形 forme
(図画工作・美術)
形 forme
(図画工作・美術)

巻頭のことば より
いま私は,NPOのスタッフとして,子どもたちが学校で,アーティストの授業を体験する機会をつくる調整役のような仕事をしています。
写真にあるのは,2008年10月,横浜市内の公立小学校で実施したアーティストによる授業で5年生の子どもたちが描いた絵です。子どもたちは,水彩絵の具の色彩そのものが表現になることを発見し,さらに,色の並べ方を工夫し,技法を試すことにより自分が考えた以上の表現ができることを楽しみながら体験しました。
この授業は,子どもたちがアーティストと触れあうこと,また,鑑賞の学習を校内に広めたいという学校側の要望があり,それに,菊池敏直さんという画家の見識や視点をあわせて内容を調整し実現したものです。
絵を描くことや鑑賞することについては,たとえば,教科書に載っている水彩絵の具の色彩や技法について知り,試し,自分でかっこいいと思う絵を描いてみること,そして,自分の作品をみて「これいい!」と思う自分がいるかどうかが大切なのではないでしょうか?自分の絵をみるまなざしがあり,その先に,他者が描いた絵を鑑賞する視点が伴うのだと思います。そのために,絵を描く意志と技術をもち,自分や他者の描いた絵を見る見方のヒントも与えることのできるアーティストの存在が役に立つと思います。もちろん,子どもの発達段階に応じた,教える言葉や態度をもったアーティストであることが前提ではありますが…。
水彩画に限らず,子どもたちがより深く美術を楽しく体験する授業を,アーティストの協力によってつくりたいと考える学校の先生がいる場合に,先生とアーティストの間に立ち,それが実現できるよう調整する活動をしているNPOや芸術団体があります。微力ですが私もその一人です。そして,これからも,アーティスト,子どもたち,先生,それぞれの間で,やわらかく揺れ,考え,通訳し,つなぐ役割を担いたいと思っています。子どもたちのためにアーティストの力を借りているのは,一番に私なのかもしれませんね…。
プロフィール
斎藤記念川口現代美術館,神奈川県民ホールギャラリーの学芸員として,現代美術の展覧会およびワークショップを企画運営する。作品と観客をつなぐ,美術館と学校をつなぐ仕事をライフワークとすべくNPO法人STスポット横浜アート教育事業部の仕事をはじめる。
(肩書は,2009年1月31日現在)