小学校 社会

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米作りのさかんな地域 ~米作りの問題点を克服しようとするe-FARMの城戸さんたち~(第5学年)
2012.10.09
小学校 社会 <No.003>
米作りのさかんな地域 ~米作りの問題点を克服しようとするe-FARMの城戸さんたち~(第5学年)
福岡県 小学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名

米作りのさかんな地域 ~米作りの問題点を克服しようとするe-FARMの城戸さんたち~

2.目 標

○我が国の米作りの様子について関心をもち,農家の方の安全な米を安定供給しようとする工夫や努力について意欲的に調べ,これからの新しい米作りについて関心をもつことができる。

○我が国の米作りは,自然環境を生かしながら,味や安全性を重視したり効率化を図ったりしていること,それが米の安定確保につながっていること考え,その役割を表現することができる。

○我が国の米作りの工夫や努力,農家の方の願いについて,必要な資料を収集し,選択しながら活用したり,インタビューしたりして調べることができる。

○我が国の米作りが国民の食料を支えていることや農家の抱える問題解決のために,味や安全性を高めたり,効率化を図ったりする新たな取り組みが行われていることをとらえることができる。

3.児童の実態

 本学級の子ども達は,米が主食であり,おいしいものである,毎日の生活の中で欠かせないものであると感じている。一方で,8割の子ども達は,おいしい米があることが当たり前だと考えている。そこで,我が国の農業と国民生活を関連付けたり,問題解決の取り組みから,これからの米作りのあり方を考えることができるようになったこの時期に本単元を取り上げる。

4.教材化の工夫

 本単元では,米作りに従事している農家の人達の生産の効率を高める取り組みと,農家の高齢化や収入減といった米作りの問題点を克服するために,法人化し農家の収入を上げたり,若手の農家を育成し,安心・安全な米作りをしたりして,日本の農業を守っていこうとする取り組みを教材として取り上げる。

・解決できた問題では
 効率よく米の生産を高めていくために月別作業の工夫をしたり,品種改良により味や病気に負けない品種を作ったり,農業機械を導入し耕作時間の短縮や労力の軽減をしたりする取り組み。

・解決すべき問題では
 農家の高齢化や収入減に伴う農家数の減少により,食料生産の確保が将来難しくなるという問題点を克服するための,e-FARMの城戸さんたちの法人化して米作りをする取り組み。

5.人物の生き方を解釈する活動構成

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(1)つかむ段階では,「米の生産量と作付け面積」の資料を調べる活動で,東北地方で米作りが盛んであることを感じ,どうようにして米作りが行われているか調べるめあてをたてる。

(2)さぐる段階では,農業暦や農業機械を導入した前後の生産量がわかる資料から,米の生産を効率よく進めている工夫や努力をとらえ,自分たちがいつも米を食べられることに対して,農家の人々に感謝の気持ちをもつ。さらに,農家の高齢化や収入減により農家数が減っていくことで,米が食べられなくなることから,これらの問題を克服しようとする取り組みを調べるめあてをたてる。

(3)深める段階では,e-FARMの城戸さんらが法人化して米作りに取り組んでいることを調べる。そして,e-FARMの米作りの特徴を出し合い,収穫量を増やしたり,コストを削減して収入を上げたりするだけでなく,時間と経費のかかる堆肥を使用することで味や品質を上げ,安心で安全な米作りに取り組んでいることをとらえる。

(4)生かす段階では,e-FARMのような新しい米作りに取り組んでいる他地域について調べて,これからの日本の農業について関心をもつ。

6.主眼

○e-FARMの城戸さんたちが,法人化によって生産の効率化を図って収入を上げたり,堆肥を使って安全な米作りに努めたりして,米作りの問題点を解決しようとしていることをとらえる。

○法人化して収入が上がった理由を,米の生産量や農業経営費の変化から分析したり,時間と経費がかかる堆肥を使うよさを,e-FARM城戸さんたちと交流したりすることができる。

7.準備

(児童)学習ノート
(教師)流れ図,収入・経費がわかる資料,e-FARM城戸さんたちの写真

8.本時過程

段階

学習活動

主な支援と評価



1.これまで調べてきたe-FARMの取り組みについて振り返り,現在農家の抱える問題をどのように克服しているのか,明らかにしようというめあてをもつ。

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○本時のめあてをつかませるために,e-FARMの取り組みについて調べてきたことを流れ図で想起させる。

e-FARMの城戸さんたちの取り組みが,米作りの問題にどのようにつながっているのか明らかにしよう。



2.e-FARMの城戸さんたちが法人化して米作りを進め,収入や生産を高めていることを調べた資料を関連させながら話し合う。

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○e-FARMの城戸さんらが法人化して収入を上げたことをとらえるために,法人化する前後の資料を提示し,前時に押させたe-FARMの取り組みから考えさせる。



3.e-FARMの城戸さんらが,法人化して効率性だけを求めて米作りをしているのではなく,堆肥を使うことで味や地力の向上のことも考えていることを資料を比較して調べたことと関連してとらえる。

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○e-FARMの城戸さん(GT)の話から,e-FARMの価値についてとらえ,城戸さんたちのこれからの米作りの思いについて考える。

○e-FARMの城戸さんたちが収入を上げるだけでなく,安心安全な米作りに取り組んでいることをとらえるために,化学肥料と堆肥にかかる経費と労力が分かる資料を提示する。

○e-FARMの城戸さんたちの工夫や努力が,我が国の米作りを守り,今後も安定的に食料を供給できることをとらえるために,代表の城戸さんに話(VTR)をしてもらう。
◆e-FARMの城戸さんたちの法人化して行う米作りが,農家の抱える問題を解決していることにつながっていることをとらえている。
(発言・ノート)

e-FARMの城戸さんたちは法人化して収入や生産を高めているだけでなく,安心安全な米作りも行うことで,日本の農業を守っていこうとしている。



4.本時の学習からe-FARMの城戸さんたちの取り組みの工夫や努力について振り返り,自分の考えを生活と関連づけて書く。

○これからの日本の米作りに関心を持たせるために,他地域ではどんな米作りをしているか予想を立てさせ,次時への意欲をもたせる。

私たちの生活は,問題を解決しようとする農家の人々の工夫や努力によって,今後も支えられていくんだね。

9.単元計画(11時間+課外)



学習活動

主な支援と評価



○「米の生産量と作付面積」の資料から,北海道地や東北地方で,米作りが盛んであることをとらえ,なぜ寒い東北地方で米作りが盛んなのかを調べていこうとする意欲をもつ。

米の生産量と作付面積

米の生産量と作付面積

・米は日本中で作られているね。
・でも東北地方の生産量が多いね。

○米の原産地域の平均気温

(左)ジャカルタ (右)シンガポール

(左)ジャカルタ (右)シンガポール

○東北地方の平均気温

(左)仙台 (右)秋田

(左)仙台 (右)秋田

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○米作りは日本全国で行われていることや特に東北地方で盛んに行われていることをとらえさせるために,全国の生産量と作付面積の図を提示する。


○なぜ,寒い東北地方で米作りがさかんなのかを調べようとする意欲をもたせるために,米の原産地域と東北地方の平均気温を比較させる。

◆東北地方で米作りが盛んな理由について調べる意欲をもつことができる。
(ノート・発言)

○判田さんと出会わせ,横手盆地の土地利用や平均気温の資料から,米作りの盛んな理由は,地形的特徴と気候的特徴といった自然条件を生かしたものであることをとらえる。

○地形的特徴

横手盆地の土地利用

・平野のほとんどが田んぼとして利用

○気候的特徴

(左)秋田市と宮古市の平均気温 (右)秋田市と宮古市の日照時間

(左)秋田市と宮古市の平均気温 (右)秋田市と宮古市の日照時間

・夏の日照時間が長い
・平均気温が高い

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○東北地方で米作りが盛んな理由として,自然条件を生かして行われていることをとらえるために,土地利用や平均気温,日照時間が分かる資料を提示する。 

◆東北地方で米作りが盛んに行われている理由について,興味・関心をもつことができる。
(ノート・発言)



判田さんがおいしい米を作っている

○米作りの工夫や努力について調べさせるために,月別の作業工程,品種改良の関係図,耕地整理前後の資料,農業機械の導入前後が分かる資料を準備しておく。

◆課題意識をもって,調べ活動を行うことができる。
(観察・ノート)

○米作りの働きにつて捉えさせるために,子どもが調べてきたことを,図や写真を用いて構造的に板書する。

◆判田さんが,品種改良や生産の効率を高めるための工夫をしながら米作りを行っていることをとらえることができる。
(発言・ノート)

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○判田さんの米作りについて,教科書や資料集から仕組みや工夫・努力について調べ,我が国の米作りのはたらきについてとらえる。

《仕組みや工夫・努力》
・農業暦から月別の作業工程の工夫や努力を整理し,1年間の米作りの流れをつかむ。
・品種の内訳や改良図を比べながら,味や病気に強い品種を作っていることをつかむ。
・資料から農業機械の所有台数の変化や耕地時間の変容,耕地整理による工夫や努力を話し合い,米作りの効率化をつかむ。

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判田さんたちのような農家の人々の工夫や努力によって,私たちは主食である米を食べることができるんだね。

○農家数の移り変わりや農家の収入と支出グラフから全国的に今後農家数が減少していることや,将来的に米の生産量が減っていくことを予想し,米作りの課題について,地元のe-FARMの取り組みについて調べていこうとする意欲をもつ。

(左)農家数のうつり変わり (右)年齢別農業人口のうつり変わり

(左)農家数のうつり変わり (右)年齢別農業人口のうつり変わり

収入・支出・農業経営費の内わけ

収入・支出・農業経営費の内わけ

・米作りはお金がかかり過ぎる。
・経営が赤字になる。 

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○今後,農家の数が減少していくことをとらえさせるために,農家の収入と支出,農業人口の移り変わりのグラフを提示する。


◆今後の農家数の減少による米が食べられない危機感からe-FARMの城戸さんたち取り組みに関心をもつ。
(発言・ノート)



法人化して取り組むe-FARMの米作り

○e-FARMのビデオ見学で,自分の課題を積極的に調べさせるために,インタビューの仕方と内容について指導しておく。

◆課題意識をもって,取材活動を行うことができる。
(観察・ノート)

○e-FARMの城戸さんたちの工夫や努力が,我が国の米作りを守り,今後も安定的に食料を供給できることをとらえるために,代表の城戸さんの話(VTR)をしてもらう。

◆e-FARMの城戸さんたちの法人化して行う米作りが,農家の抱える問題を解決していることにつながっていることをとらえている。
(発言・ノート)

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本時

・法人化する前後の収益,耕作面積の拡大,農業機械の共同使用が分かる資料を関連させ,収入が上がって経費が削減していることをとらえる。
・堆肥を使用し,味や品質といった安心安全な米作りも行っていることをとらえる。

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米作りの問題を改善しようとする工夫や努力によってこれからも私たちは米を食べることができるね。他の地域ではどんな取り組みをしているのかな。



○e-FARMの取り組みやこれまでの学習を振り返り,他の地域ではどんな取り組みが行われているのか調べ,これからの日本の農業について関心をもつ。

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○これからも農業に関心をもたせるために,自分の生活とe-FARMの取り組みを振り返らせる。

◆問題解決に向けた新たな取り組みについて,まとめることができる。
(ノート)