高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「裸形の少年像」 橋本平八作
2010.06.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.012>
「裸形の少年像」 橋本平八作
高校美術教科書「美・創造へ 1」P.20掲載 東京藝術大学大学美術館蔵

木、彩色/高さ154.2cm/1927

木、彩色/高さ154.2cm/1927

 橋本平八は、明治30年(1897)、三重県の朝熊村(現在の伊勢市)に生まれました。18歳のときに三宅正直から彫刻の技法を学び、その後上京して、彫刻家の佐藤朝山(ちょうざん)に弟子入りしました。そして29歳のときに故郷の朝熊村に戻り、わずか38歳で亡くなるまで、動物や人物、仏像などのさまざまな木彫作品を残しました。
 ≪裸形の少年像≫は、平八が朝熊村に戻った翌年に制作されました。同年の再興第14回院展に出品されており、平八の代表作のひとつに挙げられます。背筋を伸ばして直立し、右足をわずか前に出している姿勢は、古代エジプトの彫刻によくみられます。さらに、わずかに微笑むような独特の表情は、古代ギリシャ彫刻のアルカイック・スマイルの影響をうかがうことができます。平八は、古代の彫刻への憧れの念をもって新しい彫刻をつくり出そうとしていました。動きの少ない像でありながら、迫りくるかのような力強さを持ち合わせています。
 像の背面には、首から尻にいたるまでの大きな亀裂があります。これは、この像が木心(木材の中心部)を使ってつくられているためです。木心を彫刻に使うと、乾燥による木の収縮が大きくなりひび割れが起きてしまうため、通常、彫刻家は木心を避けた部分を使います。しかし、平八はあえて木心を使いました。それは、平八が木には心が宿っていると信じていたためで、木の魂が宿る中心部分を、像の中心と合わせたかったのではないかと考えられています。

(東京藝術大学大学美術館 学芸研究員 寺地亜衣)

東京藝術大学大学美術館 ico_link

  • 所在地 東京都台東区上野公園12-8
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 月曜日(ただし月曜日が祝・休日の場合は開館し、翌日休館)、8月21日

<展覧会情報>

  • ポンピドー・センター所蔵作品展 シャガール–ロシア・アヴァンギャルドとの出会い~交錯する夢と前衛~
  • 2010年7月3日(土)~10月11日(月・祝)

展覧会概要

  • ポンピドー・センターから選りすぐったシャガール作品約70点によってシャガールの人生を追うとともに、シャガール作品を同時代に活躍したロシア前衛芸術の巨匠たちの作品約40点と対比して紹介します。

<次回展覧会予定>

  • 「明治の彫塑 ラグーザと荻原碌山」展
  • 「黙示録:デューラー/ルドン」展(仮)
  • 2010年10月23日(土)~12月5日(日)二展同時開催

その他、詳細は東京藝術大学大学美術館Webサイトico_linkでご覧ください。