高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「ミラールーム(かぼちゃ)」 草間彌生作
2009.10.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.004>
「ミラールーム(かぼちゃ)」 草間彌生作
「美・創造へ1」P25掲載 原美術館蔵

ミクストメディア/1991年 撮影:齋藤さだむ

ミクストメディア/1991年 撮影:齋藤さだむ

撮影:上野則宏

撮影:上野則宏

 展示室全体を覆いつくした黄色の地と黒の水玉。どうなっているのでしょうか?
 構造から見てゆきましょう。「ミラールーム(かぼちゃ)」と題された作品の本体は、鏡張りの2メートルの立方体です。一か所だけ開けられた小窓から中を覗くと、まるで万華鏡のようです。内部もすべて鏡張りになっているので、床に置かれた大小29個のかぼちゃの立体作品が、無限に増殖してゆくように感じられます。想像できますか?
 それを展示室の中心に設置し、周囲の空間全体を、天井・壁・床を問わず、作品内部のかぼちゃの色と同じ黄色に塗りこめ、無数の黒いドット(水玉)で覆いつくしたのが、このインスタレーション(設置場所の空間全体を作品化したもの)なのです。
 展示室に入ると、まず私たちは、日常とはかけ離れた強烈な空間に圧倒されてたたずみ、やがて鏡に映った自分の姿を意識しながら、その異空間をさまよう経験をします。しかも、鏡の中の自分は時折(角度によって)、背景の黄色と黒の世界と一体化したかのように、あるいは作品の中に吸い込まれてしまったかのように、視界から消えてなくなるのです。
 このインスタレーションは、「ミラールーム(かぼちゃ)」のコンセプトを、鑑賞者により効果的に体験してもらうために、60年代の草間彌生の「ハプニング」などにヒントを得て、作家監修のもと、原美術館が1992年秋のコレクション展のおりに、オリジナルに企画したものです。翌年には、草間が日本代表として参加し、その国際的な再評価の契機にもなった「第45回ヴェネツィア・ビエンナーレ」でも好評を博し、以降の作家の表現世界にも影響を与えました。
 多くの日本人作家に先駆けて1957年に渡米。以降十余年間にわたって、激動のニューヨークのアートシーンのなかでひとり戦い続けた草間彌生。無限の増殖と強迫観念からの解放、永劫への回帰は、歳月を経た今日もなお、一貫したテーマとして作家を触発し続けています。

(原美術館学芸員 青野和子)

※この作品はおもに、ハラ ミュージアム アーク(原美術館別館)でご覧になれます。展示期間の詳細はお問い合わせください。(TEL:0279-24-6585)

原美術館ico_link

  • 所在地 東京都品川区北品川4-7-25
  • TEL 03-3445-0651
  • 休館日 月曜日(祝日の場合は開館,翌日休館),展示替期間,年末年始

<展覧会情報>

  • 原美術館コレクション展
  • 8月1日(土)~10月12日(月・祝)

<次回展覧会予定>

  • 「原美術館コレクション展:『間に合わせもの』ラウシェンバーグへのオマージュ」
  • 10月24日(土)~12月上旬

ハラ ミュージアム アークico_link

  • 所在地 群馬県渋川市金井2855-1
  • TEL 0279-24-6585
  • 休館日 展示替え期間,冬季

<展覧会情報>

  • 「原美術館コレクション展~日本の現代美術はおもしろい」(現代美術ギャラリー)
  • 9月12日(土)~11月23日(月)
  • 「季をめぐる」(観海庵)
  • 前期:9月12日(土)~10月12日(月・祝)
    後期:10月17日(土)~11月23日(月・祝)

その他,詳細は原美術館Webサイトico_linkでご覧ください。