ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.36 > p32〜33

プロジェクト学習へのアプローチ
プレゼンテーション指導のツボ─5
さあ,やってみよう,そして…
─プレゼンの実施と評価─
この実習で利用するサンプルデータ(Microsoft Officeファイル)は,こちらからダウンロードしてください。
ワークシート「良い例」
ワークシート「悪い例」
指導のポイント
 このシリーズでは,5回にわたってプレゼンテーションの指導について考えています。前回の第4回までで,プレゼンテーションのリハーサルが完了しています(ICT・Education No.32〜35に掲載されています。バックナンバーは,日文ネット(http://nichibun.net)でご覧頂けます)。今回の第5回目で,最終回です。いよいよ,プレゼンテーション本番です。プレゼンテーションを実施する際と,事後処理について考えてみましょう。この記事のコーナータイトルは,「プロジェクト学習へのアプローチ」です。ここまで比較的長い時間を割いて取り組んできたプレゼンテーションを含むプロジェクト学習の総仕上げとして,本番の実施と評価について効果的に,そして,生徒たちが自ら身に付けた力を認識できるようにするために,いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
 まず,実施については,今まで準備してきたことをきちんと確認した上で,それらを活かしながら行うこと。そして,評価については,先ず良かった点・悪かった点を客観的に明らかにした上で,特に良かった点を相互に評価し合えるようにしかけをしておくと,効果的にプロジェクトのまとめができます。
プレゼンテーションの実施
 本番の実施にあたっては,機材や発表スペースや聴衆の配置などに配慮し,きちんとした発表の環境を整えてあげるようにしましょう。一概にどんな環境がベストだということはいえません。それぞれのプロジェクトの内容によって,また,発表のタイミングや聴衆の状態によっても,それぞれに合わせた舞台設定が必要です。ただ,共通していえることは,ここまで創りあげてきたプレゼンテーションに関して,さまざまな条件はきちんとクリアされているかどうか,チェックできるようにすることです。例えば制限時間をもうけたのであれば,ストップウォッチで計時するとか,オンスクリーンのプレゼンテーションという設定にしたのであれば,事前にマシンチェックを行いきちんと投影できるように機器を整えておくとか,このような準備は怠らないようにしましょう。本番前になって,先生の責任による設定ミスや準備不足は,なるべく避けたいものです。
 発表が複数ある場合は,その発表順の決定や,発表入れ替えの導線や時間設定も重要です。このような段取りがうまく考えられていれば,自然と発表する生徒にも良い雰囲気が伝わり,発表そのものにも良い影響を与えるでしょう。この部分は生徒たちに考えさせても良いですし,余裕がなければ学校行事の舞台発表などを参考に,先生の方で事前に指定しておいても良いでしょう。さらに本格的なステージでの発表を行う場合は,席順や導線なども含めたフロアプランとタイムスケジュールや本番全体の進行台本を作成して,配布しておく方法もあります。
プレゼンテーションの評価
 プレゼンテーションの評価を安易に考えては,せっかくのプロジェクトに費やした時間を無駄にしてしまいかねません。きちんとした評価指標を示し,できるだけ自己評価と相互評価を取り入れて行うようにしましょう。以下の評価シートのサンプルの良い例・悪い例を参考に,それぞれのプレゼンテーションに即した評価シートを作成すると良いでしょう。
 どのような項目でどのような指標で評価するかをプレゼンテーション実施までに事前に提示して,自己評価や相互評価を行うことで,よりスムーズに実施することができます。生徒による評価では,その正当性・妥当性に疑問を感じる場合もあるかと思います。このような危惧がある場合は,自己評価・相互評価がきちんとできているかという項目を教師による評価に盛り込み,これを示すことで比較的妥当な生徒による評価が実現できると考えられます。
 相互評価にはコメントを添えると効果的ですが,概して問題点・欠点の羅列だけで終わりがちです。問題点や欠点を指摘する場合には,必ず改善方法の提案を含ませ,なるべく良かった点や印象に残った点を述べさせるようにすると良いでしょう。

※ワークシートのデータは,Microsoft Wordで作成したものです。
評価シートの良い例・悪い例
活用場面
 プレゼンテーションの評価をするとき

使用方法
 相互評価用シートとして利用する。

ワークシート活用の留意点
1.悪い例の問題点
・評価を点数化する際に,項目だけで指標がないので,主観的な評価に陥りやすい。
・評価する人によって基準がぶれる。
・評価の優劣をつけたり,成績を数値で表したりするための集計を行うと,良し悪しを極端な評価にした者の意見がより強く反映されることになる。
・基準が明確でない場合は結果に対して不公平感が生まれることもある。

2.事前に確認すべき点
・評価項目や評価指標は,プレゼンの条件や内容に配慮して事前に良く吟味する必要がある。
・評価項目や評価指標を生徒に作成させる方法もある。
・どのような評価項目と評価指標をもうけたのかを事前に提示する。
・評価は単に記号だけでなくコメントを添えるようにする。
・コメントには,良かった点・印象に残った点を盛り込む。
・問題点や欠点を指摘する場合は改善提案も述べさせるようにする。
良い例
▲良い例

悪い例
▲悪い例

●評価の支援ツール「ルーブリックチャート」の紹介
 Rubric(ルーブリック)とは,複数の評価項目と,各到達度をあらわす典型的な評価語で構成された表のことです。これを示すことにより,評価項目を具体的指標に基づいて評価できるという利点があります。つまり,多くの人にとって比較的わかりやすく納得しやすい評価が可能になるということです。
 Rubric Chart(ルーブリックチャート)は,このRubricを用いた評価活動を自動化するソフトウェアです。プレゼンテーションの評価にも活用できるツールの一つです。

※Rubric Chartのソフトウェアと冊子「Rubric Chart 教科「情報」の実習で使える評価支援ソフト」のPDFデータは,http://www.nichibun.net/classsupport/rubric/index.phpで,無料でダウンロードできます。
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