小学校 社会
小学校 社会

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.単元名
「敗戦と人びとの願い」
2.目 標
15年続いた戦争について調べ,中国との戦いが全面化したことや,日本がアジア・太平洋地域において連合国と戦って敗れたこと,日本が戦時体制に移行したことによって人びとが大きな被害を受けたことや,日本が近隣の諸国に大きな損害を与えたことを理解できるようにする。
3.評価の規準
社会的事象への関心・意欲・態度
○15年続いた戦争に関心をもち,それを意欲的に調べている。
○戦争や平和に対して自分なりに考えようとしている。
社会的な思考・判断・表現
○15年続いた戦争について学習問題や予想・学習計画を考え表現している。
○戦争の拡大と人びとのくらしを関連させて戦争が与えた影響について考え,適切に表現している。
観察・資料活用の技能
○写真や地図,表や年表などを活用して,15年続いた戦争について必要な情報を集め,読み取っている。
○調べたことをノートや新聞,年表やポスターなどにまとめている。
社会的事象についての知識・理解
○我が国が戦時体制に移行したことや国民が大きな被害を受けたこと,我が国が近隣諸国に大きな損害を与えたことを理解している。
○15年続いた戦争が与えた影響を理解している。
4.指導にあたって
子どもの実態について
○歴史上の人物の業績や社会に大きな影響を与えた出来事について,自ら意欲的に調べている。
○各単元の終わりには,学習したことやもっと調べてみたいことなどを,絵や図,イラストや年表にして進んでまとめることができている。
○「調べる」段階では,絵や図,表や年表,文書資料などから,各時代の特徴や変化について気付くことができているが,書かれている内容をそのまま写すだけで,自分の言葉で整理し,表現するのは苦手である。
○話し合い活動では,友だちの意見を聞くことが多い。また,互いの意見をもとにして,考えを深め合うまでには至っていない。
教材について
○15年続いた戦争の経緯を調べることで,国民の生活が戦争中心のくらしにかわっていったことや新たな資源を求め占領地を拡大していったことなど,日本が戦時体制に移行していったことが分かる教材である。
○写真や映像,年表や地図,戦争体験者からの聞き取りなどを効果的に使うことにより,児童に戦時中の様子や人びとの気持ちや願いを想像させることができると考える。
○戦時中の苦しい状況の中での人びとのくらしや近隣諸国に対して多大な損害を与えたことを学習することで,戦争の悲惨さを理解するとともに,平和な社会を作る担い手になれるようにしたいと考える。
指導について
○「つかむ」段階では,絵や図,表や年表などの資料を大きく掲示することで,児童全員で資料を共有し,学習問題をとらえることができるようにする。
○「調べる」段階では,観点を明確にすることで,読み取った情報を整理して分かりやすくまとめることができるようにする。
○「考える」段階では,調べたことをもとにして,戦時中や敗戦直後の人びとの気持ちに寄り添うことができるようにする。
○話し合い活動では,少人数で意見を交流する場を設定することで,自分の考えを深められるようにする。その際,似ている所や異なる所を見つけるように支援する。
5.単元の指導計画(全9時間)
時 |
学習のねらい |
子どもの活動と内容 |
評価規準の具体例 |
---|---|---|---|
1 |
大阪空襲の被害の様子から,戦時中の人びとのくらしについて調べ,自分たちの住んでいる大阪市も大きな被害を受けたことに気付くとともに,15年続いた戦争について調べていこうと意欲をもつことができるようにする。 |
○「敗戦直後の大阪市のようす」の写真を見て感じたことを話し合う。 |
自分たちの住んでいた大阪でも空襲があり,大きな被害にあっていたことを知り,15年も続いた戦争中に何があったのか調べていこうという意欲をもつことができたか。 |
3 |
学童疎開について調べ,国は子どもの命を守ると同時に,次の戦力として確保するため集団疎開を実行したこと,疎開した子どもたちはさびしい不便な生活の中で精一杯生きたことを考えることができるようにする。 |
○「疎開先にむかう小学生」の写真を見て話し合う。 |
学童疎開をした子どもの様子から,戦争のために子どもまで戦力として考え,巻き込んでいった当時の日本の様子をとらえることができたか。 |
4 |
戦時中の人びとのくらしについて,文書資料や写真などから調べ,多くの人びとが苦しい生活をしていたことや,生活そのものが戦時体制に移行していったことを理解することができるようにする。 |
○戦争中の人びとのくらしについて話し合う。 |
戦争中の人びとのくらしぶりから,戦争のために自分たちの生活を犠牲にするほど苦しかった様子を理解できたか。 |
5 |
戦争は激しくなり,戦場はアジアや太平洋まで広がっていったことについて,文書資料や地図資料などを使って調べ,占領地域を拡大し,周辺の多くの国々に多大な被害を与えたことを考えることができるようにする。 |
○「広がる戦場」について話し合う。 |
アジアや太平洋に戦争が広がったことによって,アジアの人びとに多大な被害を与えたことを理解することができたか。 |
6 |
沖縄戦の様子について,文書資料や映像資料などで調べ,沖縄に暮らす人びとが大きな被害を受けたことを理解できるようにする。 |
○沖縄戦の資料を見て,話し合う。 |
沖縄戦の様子について文書資料や映像資料などで調べ,沖縄に暮らす人びとが大きな被害を受けたことを理解できたか。 |
7 |
原爆による被害の様子について,文書資料や写真などを使って調べ,原爆が与えた影響や戦争が終結したことを理解できるようにする。 |
○「被爆後の広島」の写真を見て,感じたことを話し合う。 |
原爆による被害について,文書資料や写真などを使って調べ,原爆が与えた影響や戦争が終結したことを理解ができたか。 |
8 |
戦後の日本がバラック小屋でのくらしや食糧不足による買い出し,青空教室での授業を行っていたことを調べ,新しい日本を作ろうと苦しいながらも懸命に生きようとしていたことを理解できるようにする。 |
○敗戦直後の人びとのくらしについて話し合う。 |
敗戦直後の人びとの様子を調べ,敗戦直後の人びとの願いについて理解することができたか。 |
9 |
「ピースおおさか」を見学し,戦争中の主なできごとについて学習したことを具体的に確かめ,戦争や平和に対する自分の考えをまとめることができるようにする。 |
○見学の視点について話し合う。 |
「ピースおおさか」の見学を通して,展示物や資料を読み取り,自分なりの戦争や平和に対する考えを表現することができたか。 |
6.本時の学習
①目標
戦後の日本がバラック小屋でのくらしや食糧不足による買い出し,青空教室での授業を行っていたことを調べ,新しい日本を作ろうと苦しいながらも懸命に生きようとしていたことを理解できるようにする。
②展開
主な学習活動・内容 |
指導の工夫と教師の支援 |
資料 |
---|---|---|
敗戦直後の人びとのくらしについて話し合う。 |
「敗戦直後の大阪市のようす」「敗戦直後の大阪市の人びとのようす」を拡大して提示することで,読み取った情報を共有することができるようにする。「人びとはどこに暮らしていたのかな。」「何を食べていたのかな。」など,敗戦直後の人びとの暮らしについて興味関心をもつことができるようにしたい。 |
・写真「敗戦直後の大阪市のようす」 |
敗戦後,人びとはどのようなくらしをしていたのだろう |
||
敗戦直後の人びとのくらしについて調べる。 |
「青空教室」「墨塗り教科書」「バラック小屋」「闇市」「闇市の価格表」の5つの資料を載せたプリントを配布する。列車の窓につかまる人びと,闇市の様子,敗戦直後の物価の上昇が続いたことなどから,苦しいながらも懸命に生きようとしていたことを調べることができるようにする。 |
・写真「バラック小屋」「青空教室」「やみ市」 |
当時の人びとの願いについて考える。 |
「闇市の価格表」に挙げられていた石けんを実物資料として提示する。当時,石けん1個が闇市では200倍,現在の石けん1個100円の200倍,つまり20000円になることを伝えることで,敗戦直後の生活の苦しさを実感することできるようにする。 |
・文書「敗戦直後の人びとの生活と思い」 |
戦争について話し合う。 |
「敗戦の子どもたち」という墨塗り教科書で勉強した当時の子どもたちの気持ちを表した歌の歌詞を提示することで,苦しい生活を送っていただけでなく,これから新しい日本を作ろうと復興に力を入れていこうとする思いも感じ取ることができるようにしたい。 |
・歌「敗戦の子どもたち」 |
【板書計画】