高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)
高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「美・創造へ1」P35掲載 北海道立旭川美術館蔵
三沢厚彦は京都出身、幼い頃から優れた木彫作品に接して彫刻家を志しました。東京芸大の彫刻科に進み、卒業後しばらくは「アッサンブラージュ」というプラスター片や木片を膨大に寄せ集めて作品とする制作を行っていました。しかし、2000年を期に原点の木に戻ってさまざまな動物をモチーフとした《Animals》シリーズの制作を始め、2001年には優れた彫刻家に贈られる平櫛田中賞を受賞しました。このシマウマはシリーズの最も初期のもので、クスノキを素材とした彫刻作品であり、一連の作品の中でも独特の味わいを持っています。
作者の制作はドローイングから始まります。実物を見ながら描くのではなく自らの印象を頼りに描き、ラインが決まれば彫り始めます。彫ってからまたラインを見つけるために描き、着色してからもまた彫ります。表面を滑らかに仕上げることにこだわりはなく、ノミ跡やささくれ、寄木の跡などが残りますが、作者は全体としての印象に影響がなければそれでよしとします。
淡々としたノミ跡は、優れた技術よりも職人的な気分を伝えます。他方で作者なりのこだわりは、香木としても用いられるクスノキの香りや、油絵の具による画家並みの彩色などに表れています。例えばシマウマの白黒の基調色は、わずかに施された黄色と水色によって引き立てられています。作者は視覚的な形や触覚だけでなく、あえて嗅覚や色彩の効果を作品の一部としているのです。そしてこのシマウマの全体像は、どこか現代的でユーモラスな雰囲気を醸しています。作者は「動物って、どーんとした胴があって四つの足が踏ん張っていて、鼻の先から尻尾の先までの形の動きが気持ちいい。」と語っていますが,まさにそのような姿です。以後の三沢による動物シリーズの中でも、ごく原初的なものがそこにあります。
(北海道立旭川美術館学芸員補 高橋みのり)
■北海道立旭川美術館
- 所在地 北海道旭川市常磐公園内
- TEL 0166‐25‐2577
- 休館日 月曜日(祝日または振替休日の時は開館、翌火曜日が休館)
年末年始(12月29日~1月3日)、展示替期間等。
<展覧会情報>
- アロイーズ/
北海道のアウトサイダー・アート - 2009年10月24日(土)~1月14日(木)開催
展覧会概要
- 男女の愛の世界を描き続け、アール・ブリュットの原点といわれるアロイーズの全貌と、北海道で注目されるアウトサイダー・アートの作家たちの作品を紹介します。
<次回展覧会予定>
- 高橋留美子展 ~It’s a Rumic World~
- 1月23日(土)~3月14日(日)開催
その他、詳細は北海道立旭川美術館Webサイトでご覧ください。