高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

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「肖像Ⅷ エドガー・アラン・ポー」 柄澤齊(からさわ ひとし)作
2009.07.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.001-今月の作品>
「肖像Ⅷ エドガー・アラン・ポー」 柄澤齊(からさわ ひとし)作
「高校美術1」P28掲載 埼玉県立近代美術館蔵

 この作品は、「肖像」シリーズの13番目の作品として制作されました。“13”は、不吉な数字と言われます。柄澤氏がこの番号に選んだ人物は、「エドガー・アラン・ポー」。ポーは、推理小説や恐怖小説で有名な作家です。

 さて、この作品です。顔はポーその人ですが、どういう訳か鳥の羽になっています。なぜでしょう?「肖像」シリーズについて柄澤氏は次のように話しています。「似顔絵としてではなく、解読し得るテキストとして、私なりに死者を読み、かつ描くことがどこまで可能かとの試みでした」と。表面的な似てる、似てないではなく、ポーという人物の“その人らしさ”を彼が読み解いた結果を、描いたのですね。

木口木版/22×6.2㎝/1983年作

木口木版/22×6.2㎝/1983年作

 代表作は「モルグ街の殺人」「黄金虫」「黒猫」などなど、題名だけ聞いても何やら恐ろしげですね。怖いのが好きな人、興味を持った人はぜひ読んでみてください。

この黒い羽は、大鴉(おおがらす)の羽です。ポーは「大鴉」という詩を残しました。この詩は、彼をまたたく間に有名にしたと言われています。また、大鴉は「悪魔の鳥」とも言われ、彼の作風を暗示しているようでもあります。

ポー自身は、この鳥を「死者を悼む、終わりなき追憶」を象徴すると言いました。ポーの死を悼み、彼の作品を通して、ポーという人物に思いを馳せる柄澤氏自身の姿が見えてくるようです。

本館には、柄澤氏の作品が多数収蔵されています。同じ肖像シリーズの、「肖像Ⅳ アルチュール・ランボー」も、お薦めです。

(埼玉県立近代美術館学芸員 山水明)

埼玉県立近代美術館ico_link

  • 所在地 埼玉県さいたま市浦和区常盤9丁目30番1号
  • TEL 048-824-0111
  • 休館日 月曜日,12/29~1/3,メンテナンスの日(6/23、7/21、12/8、12/25~27、1/12)

<展覧会情報>

  • 長澤英俊展 ―オーロラの向かう所―
  • 7月18日(土)~9月23日(水・祝)開催

展覧会概要

  • 長澤英俊は、埼玉県川島町で育ち、多摩美術大学を卒業後、1年余りをかけて自転車でアジア大陸を横断。到着したミラノを拠点に制作を展開し、主要な国際展で紹介される世界的な彫刻家です。川越市立美術館と同時開催。

<次回展覧会予定>

  • ロシアの夢
  • 10月10日(土)~12月6日(日)開催