小学校 道徳
小学校 道徳

1.主題名
本来の自由 A[善悪の判断、自律、自由と責任]
2.教材名
「うばわれた自由」(出典:日本文教出版「新・生きる力」)
3.主題設定の理由
(1)ねらいとする価値について
人は、自分の意志を尊重し、自由を求め、おおらかに生きていきたいと考えている。自由だからこそ、自分で判断することができ、自分で行動することもできる。何物にもとらわれない自由な考えや行動は、自主性を生み、自立心を高めていくのである。
しかし、「本来の自由」ではなく、勝手気ままでわがままな「自分本位の自由」を求めた行動は、時として他者の気持ちを考えられず、人に迷惑をかけ、集団への悪い影響につながる場合がある。人として成長していくためには、したいことをしたいがままに行動するだけでなく、自分のわがままな意志を律し、責任を伴うことを自覚した上で、本来の自由を生かした行動をすることが大切である。
児童には、本来の自由についての考えや行動のもつ意味やよさに気付き、自律的に行動しようとする態度を育てたい。
(2)児童の実態について
高学年になり、学校生活において、自主的に考え、行動しようとする児童がいる。一方で、自分の自由のみを追求し、相手や周りのことを考えず、自分勝手な振る舞いをしてしまう様子も見られた。
6月の学校行事の移動教室では、集団での宿泊生活に関わる事前学習において、「自分勝手な言動が集団生活全体に影響があること」と、自律した生活に向けての指導をした。そして、そこでは「自由とはいえ時間は守る」など、自律ある生活をしようとする姿が見られた。
体育科の表現運動では、グループ練習の時間をとり、リーダーを中心に自由に練習する時間を設けている。練習に取り組まず、自分勝手に行動する児童に対しては、グループ全体に関わることを意識できるよう当該児童のグループ全体に指導をした。その後は、自主的、自律的に行動する児童が増えている。
本時では、自由な考えや行動は、自分の責任を伴うことに気付かせ、その自由のよさを感得できるよう日常の道徳教育の学びを深化する道徳授業を行う。自律的な行動で、責任を伴うことが「本来の自由」につながることを気付かせたい。
(3)教材について
森の番人ガリューは、自分の思いのままに行動するジェラール王子に決死の覚悟で、それは誤っていると訴えるが、聞き入れてもらえず、捕えられてしまう。ジェラール王子は、ガリューの訴える「自由」を理解できなかった。自分がしたいことを思うがままにできるからこそ、しばられることがなく、良い生活ができると考えていた。
国内の状況が変わり、ジェラール王子自身も捕えられてしまう。ろう屋でガリューと再会し、ジェラール王子は、「ガリューの言葉を受け入れていれば、国は乱れることもなかった」と言い、はらはらと涙を流す。ガリューがろう屋を出る時、ジェラール王子に「本当の自由を大切にして、生きてまいりましょう」と話す。
児童には、ガリューの言葉を聞いたジェラール王の思いをじっくりと考えさせ、思うままに行動する自由な生き方ではなく、自分を律し、責任を伴う自由のよさや大切さに気付かせたい。
4.指導の工夫
(1)イメージの可視化
事前に「自由」に対するイメージを絵で描かせ、どのような自由を求めているか意識できるようにする。児童は「自分の受けているきまりやルールから解放される自由」や「自分の欲求を満たす自由」を想像している。
導入で数名の児童の絵を紹介し、「自由」ついて共有することで、自分の意志で思うがままに行動できる自由を感じさせる。授業では、自分の意志のままに行動することが及ぼす影響を理解させ、児童が「本来の自由」について主体的に考えられるよう展開していく。
(2)教材提示の工夫
教材は、音楽を流す、間を十分にとるなどの工夫により語り聞かせる。牢屋でガリューとジェラール王が話す後半の場面では、照明を薄暗くし、臨場感を出すことで児童が教材に聞き入り、登場人物の気持ちを自分のこととしてじっくり考えることができる。範読後は、牢屋に残されるジェラール王を見せ、中心場面のジェラールの様子を印象付ける。
(3)グループによる話合い活動
「ほんとうの自由をたいせつにして、生きてまいりましょう」というガリューの言葉を聞いたジェラール王の思いを少人数のグループで考えさせる。「『本当の自由を大切に生きていく』とはどうすることか」と話し合うポイントを児童に投げかけ、「考えたい、意見を聞きたい」と意欲をもたせ、話し合わせる。
全体で共有する場面では、「ジェラール王はほんとうの自由をたいせつに生きていくことができるか」を考えさせ、自分勝手な行動ではなく、よく考え、判断し、自律的に行動することが大切さに気付かせたい。
5.教材分析
※網掛け……授業では取り上げないが想定される発問
場面 |
ガリューとジェラール王子の心の動き |
考えられる発問 |
発問の意図 他 |
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① |
夜明け前 |
ガリュー: |
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② |
ジェラール王子は、狩りをしてはいけないきまりを無視して、身勝手に遊んでいた。ガリューは、決死の覚悟で正すが、とらわれてしまう。 |
ガリュー: |
「あなたが言っているのはほんとうの自由ではない。」と必死に訴えるガリューは、どんな気持ちだろう。 |
◆ガリューの話す「本当の自由」について理解することができる。 |
ジェラール王子: |
○「あなたが言っているのはほんとうの自由とは申しません。」というガリューの必死の訴えを聞くジェラール王子はどんな気持ちだったのだろう。 |
◆王子のわがままで身勝手な考えについて捉えさせる。 |
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③ |
国中の人々が勝手に行動し、国が乱れた。 |
ジェラール王子: |
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④ |
牢屋で、ジェラール王とガリューが再会する。 |
ガリュー: |
(しばらくの間、二人が向き合いだまっている時ガリューはどんな気持ちだったのだろう。) |
◆ジェラール王に改心してほしい気持ちに気付かせる。 |
ジェラール王子: |
(はらはらと涙を流すジェラール王は、どんな気持ちだろう。) |
◆ガリューの思いを受け止めなかった反省と謝罪の気持ちを感じさえることができる。 |
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⑤ |
ガリューは牢屋から出されることになった。ガリューは「ほんとうの自由を大切にしましょう。」とジェラール王に伝える。 |
ガリュー: |
(「ほんとうの自由を大切にして、生きてまいりましょう。」には、ガリューのどんな思いが込められているのだろう。) |
◆「本当の自由」の意義やよさをジェラールに味わわせたいという思いに気付かせる。 |
ジェラール王子: |
◎「ほんとうの自由を大切にして、生きてまいりましょう。」というガリューの言葉をジェラール王は、どんな思いで聞いたのだろう。 |
◆「本当の自由」を求め、行動しようとするジェラール王に共感させる。 |
6.本時のねらい
「ほんとうの自由をたいせつにして生きてまいりましょう。」というガリューの言葉を聞いたジェラール王の思いを考えることで、自由を大切にし、自律的で責任ある行動しようとする態度を育てる。
7.本時の展開
学習活動 |
◇指導上の留意点 ☆評価 |
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導 |
1 「自由」という言葉のもつイメージについて話し合う。 |
◇事前に描いた「自由」をイメージした絵を見て、自分中心で自分の意志を優先した自由について共有する。 |
展 |
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○「本当の自由を大切に生きていく」とはどうすることだろう。(補助発問) |
◇全体で共有する場面では、ジェラール王がどう考え、行動するかについて考えさせる補助発問を行う。 |
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3 自分の生活を振り返り、これからの自分について考える。 |
・ワークシートを通して、自己を振り返り、自由を大切にすることのよさを感じさせる。 |
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終 |
4 教師の説話を聞く。 |
・児童が事前に描いた絵を紹介し、自由であっても、自律して行動する大切さを感得させる。 |