学び!とシネマ

学び!とシネマ

書道ガールズ!! -わたしたちの甲子園-(2010年・日本)
2010.04.28
学び!とシネマ <Vol.49>
書道ガールズ!! -わたしたちの甲子園-(2010年・日本)
ひと筆にかけた 思いがある。
二井 康雄(ふたい・やすお
(c) NTV

(c) NTV

 書道は、義務教育で習っただけであるが、字を書くのが好きである。筆だけではなく、鉛筆、万年筆、サインペンなど、いろいろな筆記具で字を書き、紙や筆を買いに、何度も北京に出かけている。
 仕事で、いくつかの書籍のカバーや見出し、雑誌の見出し、映画のタイトルなどの書き文字を書いているが、うまい下手というより、できるだけ楽しい気持ちで、字を書いているつもりである。

 このほど、書道部で活動する女子高校生たちの群像を描いた「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」(ワーナー・ブラザース配給)を見た。
 映画は、字を書く目的はなにかを伝えて、あきさせない。派手な映画ではないが、筆によるパフォーマンスに取り組む高校生の群像を描いて、さわやかである。タッチはコメディだが、随所に泣かせるうまい演出で、笑って、ホロリ。
 そしてまた、友情、師弟や父娘間の対立と和解、活気ある町への再生など、いくつかのエピソードが、ていねいに描かれる。

(c) NTV
(c) NTV

 舞台は、紙の生産で名高い愛媛県の四国中央市。町のどこからでも、製紙工場の煙突が見える、のどかな町である。中央高校書道部の部長、里子(成海璃子)は父が書道家で、小さいころから書道を習っている。副部長の香奈(桜庭ななみ)、里子に負けないほどの腕をしている美央(山下リオ)たちが、里子の仲間である。
 ある日、臨時教員として書道部の顧問に、池澤先生(金子ノブアキ)が赴任してくる。ゲーム機オタクの池澤は、まったく里子たちの活動に無関心、教える気は微塵も感じられない。池澤は、里子たちの前で、音楽にのせての書のパフォーマンス、みごとな腕を披露する。
 書道部の清美(高畑充希)が、池澤のパフォーマンスを見て、感激、なんと演歌の「王将」に合わせて、書のパフォーマンスを始める。「部活にそんなものを持ち込まないで」と、里子は怒る。やがてそれは、停滞する商店街にあって、文房具店を営む清美の家の、閉店セールのためであることが判明する。
 部員は協力しあって、閉店セールにパフォーマンスを実行するも、失敗に終わる。里子のまわりに、美央の退部、清美の引っ越し、いじめにあう部員、幼なじみの実家の紙工場の火事など、つぎつぎと事件が起こる。
 そんな中、里子は、なんとか町に活気を取り戻そうと、ほかの高校に呼びかけての「書道パフォーマンス」を思いつく。
 はじめは無関心だった池澤も、里子たちの熱意に、きびしい特訓をほどこすようになる。

(c) NTV
(c) NTV

 参加高校は4校、太い筆にたっぷりの墨、重さ20キロにもなる筆を操ってのパフォーマンス、まさに「書道の甲子園」が始まろうとしている。ラストは、なかなかのドラマ、ささやかな奇跡が起こる。
 気持ちが沈んだままに字を書いても、だめ。うまい下手ではなく、いかに心をこめて書くか、である。映画からは、字を書く喜び、楽しさが、強く伝わってくる。
 劇中、おおげさではなく、太い筆から飛び散る墨の量は半端ではない。登場人物の顔、衣服に、墨が飛び散る。そして、見る側に、大きな筆で字を書いてみたい、と思わせる迫力に満ちている。
 主役の里子を演じる成海璃子はまだ17歳、健気な部長役を熱演。清美に扮する高畑充希は18歳。やや空気の読めないひょうきんな役どころを、達者に演じる。書のシーンは吹き替えなし、若い俳優さんたちの特訓が実った。
 監督は猪俣隆一。大ヒットした「マリと子犬の物語」に続く第2作目である。

2010年5月15日(土)、新宿バルト9ico_link ほか全国ロードショー

■「書道ガールズ!! -わたしたちの甲子園-」

監督:猪股隆一
脚本:永田優子
音楽:岩代太郎
製作:大山昌作
撮影:市川正明
プロデューサー:藤村直人、坂下哲也
出演:成海璃子、山下リオ、高畑充希、小島藤子、桜庭ななみ ほか
2010年/日本/121分/35mm/カラー/シネマスコープ/SRD
配給:ワーナー・ブラザース映画
宣伝:アルシネテラン