小学校 図画工作

小学校 図画工作

空気を感じる場所
2009.06.30
小学校 図画工作 <No.001>
空気を感じる場所
~新聞形式カードで思いをふくらまそう~
茨城県ひたちなか市立前渡小学校 横須賀 邦男

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

01

屋外の環境をダイナミックに変身させる題材です。新聞形式の学習カードを用いてつくりたいものへの思いをふくらませます。

指  導  計  画

題材名

空気を感じる場所

時間

4時間

準備

ポリエチレン製荷造り用テープ,はさみ,学習カード

学習目標

テープの飾り方を工夫し身の回りの場所を生かして空気を感じられるような空間をつくる。完成後見せ合うことで,環境造形のおもしろさを味わうことが出来る。

主な学習内容

○森に行き活動場所を決め,試しづくりをしながら作品のイメージをふくらませる。
○テープを巻きつけたり結んだり加工したりしながら空気を感じる場所をつくる。
○作品を見たり中に入ったりして遊び鑑賞する。

主な評価の観点

●仲間とともに空気を感じる場所をつくったり体感したりすることを楽しんでいる。(関心・意欲・態度)
●身の回りの場所の地形や建物,自然物などからテープを用いて空気を感じるような空間を想像することができる。(発想や構想の能力)
●テープを巻く・結ぶ・裂くなどの加工や加飾の方法を考え,工夫して表現することができる。(創造的な技能)
●地形や場所などの環境とテープのたなびきなどから総合的に得られる感覚を楽しみ,環境造形のおもしろさを味わうことができる。(鑑賞の能力)

<伝え合って、全身で感じて>

題材は2つの特徴がある。

①新聞形式カードによる思いや表現の伝え合い、②準備も最小限、短時間でしかも全身で感じられる題材、である。

使用する学習カードを「新聞形式カード」と呼ぶ。「新聞形式」とは2つの意味を持つ。一つは表し方のことである。見出しや記事、図、などである。二つ目は「新聞記者の視点で表す」という意味である。自分の作品や表現を、取材に来た新聞記者の眼になって記事にしていくということである。新聞形式カードを用いて構想や感想などの思いや表現を多面的に表すことにより、それを友人に伝えたり友人から広く見られたりするようにする。その中で友人と時には協調し、友人の作品のよさや美しさを感じたり、それを自分の作品に取り入れたりする。また、自分の作品や表現の確かさを再確認する。

本題材は5学年の造形遊びでグループ単位になって表現したり鑑賞したりする共同してつくりだす活動である。本校内の森の木々にテープを用いて空間を表現する。森に吹く風でテープが風で揺れたりたなびいたりする効果を味わい、自分もテープをくぐる、またぐなどの行為から空気を感じるようにする。

02

新聞形式カード以外で準備するものは、実質テープだけである。ポリエチレン製のポンポンとしてスポーツの応援でもよく使われるカラフルな荷造り用のひものことである。構想で1時間、表現で2時間、鑑賞で1時間で全身で感じられるダイナミックな活動ができる。本活動では森が場所になっているが、校舎からテープを垂らしたり校舎から校舎へとテープを渡したりと様々な応用が利く。立ち木や遊具も活用できる。

<ぴらぴらと音を立て気持ちよい>

授業実践ではまずグループごとに場所を決め、試しに思い思いにテープを木から木へと渡すようにした。児童はそこでテープの感触や風に触れる音、たなびく様子などを五感を通じて実感した。30分後、新聞形式カードへの記入の時間を取り友人と意見を出し合いながら、実感したことやアイデアをカードにまとめるようにした。

実践事例「空気を感じる場所」03

実践事例「空気を感じる場所」04

森の中央に集合して記入したので、他のグループとカードを見たり見せたりしてそのよさや美しさを確かめ合った。この活動で、グループ一人一人の考えが分かり作品づくりの道筋を立てることができたと考える。第2・3時は友人と協力し合いながら表現を進め完成させた。遠い木にテープを渡したり、はしご状にしたり、房にして渡したテープに付けたりと作品の表現方法が多岐に渡っていた。このようなアイデアの大部分はそれに関する新聞形式カードの記述があまりないため表現する途中で思いついたものであろうと推測される。しかし事前に自分のグループ内で表現に対する意見を交わし、基本と なる構想を明確に持ったからこそ、そのような多様な表現のアレンジができたのだろう。短時間で迷いなく表現し続けた児童が多かったのがその表れと言える。 第4時には見たり中に入ったり遊んだりして自分たちのつくった空間を楽しんだ。その様子をカードにのびのびと記入した。本題材で得た意欲を今後の活動に生 かせるよう、カードには「各地に出現(予定)の空気を感じる場所」という欄を設けたので、テープ以外のものを巻きつけたり、テープの色を虹色にしたりする など、これからつくってみたい場所のアイデアを思い思いにかいた。

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抽出児童のカードや活動を見てみる。つくる前に行った友人へのインタビューを「急ながけの上」や「池の少し上あたり」とカードに記録することができ、思いの広がりと明確さを表せた。活動中はがけをかけ上がったり友人と協力して池の近くまで長くテープを伸ばしたりするなど、新聞形式カードに記した構想を生かして楽しく作業することができた。

実践事例「空気を感じる場所」06

協力して友人との活動を行った後、終末には「他の班のビニールテープと合体し、とてもおもしろい作品を作ることができました。」と、うれしさをカードに表現することができた。そして「各地に出現(予定)の空気を感じる場所」の項目ではテープのたなびく様子を強調した様子をかき表した。意欲的な夢のある表現と言える。

<ひとこと>

実践事例「空気を感じる場所」08

新聞形式カードを使用したことにより、より広い記入欄が確保できたので屋外でも端的に記入でき、また読みやすいカードになった。友人同士でのカードでのアイデアの出し合いも「読んで伝え合う」ことになり想像がより広がった。構想を詳しく示すことができ、作品の主張点を明確にすることができた。終了後もさらにつくってみたい作品を想像できた。

また、インタビューから友人との相互理解が深まりつくりたいものやアイデアが分かり合えたと言える。結果として自分の表現や作品を振り返り、自分の感じたことや考えたことを大切にする態度を養うことができたと判断できる。

実践事例「空気を感じる場所」07

この新聞形式カードは特に話すことが苦手な児童に有効と言える。自分の思いを端的に表現できるからである。図工の活動の中ですべての児童の思いや表現を把握することは困難である。そのような中、新聞形式カードによりより多くの児童の思いや表現を伝えられたらと思う。また、本題材は以上の実践から、限られた時数の中でダイナミック、かつ満足感を得られるものであると言える。材料面からも裂く、結ぶ、垂らす、網にする、渡す、房にするなど本テープの多様性を生かすことは創造力、技術力で有効である。