ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.36 > p31

コンピュータ教育のバグ
昨日TVで見たんだけれど,
—マス・メディアをどう教えるのか—
 スーパーインポーズ。略してスーパーと言われる,いわゆる字幕のことだ。最近はニュース番組のVTRにまで台詞に対しての字幕が付いているのが目立つ。ま,わかりやすいと言えばわかりやすい。わかりやすいのではあるが,しかし,よく見てみると疑問に感じる点もある。本当はそんなこと言いたかったのじゃないというケースもあるだろう。しかし,視聴者側は特に意識するでもなく,これらを受け流してしまっている。
例えば,TVというマス・メディアについて
 TVニュースでよくある字幕補足の例…。
・(彼は)どうしても(会場に)行きたかった・主語や目的語の追加
・そう感じる(怒りを覚える)でしょう・感情を示す言葉の追加
・(うすら笑い)ふっ,———(無言) ・表情や状態の追加
 いかがだろうか。そういえば,確かによく見ると思われるのではないだろうか。ここでよく考えてみると,ほんとうにこの( )の中の語で正しく状況を伝えているのだろうかという疑問がわいてくる。誰かがそういう風に思った,そういう風に見えたというだけではないのか。しかし,それをまことしやかに字幕にして放送電波に載せてしまっているのである。これはもう,情報操作と言っても過言ではない。
 では,なぜこんな風になってしまうのか。TVというメディアでは,情報を与える側,つまり放送局側は,とにかくわかりやすく視聴者に情報を伝達したい。それには,言語を聴覚だけでなく視覚にも訴えて伝える方が効果的である。また,コンピュータテクノロジーの進化で,画面に字幕を効果的に挿入することが容易になった。大体こんなところが原因だろう。
情報教育にどう盛り込むか
 情報を正しく読み解く力を育むというのも,情報教育に課せられた課題のうちの一つである。では,前述のTVの字幕のような問題を,情報教育ではどのように扱っていけばよいだろうか。
 たとえばTVから発せられる情報の威力は絶大だ。番組で紹介されたお店は,とりあえず放送後何日かは客足が絶えないだろう。また,ニュースに取り上げられた事件や事故は,その時に伝わったニュアンスと共に広く世に知れ渡ることになる。多くの人々はここに疑問を差し挟むことなく,それらの情報を受け取ってしまっている。しかし,例えばニュースであれば,世の中に多数あるトピックの中から,誰かがその話題を意図的に取り上げて,事実の一部を切り取って報道しているのである。実際にTVのニュースで目にする以外の部分,報道されない話題の方が世の中には多いのだ。
 ということで,情報を正しくかしこく受け取るためには,やはりある程度の訓練は必要ではないかと考えられる。たとえば,TV番組の分析でもよい。放送や舞台の台本を検証してみるのも面白いだろう。同じ日の新聞を何種類か並べて眺めてみるというのもよくある効果的な方法だ。いずれも,興味本位でやっていることではなく,情報を正しく受けとめるための訓練である。こういう実習も,ぜひもっと情報教育の中に取り入れてもらいたいと思う。このような訓練で,単にマス・メディアからの情報だけではなく,例えばインターネットを活用した検索を行う場合にでも,もっともっとクリティカルに情報を得ることができるようになるだろう。では,実習にもっと取り入れてもらえるようにするためにはどうすればよいのか。そうだ,TVでこんな実践事例を面白おかしく紹介してもらえばよいのだ…。(うすら笑い)
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