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西の魔女が死んだ(2007年・日本)

人生で大事なものを考えさせてくれる
愛と驚きに満ちた感動作

画像:西の魔女が死んだ

 およそ人が生きていく上で、なにが大事なのだろうか? 古今東西、先人たちが、いろいろな答えを出している。
 そんな答えのひとつが、映画「西の魔女が死んだ」(アスミック・エース配給)である。原作は梨木果歩さんのベストセラー本で、すでに100万部、売れたという。
 監督は、「八月のクリスマス」を撮った長崎俊一。

 中学3年のまい(高橋真悠)は、ママ(りょう)から、「魔女」のおばあちゃん(サチ・パーカー)が危篤と知らされる。おばあちゃんはイギリス人で、「魔女」とは、まいとママだけの呼び名である。

 話は、2年前にさかのぼる。

 「学校はわたしに苦痛を与える場所」と、中学生になったばかりのまいは登校拒否をする。まいは、ママのすすめで、おばあちゃんと暮らすことになる。おばあちゃんの家は、豊かな緑に囲まれた、すてきな場所にある。まいは「魔女」になりたいのに、おばあちゃんの教えは、ごくごく普通のことである。早寝早起き、ごはんをきちんと食べ、適度な運動をすること。そして、どんなことも、自分で決める、ということである。
画像:西の魔女が死んだ  まいの新しい生活が始まる。野いちごを摘んでジャムを作る。にわとりを飼って、卵を取る。野菜やハーブを栽培して、お茶を飲んだり、おやつやごはんを食べる。
 おばあちゃんの優しさと、自然の恵みを受けて、まいはいつしか、心が癒されていく。

 やがて、ある事件がきっかけで、まいはおばあちゃんと別れることになる。まいがおもしろくないこと、きらいな人でも、おばあちゃんは違う。おばあちゃんは、誰にも優しく接するのだった。
 ひさしぶりに、おばあちゃんの家に駆けつけるまい。そして、おばあちゃんがまいに残した、最後のメッセージを受け取ることになる。おばあちゃんは、まいとの約束をきちんと守ったのである。

 まい役の高橋真悠が、繊細な少女役を熱演。おばあちゃんに扮するサチ・パーカーは、大女優シャーリー・マクレーンの娘、余裕たっぷりに、優しい「魔女」を演じる。
 映画は、子どもから大人に成長することは、どういうことか。そしてなにより、まいがいちばん知りたかった、「魔女」になるとはどういうことかを、さりげなく伝える。
 映画の後半、主人公のまいとともに、わたしたちの一人一人が、人生にとってなにが大事なのかを考えるようになる。そしてそれは、おばあちゃんの教え通り、特別なことではなく、ごくごく普通のことであることに気づくはずである。

画像:西の魔女が死んだ おばあちゃんは言う。「草や木が光に向かって伸びていくように、魂は成長している」。また、「魔女になるために大切なのは、意志の力、自分で決めたことをやりとげる力」。そして「人はみんな幸せになれるようにできている」と。

●2008年6月21日(土)より、恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館 ほか、全国一斉ロードショー