教育情報

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学習意欲・学習習慣を重視する指導改善
2009.05.01
教育情報 <日文の教育情報 No.73>
学習意欲・学習習慣を重視する指導改善
東京女子体育大学名誉教授、言語教育文化研究所代表理事 尾木和英

■課題を抱える子どもたち

 このところ、いくつかの学校の授業参観をしていて、気づかされることがあった。学習に取組む子どもの態度である。
 授業開始早々うつぶせになる子ども、形式的に黒板に目を向けてはいるけれども教科書は閉じられたままの子ども、話し合い活動の輪に加わらない子どもが目についた。
 今回の学習指導要領改訂に当たって、基本的な考え方の一つとして学習意欲の向上・学習習慣の確立が明示された。
 各種学力調査結果から把握される学力にかかわる問題の背後に家庭での学習時間など、学習意欲、学習習慣に課題があることも指摘されている。
 こうした課題に関して、
  ①家庭学習も含めた学習習慣の確立、
  ②子どもがつまずきやすい内容、基礎的・基本的な内容の確実な定着、
  ③意欲喚起に留意する学習活動の展開、
  ④意欲・習慣を含めた、学力に課題を抱える子どもへのきめ細かな指導、
などがこれからの学校の重要な課題になっている。

■学校経営上の留意点

 指導改善に際して留意すべきことについて、学習指導要領では次のように示している。
 「主体的に学習に取組む態度を養い、個性を生かす教育の充実に努めなければならない。その際、児童(生徒)の発達の段階を考慮して、児童の言語活動を充実するとともに、家庭との連携を図りながら、児童(生徒)の学習習慣が確立するよう配慮しなければならない。」(小学校学習指導要領総則教育課程編成の一般方針1、(生徒)は中学校、以下同じ)
 「(各教科等の指導に当たっては、)児童(生徒)の興味・関心を生かし、自主的・自発的な学習が促されるよう工夫すること。」(同指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項2)
 すべての子どもの意欲的、主体的な学習を実現させるためには、指導改善を促す学校経営が重要になる。まずは、教育課程編成の基本方針に、学習意欲の向上、学習習慣の確立を明確に位置付け、効果的な展開を推進することができる校内体制を整えることが求められる。
 次に、基本方針に基づく各教科等の年間指導計画のねらいに、学習意欲の向上、学習習慣の確立を明確に位置付け、共通理解を図ることが大切になる。
 指導計画等に形式的に示しただけでは、現実のものとはならない。効果的な指導の展開になるためには、指導改善に向けてすべての教員が課題意識を持って取組む、その取組の重点を明らかにすることが必要になる。
 第一はカリキュラム開発である。いま目の前にしている子どもの実態に立ち、担当する授業のどこをどう改善していくか、学年・学級における指導をどう工夫するかが課題になる。
 第二の課題は、学習環境の整備である。学習意欲に影響を及ぼす学習環境には様々な側面がある。教室環境、学習形態、学習集団づくりなど、カリキュラム開発を支える形での校内研究・研修の充実が欠かせない。

■指導改善の重点は何か

 基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力などの能力を育むことが各学校の中心課題である。その目標実現のためには、すべての子どもが興味を持ち自ら学習を展開させることを重視する授業の成立が大切になる。
 授業者としては、課題意識を持ち、どのような意図で、何をねらいとして指導を展開しようとしているかをとらえるとともに、どのような工夫によって学習意欲を喚起し、学習習慣に結びつけようとするかを考えることが必要である。そこで、次のような点について十分な共通理解を図り、全校指導体制の中ですべての教師が創意工夫を凝らすことが求められる。
  ①授業のねらいが明確に設定され、そのねらいが子どもにも意識されて、子どもの主体的な活動を促す。
  ②目標・活動・評価の筋道が一貫しており、子どもの自己評価・相互評価が授業に効果的に位置付けられている。
  ③指導する内容が、子どもの発達段階、興味関心に合致しており、学習内容が、子どもの問題意識に訴えかけるものになっている。

■決め手となる保護者との連携

 主体的に学習に取組む態度、自ら学ぶという学習習慣を養い、個性を生かす教育を充実させるためには、保護者との連携が欠かせない。家庭との連携を図りながら子どもの学習習慣を育てるためには、どのような働きかけが重要か、全教職員の間で次の点を中心に、十分な共通理解を図ることが配慮されなければならない。

・多様な授業展開によって子どもの学習意欲を引き出し、指導後の家庭学習に結びつく内容について工夫する。
・学校における学習指導の内容が様々な形で家庭に知らされ、課題意識が共有される。そのことによって、子どもの学習習慣の形成が自然に進められる。
・授業公開などによって、学校において展開している学習意欲重視の学習指導について共感的に理解することができるようにし、親子の話し合いを促す。
・子どもの学習習慣の確立には、家庭における働きかけが欠かせないことを説明し、学校、各家庭がともに子どもの指導に当たることができるよう連携を求める。

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