小学校 道徳
小学校 道徳

1.主題名
寄り添う心 B[相互理解、寛容]
2.教材名
「ブランコ乗りとピエロ」(出典:文部科学省『私たちの道徳 小学校5・6年』)
3.主題設定の理由
(1)ねらいとする価値について
人の考えや意見は多様である。だから互いの考えや意見、立場を尊重し、認め合い、理解し合いながら豊かな関係を築いている。そして自分の考えや思いを相手に伝えるとともに、自分と異なる考えや思いを受けとめ、相手への理解を深めることで、自分自身を高めていくことができるのである。
しかし、自分と異なる意見や考えを広い心で受け止めて、理解を深めることは決して容易ではない。つい、自分の考えや立場を優先してしまい、他人の意見や考えを一方的に否定したり、自分と異なる考えや意見の人を遠ざけたりする。
自分の心の中には、身勝手に考えてしまうことがあったり、自己本位になりやすい弱さがあることを自覚し、相手の考えや意見への理解を深めようとする寄り添う心が、重要であると考える。相手の心に寄り添い、自分と異なる考えや意見を尊重することで、互いの違いを生かしたよりよい人間関係が育まれることを感得させたい。
(2)児童の実態について
高学年になり、委員会活動やクラブ活動等、人とかかわる機会が広がり、自分の考えや思いをもち、様々な人と良好な関係の中で活動している。授業では、人の話を受け入れながら聞いている児童が多く、友達がどんな気持ちで話しているのかを聞く姿勢がある。しかし、話し合う場面では、自分の考えを主張し、相手の考えを受け入れず、また一方的に相手の意見を否定してしまう児童もみられる。相手の考えや意見を理解し、尊重していこうとする心を育んでいきたい。
学級活動「子どもまつりを成功させよう」において、学級の出し物や係決め等について話し合う時間には、「みんな一人ひとりが『子どもまつりでこんなことをしたいなあ』という気持ちや考えがある。自分の考えだけでなく、友達の考えを生かし、みんなが楽しめる会に向けて話し合いをしよう」と指導した。児童は、楽しく意見を出し合い、参加者がより楽しめる工夫を考え、実践していた。
本時では、意見や考えが違う相手の気持ちに寄り添うことの大切さを感得するよう日常の道徳教育の学びを深化する道徳授業を行う。相手の気持ちや考えを理解し、尊重することでよりよい人間関係が生まれることを味わわせたい。
(3)教材について
サーカスをまとめるリーダーのピエロと花形スターのサムは、一時間という制限で大王にサーカスの演技を見てもらうことになった。日頃から、ピエロはわがままな言動のサムに腹を立てていた。当日、サムの演技が延長し、ピエロは大王の前で演技ができなかった。しかし、ピエロは演技後に疲れ切った様子のサムを何度も思い出しながら、サムの気持ちを理解し、尊重したため、サムを許すのである。
児童には、身勝手な言動で到底許されるはずのないサムの言動を演技後の様子を何度も思い出し、理解し、受け入れるピエロの思いを考えさせたい。そして、互いに心が寄り添うことで、共演するなど、よりよい関係を築くことができることを感得させたい。
4.教材分析
場面 |
ピエロとサムの心の動き |
考えられる発問 |
発問の意図 |
児童に考えさせたいこと |
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① |
サーカスの開幕 |
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② |
サムの演技が始まる。ピエロとサムは開演前に話をしていた。 |
ピ:サムは、自分のことしか考えていない。勝手だ。約束を守れない。 |
●ゲートのすき間からサムの演技を見ているピエロはどんな気持ちだったのだろう。 |
・サムの身勝手さを受け入れられないピエロに共感させる。 |
ピエロはサムを許せない気持ちは強いが、「目立ちたい」「大王に演技を見せたい」「サーカスを成功させたい」等の気持ちは、サムと共通していることを感じ取らせる。 |
③ |
サムの演技が終わり、通路ですれ違う。 |
ピ:サムが演技で疲れ切っている。自分の演技を精一杯行おう。 |
●通路ですれ違ったサムを見たピエロはどんな気持ちがあったのだろう。 |
・サムの演技と演技後の様子を見て、サムの身勝手さだけでなく、サムの良さにも気付き始めた。 |
通路で一瞬立ち止まるピエロの気持ちから、サムの努力を認め、サムへの憎む気持ちに変化があった。 |
④ |
控室 |
ピ:憎む気持ちが消えた。サムの気持ちが分かる。自分がサムの立場ならと考えた。 |
●サムをにくむ気持ちが消えて、おだやかな目でサムを見つめるピエロはどんなことを考えていたのだろう。 |
・サムを許せるようになったピエロの心の変化を捉えさせる。 |
サムの言動を安易に許したわけではなく、サムの立場になって考えれば、ピエロ自身も同様のことを起こしかねないと考え、サムの気持ちを理解し寄り添うことの大切さに気付かせたい。 |
⑤ |
控室 |
ピ:サムの気持ちを考えてよかった。分かり合える。 |
●控室で話し合う二人の気持ちを考えよう。 |
・互いに分かり合えた二人の気持ちを感じさせる。 |
ピエロの言葉を受けとめ、サムの反省と感謝の気持ち等をとらえさせる。 |
⑥ |
サーカス最終日 |
ピ:サムと分かり合えたので、二人で演技ができる。自分の気持ちだけでなく相手の気持ちを考えることが大切だ。 |
●どうして二人は共演することができるようになったのだろう。 |
・自分のことだけではなく、相手の気持ちを理解すること、尊重することの大切さに気付かせたい。 |
互いに理解し合うこと、尊重することが、よりよい関係づくりにつながることに気付かせる。 |
5.本時の学習
(1)ねらい
サムをにくむ気持ちが消え、おだやかにサムを見つめるピエロの気持ちを考えることで、自分と異なる考えや意見を尊重し、大切にしていこうとする態度を育てる。
(2)本時の展開
主な発問と予想される児童の反応 |
・指導上の留意点 |
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導 |
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○友達と考えや意見が合わずに困ったことについて発表しましょう。 |
▽子どもまつりに向けた話合いを例示し、意見が合わず、話合いが進まなかったなど、自分と友達の考えや意見との違いを感じた場面を振り返らせる。 |
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展 |
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○どのような気持ちが芽生え、二人は共演することができるようになったのだろう。 |
▽話題を再提示し、教材を通した学びを共有する。 |
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○自分の考えとは違っていても、友達の考えや意見を大切してよかったなあと感じたことを発表しましょう。 |
▽「ピエロのようになれた自分」「ピエロのようになりたい自分」を示し、自分の体験を振り返るきっかけとする。 |
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終 |
4 教師の説話を聞く。 |
・友達の意見を生かして、話合いを進めた児童の様子を話し、自分の思いだけでなく、広い心で人の意見を大切にしていこうとする気持ちを高める。 |