小学校 道徳
小学校 道徳

1.主題名
男女の友情と協力 B[友情,信頼]
2.教材名
「言葉のおくりもの」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)
3.主題設定の理由
(1)ねらいとする価値について
高学年の内容項目B[友情,信頼]では,「友達と互いに信頼し,学び合って友情を深め,異性についても理解しながら,人間関係を築いていくこと。」というものである。
この段階においては,これまで以上に友達を意識し,仲のよい友達との信頼関係を深めていこうとする。また,流行などにも敏感になり,ともすると趣味や傾向を同じくする閉鎖的な仲間集団を作る傾向も生まれる。そのため,疎外されたように感じたり,友達関係で悩んだりすることが今まで以上に見られるようになり,このことが不安な学校生活につながる状況もみられる。このことから,友達同士の相互の信頼の下に,協力して学び合う活動を通して互いに磨き合い,高め合うような,真の友情を育てるとともに,互いの人格を尊重し合う人間関係を築いていくようにすることが求められる。指導に当たっては,健全な友達関係を育てていくことが一層重要になる。この段階が第二次性徴期に入るため,異性に対する関心が強まり,これまでとは異なった感情を抱くようになる。この異性間の在り方も根本的には同性間におけるものと同様,互いの人格の尊重を基盤としている。異性に対しても,信頼を基にして,正しい理解と友情を育て,互いのよさを認め,学び合い,支え合いながらよい関係を築こうとすることに配慮して指導することが大切である。(新学習指導要領解説より)
今回の学習を通して,男女の正しい友情の芽を育て,友情は性別を超えたものであることに気付かせたい。また,互いに信頼し合い,協力し合うことで,明るく楽しい学級が形成されることにも目を向けさせ,一人一人の良さを生かすことの大切さを自覚させたいと考え,本主題を設定した。
(2)児童の実態について
最高学年となり,学校のリーダーであることを自覚して日々の活動に積極的に取り組む姿が見られる。本学級は男子15名,女子17名の学級である。5年生でクラス替えを行い,この学級で過ごすのは2年目ということもあり,男女お互いに慣れ親しんでいる様子が見受けられる。中休みや放課後の時間を一緒に過ごしたり,係活動を協力して行ったりすることもできる。しかし,第二次性徴期に入る児童にとって,少しずつ異性を意識し始めたこともあり,照れや恥ずかしさから素っ気なくしてしまったり,態度が悪くなってしまったりする場面もある。異性に対する正しい理解と男女間の友情を育てていくことが課題であるといえる。さらに,一緒にいて楽しいだけではなく,励まし合ったり忠告し合ったりしてお互いを切磋琢磨する真の友情に発展させていくことが求められる。
(3)教材について
一郎は,すみ子と仲の良いところをたかしに見られ,からかわれたり,周りに言いふらされたりするのを嫌がり,すみ子をわざと避けようとする。小さなことにこだわらない明るい性格のすみ子は,たかしのリレーでの失敗を許し,一郎の誕生日には,すばらしい「言葉のおくりもの」をする,という内容である。揺れ動くこの時期の男女関係を,明るいすみ子,明るい学級の様子を中心に現実の問題として描き,児童をひき付けてくれる資料である。主人公の考えや行動に共感しつつ,お互いに信頼し合って友情を深め,男女相互に理解し,協力する態度を養うのに適した資料であると考える。
教材分析
場面 |
☆主な発問 |
関係する価値項目 |
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1 一郎の消しゴムを拾ったすみ子に感謝の気持ちを表したことで冷やかされる。 |
☆一郎がすみ子に怒った態度をとったのは,どういう気持ちからでしょう。 |
B[友情,信頼] |
2 植木鉢を落とした一郎をすみ子が手伝おうとするが,断る。 |
B[友情,信頼] |
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3 子ども会のリレーで,たかしがバトンをおとしてしまうが,すみ子はそれをかばう。 |
☆リレーで失敗したたかしをかばい,力づけるすみ子を一郎はどのように思ったでしょうか。 |
A[正直,誠実] |
4 一郎の誕生日。すみ子も言葉のおくりものを贈る。教室のあちこちから拍手が起こる。 |
☆誕生日のすみ子の「言葉のおくりもの」に,一郎やクラスの友達はどう思ったでしょうか。 |
B[親切,思いやり] |
4.年間指導計画による位置づけ
○10月…「ロレンゾの友達」
ねらい…友達と共にかかわり合って,互いのよさに気付き,学び合いながら友情を深めようとする心情を育てる。
5.指導の工夫
(1)場の工夫
・児童同士が互いの表情を見て共感しながら話し合えるようにするために,座席をコの字型にする。
(2)導入の工夫
・事前に「友達に関する実態調査」を行い,資料への導入をし,資料の理解を助ける。
・調査結果
6年3組の友情を探れ!! |
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①男女が仲良くすることは大切だと思いますか。 |
はい 32人 |
②大切だと答えた人は,なぜ大切だと思いますか。 |
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③6年3組は,男女の仲が良いクラスだと言えますか。 |
はい 28人 |
④言えると答えた人はどんなところが仲が良いクラスと感じますか。 |
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⑤言えないと答えた人はどんなところが仲が良くないと感じますか。 |
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⑥男女仲良く過ごすためにはどんなことが必要だと思いますか。 |
(3)教材提示の工夫
・話の展開や様子が分かるよう,拡大した挿絵を黒板に掲示する。
・資料を読む際に「一郎」の気持ちになって聞くという読みの視点を示す。
(4)発問の工夫
・一郎の心が少しずつ揺れ動いていくところに発問の焦点をあてた。
(5)展開前段の工夫
・ワークシートを活用する。ワークシートには,挿絵を入れることで,「一郎」の気持ちを考えやすくする。
(6)終末の工夫
・男子から女子へ,女子から男子への手紙を書いたものを渡すことで改めて友情についての考えを深め,それぞれが課題意識や友情への希望を抱いて終わることができるようにする。
6.本時の学習
(1)ねらい
互いに信頼し合って友情を深め,男女相互に理解し,協力する態度を養う。
(2)展開
時 |
学習活動 |
指導上の留意点(●) |
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導 |
1 友達がいてよかったと思った経験を話し合う。 |
・事前の実態調査を十分に活用して,意見を引き出し,学習への方向付けとする。 |
展 |
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◎すみ子の「言葉のおくりもの」を,一郎はどう思ったでしょうか。 |
・すみ子の,男女を超えた友達を思うすがすがしい態度についてじっくりと考え,味わえるようにする。 |
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展 |
3 男女仲良くするためやよい友達であるために,どんなことが大切か,話し合う。 |
・考えを発表させることでお互いの考えや体験を交流し,実践化へとつなげる。 |
終 |
4 男子から女子へ,女子から男子への手紙を渡す。読みながら、思いを深め自分なりの課題をもつ。 |
・それぞれなりの思いや課題意識を大事にしつつ終わることができるよう、静かに読むことを事前に指導する。 |
7.評価
○主人公の気持ちに共感し,互いに信頼し合って友情を深め,男女相互に理解し,協力しようとする心情を高めることができたか。
○男女関係なく,相手を認め信頼し助け合おうとする意欲をもつことができたか。