学び!とシネマ
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あなたの「おいしい」、危なくありませんか?
すべての学校給食を自然の味(オーガニック)にしようと、
南フランスの小さな村が立ち上がった。

2006年、パリのユネスコ本部で、「ガンと環境汚染」についてのシンポジウムが開かれている。アメリカの学者が言う。「ガン、糖尿病、不妊の70%は環境が原因」と。
フランスのドキュメンタリー映画「未来の食卓」(アップリンク配給)は、冒頭から、わたしたちに数々のデータを提示する。
フランスの農業での殺虫剤の使用量はヨーロッパ最大で、世界でも2、3番目。子どもたちの給食のシーンでは、ソーセージや水、パン、チーズ、バナナなどの添加物や保存料、含有物などが示される。
南フランス、ガール県のバルジャック村。映画は、この村の小学校が、給食をすべてオーガニックにするという試みを追いかける。
化学汚染がもたらした現実は、ガンや白血病になって、人間を蝕む。食べ物の生産者は、自分たちで作ったものは、口にしない。何をどのように育てて、作るかを知っているからである。
小学校のオーガニックの日、給食のメニューが張り出される。野菜を育てる子どもたちの様子が、いきいきと描かれる。今日は、マーシュ、レタス、玉ねぎの生育の様子をスケッチしたり、葉の成長を観察している。
いろいろな形で、環境汚染や農業の現実が浮かび上がる。飛行機が通っただけで洗濯ものが黄色くなる。年間、世界中で使う化学肥料は1億4千万トン。フランスはここ25年でガンの増加が著しい。除草剤のせいで、頭痛、吐き気がする農家の人。農薬の調合では、毎回、鼻血が出て、尿は出なくなることなどなど。また、水も通さない枯れた土壌と、ミミズのいる生きている土壌の違いも、明確に描かれる。
小学校では、マーシュとブロッコリーが出来る。ビートも生のまま、給食に出る。おいしいという子どももいるし、ポテトフライが好きという子供もいる。
もちろん、工業的生産による食べ物とオーガニックによる食べ物の経済的比較も、いろんな角度から検証される。
小学校と子供たちが始めた取り組みが、少しずつ周りに、変化をもたらし始める。有機に切り替える農家も出てくる。給食のオーガニック化が進み、村のスタンド売りも評判になっていく。
さりげなく、花々に群がる蜂が写し出される。「蜂が消えたら、人類は4年後に滅亡する」とアインシュタインの言葉が添えられる。
小学校では、ラディッシュ、カリフラワー、パセリ、ズッキーニ、玉ねぎが出来る。パセリの茎のにおいを嗅ぐ子どもたち。
環境や健康を守るための、オーガニックという動きが、これからの消費のあり方を見直す大きなきっかけになりつつある。ことはフランスだけではない。日本では、いま、食の環境はどのようなものなのか?
ここ50年ほどで、著しく変化した食事情について、大きく見直すときがきていることを痛感する。
2009年8月8日(土)
シネスイッチ銀座・渋谷アップリンクにてロードショー!
■「未来の食卓」公式サイト
監督:ジャン=ポール・ジョー
プロデューサー:ベアトリス・ジョー
出演:エドゥアール・ショーレ、ぺリコ・ルガッス
製作:J + B SEQUENCES
撮影:ジョエル・ピエロン、アマル・アラブ
音楽:ガブリエル・ヤレド(『ベティ・ブルー』、『イングリッシュ・ペイシェント』)
2008年/フランス/35mm/カラー/ドルビー/112分
配給・宣伝:アップリンク