学び!とシネマ

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ブルーノのしあわせガイド
2013.04.12
学び!とシネマ <Vol.84>
ブルーノのしあわせガイド
二井 康雄(ふたい・やすお)
(c)2011  I.B.C. Movie

(c)2011 I.B.C. Movie

 よき師と出会う。大事なことに気付く。また、多少いい加減でも、ここぞという時に、努力し、全力を出す。これは「教育」にとって、重要なことだろう。イタリア映画「ブルーノのしあわせガイド」(アルシネテラン配給)は、シリアスなテーマを、コメディの見本のように、軽快な笑いにくるんで見せる、まことにハッピーな作品。

(c)2011  I.B.C. Movie

(c)2011 I.B.C. Movie

 中年のブルーノ(ファブリッツオ・ベンティヴォリオ)は、元は教師。いまは、スポーツ選手やポルノ女優といったタレントの伝記などのゴーストライターや、元教師としての経験から、落ちこぼれ生徒の補習塾で、貧しいながらも、なんとか気ままに暮らしている。ある日、ブルーノの補習塾に通う14歳の生徒ルカ(フィリッポ・シッキターノ)の母親マリーナ(アリアンヌ・スコメーニャ)に呼び出される。マリーナはシングルマザーで、仕事の関係で、半年もの間、アフリカのマリに行くことになる。ついては、息子を預かって欲しい、と言う。「いったい、なぜ?」と驚くブルーノに、素顔を見せたマリーナは言う。「私が分からないの?」と。なんと、今から15年前に、ブルーノはマリーナと一晩、過ごしている。ルカは、その時に出来た子供であった。

(c)2011  I.B.C. Movie

(c)2011 I.B.C. Movie

 ブルーノとルカの同居が始まる。ルカはブルーノが父であることを知らない。補習塾と変わらず、相変わらずのタメ語で、ブルーノに接する。実の父子である。パニーノにきゅうりは不要、なんてことまで似ている。思わず、どんな父親だったかと尋ねるブルーノに、「どうせロクな男じゃない」と答えるルカ。

 ブルーノに、ルカの通う高校から呼び出しがかかる。このままでは卒業できないルカに、ブルーノは真摯に向かい始める。ブルーノは、ルカが授業で習っているホメロスの話さながらに、実人生を巧みにおりまぜた教え方をする。すこしずつだが、ルカは勉強に興味を示しはじめる。ブルーノは、相変わらずのいい加減さながらも、必死でルカに接する。ルカもまた、父とも知らず、ブルーノを慕うようになる。ところが、ルカには、麻薬らしきものに手を出している、悪い仲間がいる。そして、ブルーノは、やっかいな事件に巻き込まれてしまうのだが…。
 原題は「Scialla!」、シャッラ。まあまあ、いいから、といったほどの意味だ。人生と適当に、いい加減につき合ってきた父と子が、10数年を経て初めて出会う。そして、肩の力を抜きつつも、父と息子が、本気を出そうとする。このいい加減さが、まことに爽快、まあまあいいから、これでいいよと、幸せな気分になれる。そして、思わぬ人生の出会いが、まことに痛快な結果をもたらしてくれることになる。
 ブルーノのような、先生が日本にもいればいいのだが。
 当初は脚本家、以降、イタリアのテレビで活躍してきたフランチェスコ・ブルーニの監督、脚本、原案になる。劇場用映画の初監督とは思えないほどの実力だ。

2013年4月13日(土)より、シネスイッチ銀座ico_link ほか全国順次公開

『ブルーノのしあわせガイド』公式Webサイトico_link

出演:ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ、バルボラ・ボブローヴァ、ヴィニーチョ・マルキオーニ、フィリッポ・シッキターノ
監督・原案・脚本:フランチェスコ・ブルーニ
(『見わたすかぎり人生』、『副王家の一族』、『ナポレオンの愛人』、『はじめての大切なもの』脚本)
制作:ベップ・カスケット、IBCムービー・プロダクション、ライ・シネマ協力
原題:Scialla!
2011年/イタリア/イタリア語/95分/カラー/ドルビーSRD/
配給:アルシネテラン