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小さな赤い花(2006年・中国、イタリア)

画一的教育政策に潜む矛盾
真の教育とは!?

画像:小さな赤い花

 北京オリンピックの関係か、このところ中国映画の公開が目立つ。
 そのなかの一本、「小さな赤い花」(アルシネテラン配給)を見た。

 原題は「看上去很美」、直訳すれば、「見たところ、とても美しい」といったほどの意味になる。
 中国の幼児教育制度の実態が、いきいきと描かれている。場所、時代は特定されてはいないが、ほぼ現代の都会の話である。

 チアンは4歳の少年、あどけない顔の割には、はっきりとした自分の考えを持っている。
 ある日、長期不在になる両親の都合で、全寮制の幼稚園に入ることになる。幼稚園では、先生の言うことをよく聞き、友だちと仲よくしたり、いいことをしたら、紙で作った赤い花がもらえる。教室に子どもたちの名前を書いた大きな紙がはってあって、そこに赤い花が一つ、二つと張られていく。逆に、先生の言うことを聞かなかったり、喧嘩をしたりすると、もらった花が減っていく。
 若くてきれいな先生は、やさしそうだが、きびしい決まりに従って、園児たちを指導管理している。
 幼稚園児の一見のびのびした日常が描かれるが、チアンだけはどこか違っていた。赤い花をもらおうと努めても、なかなかうまくいかない。家庭では甘やかされて育ったせいか、着替えも一人ではできないし、おねしょをしたりする。もちろん、赤い花はもらえない。
 園児の女の子を仲間に引き込み、チアンなりの抵抗が始まる。先生は妖怪であるとみんなに告げてまわる。お仕置きは独房である。独房から出されたチアンには、もう仲間はいない。
 チアンは幼稚園から出ていく決心をする。外の世界で、チアンは何を目にしたのか?

 チアンの表情が、とても豊か。笑ったり、いじけたり、悲しんだり。大きな目さえ、表情がたっぷり。

画像:小さな赤い花 全寮制の幼稚園は実在している。北京で子どもをずっと幼稚園に預けている両親から、話を聞いたことがある。かなりきびしい規律で、しっかり管理されているという。幼稚園に行くことをいやがっている、とも。現在の中国の事情が端的に現れている。
 寓話的な作りではあるが、リアルに幼稚園のシステム、先生たちの関わり方が描かれる。教育の背景にある国家、政治の姿がくっきりと見え隠れする。

 原作は、現代中国の作家ワン・シュオの自伝的ともいえる小説である。監督は「北京バスターズ」や「東宮西宮」など、中国では上映禁止になった作品の多いチャン・ユアン。中国人に、絶叫スタイルで英語を伝授するドキュメント「クレイジー・イングリッシュ」もチャン・ユアンの作品。
 テーマは、幼児教育のあり様にとどまらない。国家と教育、個人と組織、弾圧と抵抗、自由と束縛などについて、思いをめぐらせることを要求する。いかにあるべきか、チャン・ユアンが中国という大海に投げ込んだ石の波紋は、大きい。

●2008年8月、シアター・イメージフォーラムにてロードショー!!