読み物プラス

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デジタル教科書が現実的になってきたのだろうか。
2010.06.10
読み物プラス <学び!トピックス Vol.22>
デジタル教科書が現実的になってきたのだろうか。
民間主導の団体が生まれた
Webマガジン編集部

 ここのところ教科書のデジタル化に対する動きが加速化してきた。
 話題のiPadのようなデバイスの登場や、電子小説が始まりだし、紙からデジタルへの動きはとまらないのだろうか。
 教科書もまたどんな展開が待ち受けているのだろう。すでに来年から使用される新しい小学校の教科書では、教科によってはデジタル化された教科書が誕生するという。将来的には、児童生徒ひとりに一つが理想だというが…。そんな中、民間主導でひとつの協議会が誕生したのでご報告しておこう。

デジタル教科書教材協議会
デジタル教科書教材協議会

 全ての小中学生がデジタル教科書を持つという環境の実現を目指す「デジタル教科書教材協議会」が、5月27日慶應義塾大学三田キャンパスで設立準備会を開催した。この準備会には、呼びかけ人でもある元東大総長の小宮山宏氏(株式会社三菱総合研究所理事長)、樋口泰行氏(マイクロソフト株式会社代表執行役社長)、嶋聡氏(ソフトバンク株式会社社長室室長)、中村伊知哉氏(慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授)が登壇し、協議会の概要・趣旨説明等を行った。

 協議会は、デジタル教科書教材普及に向けて、課題の整理や、ハード・ソフトの開発、政策提言、実証実験、普及活動等を推進していくとのことだ。協議会の構成は、孫正義氏ら7名の呼びかけ人と、企業からなる幹事会員と一般会員。「現場の先生方、研究者の方々とオープンなコミュニティを作りながら進めていきたい」(中村氏)、とのこと。政府にもオブザーバーとしての参加を求める。産学連携の受け皿、プラットフォームとして機能することを目指している。

 会員の活動としては、勉強会のほか、教科書教材のモデル等を検討する「未来モデル委員会」と普及方策や実証実験を実施する「普及啓発委員会」の活動を予定している。5月25日現在で、幹事として入会を申し込んでいるのが、すでにソフトバンク株式会社、株式会社ベネッセコーポレーション、マイクロソフト株式会社など、12社。一般会員として申し込んでいるのが、ソニー株式会社、株式会社電通、凸版印刷株式会社など18社という状況。

デジタル教科書教材協議会

デジタル教科書教材協議会

 設立準備会において樋口氏は「ビジネスの世界では、コンテンツのデジタル化は当たり前のこと。ITリテラシーはビジネスマンとして基本的な力となってきている。ITの活用は単にデジタルコンテンツをどのように有効活用するかといったことにプラスして、考える力・コラボレーション力などを高める。電子教科書・教材の導入によって、世界の中での日本の競争力・教育力を高めていきたい」と語った。また、嶋氏は、明治維新の義務教育制度導入を例にあげ、「工業社会から情報社会になり、今は100年に1度の国家パラダイムシフトのとき。情報社会にはIT義務教育(情報検索力・思考力)が必要。日本の人材をどうしていくかを考えるときである。パラダイムシフトを具現化するのが電子教科書・教材という思い」と述べ、今が変化のときであると強調した。

 協議会が具体的に何をやっていくかはこれから決定していくということであるが、「会員からの提案をいただいて実行していくことになる」と中村氏。実証実験については、小宮山氏より「どの教科でもいいので、1科目教科書に相当するものを作って1年をかけて実験したいと思っている」との発言があった。

 協議会は7月27日に設立総会を予定している。

※関連URL:デジタル教科書教材協議会 http://ditt.jp/ico_link