高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「Animal 2000-02」 三沢厚彦作
2009.12.28
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.007>
「Animal 2000-02」 三沢厚彦作
「美・創造へ1」P35掲載 北海道立旭川美術館蔵
クスノキ,油彩/177×65×196cm/2000

クスノキ,油彩/177×65×196cm/2000

 三沢厚彦は京都出身、幼い頃から優れた木彫作品に接して彫刻家を志しました。東京芸大の彫刻科に進み、卒業後しばらくは「アッサンブラージュ」というプラスター片や木片を膨大に寄せ集めて作品とする制作を行っていました。しかし、2000年を期に原点の木に戻ってさまざまな動物をモチーフとした《Animals》シリーズの制作を始め、2001年には優れた彫刻家に贈られる平櫛田中賞を受賞しました。このシマウマはシリーズの最も初期のもので、クスノキを素材とした彫刻作品であり、一連の作品の中でも独特の味わいを持っています。
 作者の制作はドローイングから始まります。実物を見ながら描くのではなく自らの印象を頼りに描き、ラインが決まれば彫り始めます。彫ってからまたラインを見つけるために描き、着色してからもまた彫ります。表面を滑らかに仕上げることにこだわりはなく、ノミ跡やささくれ、寄木の跡などが残りますが、作者は全体としての印象に影響がなければそれでよしとします。
 淡々としたノミ跡は、優れた技術よりも職人的な気分を伝えます。他方で作者なりのこだわりは、香木としても用いられるクスノキの香りや、油絵の具による画家並みの彩色などに表れています。例えばシマウマの白黒の基調色は、わずかに施された黄色と水色によって引き立てられています。作者は視覚的な形や触覚だけでなく、あえて嗅覚や色彩の効果を作品の一部としているのです。そしてこのシマウマの全体像は、どこか現代的でユーモラスな雰囲気を醸しています。作者は「動物って、どーんとした胴があって四つの足が踏ん張っていて、鼻の先から尻尾の先までの形の動きが気持ちいい。」と語っていますが,まさにそのような姿です。以後の三沢による動物シリーズの中でも、ごく原初的なものがそこにあります。

(北海道立旭川美術館学芸員補 高橋みのり)

■北海道立旭川美術館ico_link

  • 所在地 北海道旭川市常磐公園内
  • TEL 0166‐25‐2577
  • 休館日 月曜日(祝日または振替休日の時は開館、翌火曜日が休館)
        年末年始(12月29日~1月3日)、展示替期間等。 

<展覧会情報>

  • アロイーズ/
    北海道のアウトサイダー・アート
  • 2009年10月24日(土)~1月14日(木)開催

展覧会概要

  • 男女の愛の世界を描き続け、アール・ブリュットの原点といわれるアロイーズの全貌と、北海道で注目されるアウトサイダー・アートの作家たちの作品を紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 高橋留美子展 ~It’s a Rumic World~
  • 1月23日(土)~3月14日(日)開催

その他、詳細は北海道立旭川美術館Webサイトico_linkでご覧ください。