ICT・Educationバックナンバー
ICT・EducationNo.38 > p30〜31

プロジェクト学習へのアプローチ
著作権をどう教えるか─2
「著作権の現場から…コンテンツ開発における著作権」
この実習で利用するサンプルデータ(Microsoft Officeファイル)は,こちらからダウンロードしてください。
ワークシート1
ワークシート2
今回のポイント
 今回からは,実際に社会の第一線で著作権に関わるお仕事をされている方をゲストに迎え,インタビュー形式でお話をうかがっていきます。その内容をもとに,情報教育として,著作権の関する問題にどのようなアプローチが可能かを考えていきたいと思います。
今回のゲスト
青木栄太(あおきえいた)さん
株式会社内田洋行教育コンテンツ事業部・教育コンテンツ企画部部長

 青木さんは,入社以来十数年にわたって教育分野一筋で活躍されています。最近では,総務省のネットワーク型教育用コンテンツの流通のためのプラットフォームであるエデュマートの中心メンバーとして実証実験に参加されています。さらに,このプラットフォームを引き継ぎ,エデュモールとして配信事業を運営されています。
株式会社内田洋行   http://www.uchida.co.jp/
 教育関連事業とともに,オフィス分野,情報システム分野を三本柱として展開する日本を代表する専門商社。学校内を探せば必ずどこかにUCHIDAのマークが見つかるはずです。
  青木栄太(あおきえいた)さん
—教育コンテンツ企画という部署では,どんなお仕事をされていますか。
 「コンピュータ関連では,個別学習用のソフトウエアや,授業などで活用できる提示用のデータを企画制作しています。他に,理科の実験映像等の制作も企画しています。また,OEM(OriginalEquipment Manufacturing:他社ブランドの製品を受託製造すること)で,いろいろな教材のディジタル化も行っています。たとえば,ブリタニカ国際百科事典をベースとしてディジタル化した「エンサイクロペディア・ブリタニカ・オンライン・ジャパン」に企画から携わっています。」

—そんなお仕事の中で,著作権に関わる場面を教えて下さい。
 「教材のディジタル化を行うときには,紙媒体の場合の著作権と,ディジタルデータの著作権では,取り扱いが変わってくるので,注意して処理するようにしています。」

—具体的には,どんな処理になりますか。
 「たとえば,OEMでのディジタル化の際には,こんな処理になります。
 委託した出版社が自社で著作権を所有している場合は基本的に問題ありません。しかし,これですべてがクリアできるわけではありません。画像や各種資料がディジタル化することを前提に著作権処理をされていないことも多々あります。その場合には,著作権者にいちいち確認を取る必要があります。本として出版されるにはよいが,ディジタル化するとサーバーに保存されるとか,ネットワーク上で取り扱うとか,データが簡単に複製できるとか,そのようなことも想定されます。これらも踏まえて,細かい条件を確認してクリアしていかねばなりません。」

—他にはどんな配慮が必要ですか。
 「外国語で書かれた文献の場合には,翻訳者の権利も発生するので,こういうところにも配慮が必要です。要は,すべてにおいて,使用する範囲とどんな媒体で使用するかを確認しなければならないということです。」

—OEMではない自社制作の場合はどうなりますか。
 「この場合は,条件を提示した上で,プロダクションと契約することが多いです。つまり,細かい権利処理も含めて,撮影や録音やデータ処理を任せてしまうのです。契約は歩合制で,いわゆるロイヤリティーを支払う形式が主ですね。」

—では,学校を対象にコンテンツを作成する際にはどんな苦労がありますか。
 「近年,世間一般に個人情報の取り扱いについては,うるさくなってきていると言えるでしょう。特に学校の場合は,生徒さんの顔や名前など個人を特定できる情報がある場合にその処理に苦慮することも多いです。本来の目的をお話しして理解を求めるのですが,顔が映っているモノはすべてダメという場合もけっこうあります。」

—情報化・ネットワーク化という部分では何か感じられることはありますか。
 「コンピュータネットワークの普及にともない,新たなトラブルの種が生まれていることは事実です。ただ,学校に限らず一般企業でも,危ないところには手を出さないという風潮を強く感じます。このあたりがディジタル化の進歩を阻害するボトルネックになっているのではないでしょうか。」

—最後に,学校での情報教育にどんなことを期待されますか。
 「何が×で,何が○なのかを,きちんと認識させて,×の場合になぜ悪いのかを理解させる指導が望ましいと思います。著作権はあらゆるモノに存在しています。だからといって,何もかもが使えないということではありません。ただ,無断で使用することはタブーです。使っていいか迷ったら,何はともあれ聞いてみる。疑わしいまま放置せずに確認する。許諾を得たら出典を明示して使用する。こんな繰り返しの経験で,いろいろなことがより深く理解できるようになると思います。
 若いうちから,こういう体験をさせる。できれば,小中高校と体系的に,さらに,ご家庭も含めての著作権教育というのが望ましいのではないでしょうか。」

—どうもありがとうございました。
授業での展開事例
目的:どんな場面で著作権を侵してしまう可能性があるのかを考えさせる。
展開:インタービューの内容を紹介した上で,以下のような設問に解答させてみる。
Q1:今までの経験で,これは著作権を侵害しているのではないかと思われる行為の例を挙げてみましょう。
Q2:一般的に,研究開発をしている会社では,社内で写真を撮ってはいけないというのが常識です。その理由を考えてみましょう。



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