高等学校 情報
高等学校 情報
※この実践記録は2021年に執筆されたものです。
1.はじめに
本校情報科では次期学習指導要領「情報Ⅰ」を見据え、情報教育の3観点を生徒同士で高められる授業に取り組んでいる。その一環として、入学後すぐの授業で電子メールアドレスを個人で取得させている。電子メールアドレスに無料で付与されているMicrosoft Office Online(以下、MOO)を活用し、生徒同士でリアルとオンラインのつながりを生み、主体的に問題解決能力を身につけさせることに取り組んできた。MOOは、デスクトップ版よりも機能が制限されているため、特徴としてシンプルに表現ができる。
本実践では、昨今のSNSをはじめとする著作権やセキュリティ意識を高めるために、テーマに関するアンケートの1人1問作成および結果のデータ分析と、情報デザインの考え方で問題を解決する授業を考えた。
各チームが作成したポスター作品を、クラスの生徒同士で評価し合う。また、学年全体にはMicrosoft Teamsで公開し共有する。具体的には、1枚のポスターを上下の半分に分け、それぞれを同一テーマとし2チームで担当させた。内容は、情報モラルに関する30テーマ(各クラスで異なる5テーマ)と時事問題(全クラス)を割り当てた。
作成にあたり、主にMOOの電子メール、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトを複合的に活用し、ポスター形式で作成させた。ポスター形式としたのは、デザインの構成が視覚的に分かりやすく、他教科でも導入してもらいやすいからである。
2.単元名
情報社会に生きるわたしたち(実施学年:第1学年)
「サイバー犯罪とその対策」「知的財産とその保護」「個人情報とプライバシー」
3.単元の目標
- 情報モラルの内容について、情報の取捨選択を行ったうえ、適切で効果的なデザインを表現させる。
- チーム内およびチームを超えて、主体的なコミュニケーションを行い、問題解決能力を向上させる。
- MOOの機能を駆使し、オンライン上で共同の成果物が作成できるようにする。
4.単元の評価規準
学習評価の4観点・現行学習指導要領
ア 関心・意欲・態度 |
イ 思考・判断・表現 |
ウ 技能 |
エ 知識・理解 |
---|---|---|---|
・表現し伝える活動に対して積極的に取り組むことができる。 |
・適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案ができる。 |
・分かりやすく情報を表現することができる。 |
・これまでの実習を通じて学んだ知識を活かして取り組むことができる。 |
学力の3要素・次期学習指導要領
オ 知識及び技能 |
カ 思考力、判断力、表現力等 |
キ 学びに向かう力、人間性等 |
---|---|---|
・既知の活用:これまでの実習を通じて学んだ知識を活かして取り組むことができる。 |
・目的の明確化:適切な情報手段で情報を集め、問題発見及び解決へ向けた提案ができる。 |
・対話:伝えたい情報モラルの内容を分かりやすく伝えるために、チーム内やチーム間で対話ができる。 |
5.単元の指導と評価の計画
時 |
学習内容・学習活動 |
評価の観点(上記表参照) |
評価の方法 |
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現 4観点 ○ | 新 3観点 ● | ||||||||
ア |
イ |
ウ |
エ |
オ |
カ |
キ |
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1 |
・実習の概要を理解する。 |
○ |
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● |
行動観察 |
2 |
・担当テーマに関する内容を吟味し、問題(アンケート)を考える。 |
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○ |
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○ |
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● |
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行動観察 |
3 |
・出題された問題をオンラインフォームで回答する(各クラス)。 |
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|
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○ |
● |
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行動観察 |
4 |
・回答結果の分析、グラフ等作成。 |
○ |
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○ |
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● |
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● |
行動観察 |
6 |
・同一テーマ2チームの内容を合わせる。 |
○ |
○ |
○ |
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● |
● |
● |
行動観察 |
8 |
・カラー版とモノクロ版ポスターを比較して、自己/相互評価(各クラス)。 |
○ |
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● |
● |
行動観察 |
6.本時の目標【4限目】
本単元は8時間で構成され、今回は単元全体の中で山場を迎える4限目の内容を紹介する。
生徒が担当する内容を、発信者および受信者双方の視点からチーム内で対話し、分担しながら適切な手段や手法で分かりやすく伝えるためのポスターを作成できるようにする。また、生徒間の思考を深め合い、分かりやすいポスターを作成させるため、実習時間に幅を持たせ2時間で実施した。
7.本時の流れ【4限目】
時間 |
学習内容・学習活動 |
指導上の留意点 |
評価 |
---|---|---|---|
導入 |
・本時の流れを確認する。 |
・発信者および受信者双方の視点をもって作成させる。 |
行動観察 |
展開 |
・前時で回答された結果を各自確認する。 |
・チーム内で実習分担が偏らず、誰一人取り残さないよう、適宜進捗の確認をさせる。 |
行動観察 |
まとめ |
・次時で行うことを整理し、チーム内で共有する。 |
・行動観察時に気づいた点を講評して、生徒の次時につなげる。 |
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8.まとめ
本実践では、1学期から生徒が積み上げて学習した内容を活かせる形となっている。情報モラルに関するデータ分析・活用、デザイン構成を通じてリアルとオンライン双方の問題解決力を養うことを目標に置いた。特筆するのであれば、生徒をチャレンジングな環境に置いたことである。通常ならば成果物を1チームで形にすることが多いが、今回初めて複数チームで共同の成果物を作成させた。生徒同士で意見をぶつからせ、分かりやすい表現を求めて試行錯誤を繰り返す姿に、生徒一人ひとりの成長を感じることができた。
実践の最後に実施したアンケートでは、「データを分析して、見やすくまとめる難しさ」「伝える内容に合わせた図表の有無や配色の選定」「思い切って自分の意見を言う力」「チーム全員で協力する大切さ」など、生徒自身の率直な気づきの意見があった。
今後、先行きが不透明な時代を生き抜く生徒には、1人で行う実習はもとより、チーム内やチーム間で進捗状況を把握しつつ、互いが助け合いながら物事を進めていく力がより一層必要である。つまり「社会的洞察力」「戦略的学習力」を、社会人の一歩手前である高校生で養うことが求められていくと考えている。それを実現するには、情報科だけではなく、各教科との横断的な取り組みによる相乗効果が必要である。