ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.37 > p30〜31

プロジェクト学習へのアプローチ
著作権をどう教えるか─1
「著作権を理解させるということ」
今回のポイント
 情報科で指導すべき内容の中に,著作権に関する知識が含まれています。例えば,現行の学習指導要領でも情報Aの内容に「情報社会への参加と情報技術の活用」という項目があります。ここで,「情報の伝達手段の信頼性,情報の信憑性,情報発信に当たっての個人の責任,プライバシーや著作権への配慮などを扱うものとする」と明記されています。
 今回のプロジェクト学習のアプローチは,この「著作権」についてシリーズでとりあげ,事例や指導プランを含んでお届けしたいと思います。著作権は単に教科書で知識を詰め込むだけでは,生徒は著作権の存在そのものを認識しているだけで,実際に権利を保護できるようになるかは,いささか疑問が残るかと思います。そこで,さまざまな実例や,実際の取り扱いについて,考えさせ学ばせる必要があるかと考えられます。
 今回は,まず著作権をどのように学校で取り扱い,どのように授業に取り入れていくべきかを考えてみましょう。
教科書での取り扱いをどう活かすか
 まずは,教科書ではどのように著作権の指導を取り扱っているのかを確認してみましょう。例えば,日本文教出版の「新・情報A」教科書では,知的財産権の一部として,以下のような図とともに紹介され,解説されています。

教科書78ページの図「知的財産権」
▲教科書78ページの図「知的財産権」

 また,著作物の利用という見出しで,どのような場合が著作権の侵害にあたるのかを例として挙げ,反対に許可を得なくても著作物が利用できる場合の例を表にまとめてあります。これらの解説と図解で,知識的には習得できるようになっています。さらに知りたい場合は,巻末には著作権法に関する説明も添えられています。

教科書79ページの表「許可を得なくても著作物が利用できる場合の例」
▲教科書79ページの表「許可を得なくても著作物が利用できる場合の例」

 しかし,単に知識を得たというだけでは,実際に必要なときに著作権の処理をできるようになったとは考えられません。では,どのように対処すればよいのでしょうか。端的には,実際に著作物利用の許諾申請を生徒たち自らがやってみるのがわかりやすいと考えられます。ただ,授業でこのような実習が必ずしも実施できる訳ではありません。そんな場合は実際の事例をいくつか提示した上で,著作権について考えさせたり,模擬的に著作物への表示や許諾手続きなどを行わせたりする実習で代替する方法があります。
 例えば,本やWebページなど身近なところからコピーライトの“©”表記を探してみて,その記載内容を参考に自分の作った文や画像などに同じようにコピーライトの表記を書いて添えさせてみるという実習が可能です。
 なお,著作権法の原文は,総務省のWebページで確認できます(総務省 法令データ提供システム
「著作権法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html)。
学校での著作権取り扱いについて
 もう一つの問題は,普段から学校内で,先生方が著作権についてきちんと意識できているかという点です。これは,予算的な問題とも相まってなかなか難しい課題であると思われます。しかし,授業で著作権について指導する以上は,学校全体としても著作権の取り扱いについてきちんと確認しておくべきではないかと思われます。また,テレビの地上波アナログ放送の終了を目前に控え,校内の視聴覚機器で取り扱う映像素材についても再検討が必要な時期に来ています。これを良いきっかけとして,一度学校での著作権の取り扱いについて確認してみると良いのではないでしょうか。
 参考までに,日本書籍出版協会による「学校その他の教育機関における著作物等利用に関するフローチャート」をご覧下さい。

「学校その他の教育機関における著作物等利用に関するフローチャート」
▲「学校その他の教育機関における著作物等利用に関するフローチャート」(http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/flow.pdf より参照作成)

 いかがでしょうか?意外にも無意識のうちに,著作権を侵害していないでしょうか。モラルとマナーをもって,学校内での著作物利用についても再度確認したいものです。
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