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命の流れ
2009.07.29
生活&総合navi(生活・総合) <生活&総合教室 Vol.55>
命の流れ
い~め~る より
吉川 めい

生活&総合教室No.55 表1 今,わたしの中に新しい命が育っています。
 わたしの身体組織を形成する約60兆の細胞が,再生や死滅を繰り返している中,小さな命はたった一つの種から60兆個の生命溢れる存在へと急激なペースで成長しています。
 今,わたしが一番この子にしてあげたいことは「待つこと」です。この子がわたしに「待つこと」のすばらしさを教えてくれていると言った方が正しいでしょう。母になろうとしているわたしの胸には「待っていたい」という気持ちが自然と湧き出てくるのです。
 一つの命が次の命へとつなごうとする。そんな大自然の流れの中で「待つ」ということの重要性を,わたしはしみじみと感じています。なぜなら待つこととは,自分のあり方を他に押し付けることなく,命本来の自由な流れを尊重することから始まるからです。
 わたしたちが住む現代社会は仕組みや構造を重視し,自由を好むものではないと思います。多くの人は先読みできない流れに恐れを感じます。地位,学歴,年齢,年収など社会によって刻まれた枠に従っていた方が安心感が得られるという錯覚があります。
 しかしどんな枠に収めようと,予想外のことは必ず起きます。どんなメジャーを使おうと,命をはかることはできません。人間に流れる命はほかのどの生命体とも同じで,完全に自由であり大自然に属するものなのです。命の流れは,人が無駄にコントロールしようとせず,せかさず,あるがままを待っていてあげると,自発的にその本来の輝きを最大限に放つとわたしは考えます。
 この「待つこと」とはただ放っておく消極的なことではなく,必要な時に必要なアクションを起こせるよう命のあり方を見守る,愛溢れる行為だと思います。子どもや教育に関しては特にそうです。人として,他の命のあり方に指図しないという尊重であり,逆に無駄な手を加えようとすることは, 「あなたの命のあり方を信頼していない」と言っているようなことだとわたしは思います。
 今,この子がわたしに教えてくれているように,改めて命の流れを観ることはとても大切なことです。命のはかなさ,喜び,感動,そして感謝。すべてはそこにあり,命の流れに浸るだけで自然と出てくる知恵なのです。

吉川 めい

吉川 めい

1980年6月8日生まれ。 東京都出身。
14歳の時に雑誌『装苑』でモデルデビュー。数々のファッション誌で活躍。
98年国際基督教大学へ進学。ファッション誌のほか,広告,番組レポーター,執筆業へと活動の場を広げていく。
01年アシュタンガヨガと出合い,04年,インド・マイソールに渡りシュリ・K・パタビジョイス氏ほかに師事。
06年,日本人女性初のアシュタンガヨガ正式指導資格を取得。日本各地でワークショップを開催している。私生活では,日本で唯一アシュタンガヨガの正式認定資格をもつゴビンダ・カイ氏と結婚。今夏,第一子を出産予定。
オフィシャルサイト Mae Yoshikawa – official site –ico_link