「ハイジ HEIDI」

あなたが初めて出会う、アルプスの少女

観るものを“しあわせの連鎖”でつないでくれる愛と感動の物語

 かれこれ九十年近く前のこと。スイスの作家ヨハンナ・スピリの「ハイジ」は、大正のころに、作家、野上彌生子が翻訳を手がけた。その後、竹山道雄、高橋健二、村岡花子といったそうそうたる人たちが、訳している。なんと、「放浪記」の林芙美子さんが絵本につけた文章もあった。ことそれほど「ハイジ」には、作家をして訳してみたい魅力があるのだろう。
ハイジ HEIDI この7月15日から、映画「ハイジ」が公開される。日本で大ヒットしたアニメ「アルプスの少女ハイジ」があったが、これはイギリスで作られた実写版である。 ハイジ(エマ・ボルジャー)は、幼くして両親に死に別れるが、出会う人すべてに喜びをもたらし、弱いものすべてを慈しむ、すてきな女の子。デーテ叔母さんに育てられていたが、11歳の時から、アルプスの山に住むおじいさんのアルム(マックス・フォン・シドー)と住むことになる。
  アルムはかつて酒と博打で身をもちくずし、喧嘩が原因で人を殺したとの噂もある、頑固な老人。いまは町を捨てて、山の上で一人で住んでいる。いつも感謝の気持を忘れず、おしゃまで優しいハイジに接し、アルムの心は癒されていく。
 ハイジはヤギ飼いの少年ペーターにも親切である。貧しいペーターに、お弁当を分けてあげたりする。やがて冬。ハイジは、目の見えないペーターのおばあさんにも、元気な声で話しかける。
 春になって、ハイジはアルムに連れられて、町までチーズを売りに行く。町でもハイジは人気者だ。そんなある日、デーテ叔母さんがやってきて、ハイジを連れ戻してしまう。叔母さんは、フランクフルトのお金持の娘クララの遊び相手に、ハイジを選んだのだ。脚が悪くて歩けないクララは、おてんばで明るいハイジをすぐに好きになるが、意地悪なのが執事のロッテンマイヤー夫人(ジェラルデイン・チャップリン)。
 ハイジの新しい生活が始まるが・・。
 これがなかなかよく出来ている。ハイジを演じたエマ・ボルジャーが達者なのにも驚くが、まわりの大人たちの人となりが、かなりきめ細かく描かれていて、真実味がじゅうぶん。ドラマの展開も軽快である。
 いつ、どこで、どんな状況にあっても、人間としての優しさを持ち続けるハイジから、子供も大人も教えられることが多い。
 スロベニアで撮影されたアルプスの風景は、四季の移り変わりがくっきりで、目をみはる。そして、感動的なラストシーンには、おもわず涙が。
 アルム役のマックス・フォン・シドー、ロッテンマイヤー夫人役のジェラルデイン・チャップリンの存在感が映画を引き締める。

●7月、恵比寿ガーデンシネマ、シネリーブル池袋他全国公開

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