=Bring your own device) 、学習ツールとしての活用を開始した。その中で、アクティブ・ラーニングにつながる学習ツールとしてRICS(Ritsumeikan Intelligent Cyber Space)と名付けた独自のシステムを使用している。
 RICSは、ISID(電通国際情報サービス)とともに開発をすすめているデジタル問題集である。デジタル問題集や学習のためのソフトウェアは多く市販されているが、学習者が「飽きてしまう」ということが一つの課題となっている。
 RICSでは、その対策として、生徒が興味を持って能動的に取り組めるように「学習マップ」機能を有している(画像2)。RICS内の課題をタイル状に一覧で示し、生徒各自が取り組んだ量ごとに色別表示される。またその課題に取り組んだ人数なども表示される。生徒は、多くのタイルを、100%達成を示す金色にするべく努力している。この学習マップのタイルの色を変えていくことが生徒にとって嬉しいようで、それも積極的に取り組む要因のひとつになっている。
 生徒は、授業の中で問題を解く場面でもRICSを用いており、とくに英語科では「RICSすごろく」と銘打ち、保護者にも見てもらいながらRICS内の課題を通して生徒の復習に活用している。 また、学校から与えられた課題以外でも、生徒が学校以外の時間に自主的に行う自宅学習においてRICSを使用している。その際、有効なのがピアラーニングのためのSNS機能であり、問題単位で生徒及び教師がコメントを書き込むことができる仕組みとなっている。これにより、教師と生徒、あるいは生徒同士が学習コンテンツを介して繋がることができ、「誰が課題を解けたのか」「何人が取り組んだのか」「どの課題を誰が評価・推奨しているか」といった情報が見え、また分からない部分を、教師や他の生徒に質問・相談しながら取り組むことも可能となっている。
 ネット環境の充実によりいつどこにいてもリアルタイムで友人たちと繋がっていることが当然という意識を持っているデジタルネイティブ世代の生徒たちは、この機能をうまく活用している(画像3)。
 「ネット上において、広告の99%はスルーするが、友人からのすすめは90%信用する」とされるデジタルネイティブ世代の生徒たちにとって、友人からの推奨問題は、問題選択のひとつの指針となるようである。今後、このようなネット上における協働作業を活用したアクティブ・ラーニングという手法も、広がっていくのではないだろうか。
 RICSは、SNS機能の他にアクティブ・ラーニングにつながるもう一つの機能として、生徒一人ひとりの能力や学習進捗状況に応じて、適した課題が自動的に提案されるアダプティブラーニング(適応学習)機能を有している。その詳細については、次号で紹介する。

(画像2)学習マップ画面

(画像3)RICS内での協働学習・学びあい

 

木村 慶太(きむら けいた)
立命館守山中学校技術科教諭。奈良県の公立中学校に22年間勤務後、現任校に赴任して8年目。前任校にいたときから、国際理解教育と教科教育を関連づけた実践を行ってきた。その中には、ICTを活用したものも多い。10年間にわたり現在も、国立民族学博物館館外研究員としてその実践研究を継続している。
博物館との連携による国際理解教育の実践は、「第5回ちゅうでん教育大賞」を、また現任校におけるICTを活用した国際理解教育は、「第1回ICT夢コンテスト奨励賞」を受賞している。
立命館守山へのタブレット導入、及び新システムRICS(Ritsumeikan Intelligent Cyber Space)の導入に貢献した。