小学校 道徳
小学校 道徳

1.はじめに
『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』の第3章1の(3)では,「児童の発達的特質に応じた内容構成の重点化」が取り上げられている。道徳科で扱われている内容項目について,「児童の道徳的価値を認識できる能力の程度や社会認識の広がり,生活技術の習熟度及び発達の段階などを考慮し,最も指導の適時性のある内容項目を学年段階ごとに精選し,重点的に示したものである。したがって,各学年段階の指導においては,常に全体の構成や発展性を考慮して指導していくことが大切である。」と解説があり,道徳的価値が,発達段階に配慮して指導されるべきであることを示している。児童の発達段階や実態に合わせ,内容項目の関連的,発展的な取扱いの工夫を道徳科の中で教師が意図的にねらっていく必要があることを踏まえ,今回の授業実践を行うことにした。
2.課題意識をもたせる授業展開について
本教材は,児童の身近な生活体験が描かれた作品である。主人公のひろしはたつやと1年生の頃から同じクラスで,一緒に勉強したり,遊んだりする仲のよい友達だった。ある朝,たつやはひろしに宿題の算数のノートを見せてくれと言う。すぐに渡さずにいると,たつやは「友達だろう。」と言い,ひろしのノートを持っていってしまう。その後も,写し終わらないので貸してくれと言ってくる。その後,ひろしがたつやに算数の宿題を自分でやるように伝えると,たつやは,「ぼくたちは友達どうしじゃなかったのか。」と言い,2人は一日中,口をきかずに過ごすことになる。ところが,帰りのしたくをするときに,たつやは,ひろしに対してにっこりとほほえみ,2人は「友達」としての思いをお互いに理解していくという内容である。
本教材では,仲良しの友達に頼まれごとをされた主人公が,それを果たすべきかどうか迷いながらも,「友達」とはどうあるべきか自分なりに考えていく姿が描かれている。授業実践では,導入時から「友達」とはどんな存在なのかを児童に課題として問いかけた。児童は,「友達」とはどうあるべきか考える主人公の思いについて自分との関わりで考えることができた。また,自己を見つめる場面で,再度問い直すことで,「友達」に対する自分の考えをさらに深め自覚することができた。
以上の実践から,考える視点を明確にした今回の手法は,教師の指導観を児童にはっきりと示すとともに,児童が自分との関わりで考える姿勢につながったといえる。今後も導入時の発問は,児童の実態や教材の特性に合わせ,丁寧に取り扱っていく必要があると感じた。
3.展開例
■主題名:友達だから
■内容項目:B〔友情,信頼〕
■教材名:「友達だから」(日本文教出版)
■ねらい:自分の思いが伝わったと気付くひろしの気持ちを考えることから,友達と互いに信頼し合い,助け合おうとする心情を育てる。
学習活動 |
◇指導上の留意点 |
|
---|---|---|
導 |
||
○友達がいてよかったなあと思うことを聞かせてください。 |
◆学級の友達と楽しく過ごしている様子の写真を掲示し,場面を想起しやすいようにする。 |
|
展 |
2 教材「友達だから」を読んで,ひろしの気持ちについて考える。 |
|
めあて 「友達」ってどんな人か考えよう。 |
||
◎たつやがにっこりほほえんだのを見たとき,ひろしはどんな思いになったのでしょう。 |
◇ひろしのたつやへの思いが伝わったときの気持ちに気付かせる。 |
|
深める発問 |
||
○自分にとって友達とはどんな人たちですか。また,自分はその友達にとってどんな人でいたいですか。 |
★自分がこれから大切にしたい友達との関わり方を考えることができたか。 |
|
終 |
4 教師の説話を聞く。 |
◆谷川俊太郎の『ともだち』の詩を読み,友達のよさを感じ取らせる。 |