学び!と美術

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【ドリームデイ・アット・ザ・ズーinアドベンチャーワールド】「違う」と出会い、心で繋がり、自分の正解を見付けてほしい ~突撃! 図工な企業(第4回)~
2026.02.10
学び!と美術 <Vol.162>
【ドリームデイ・アット・ザ・ズーinアドベンチャーワールド】「違う」と出会い、心で繋がり、自分の正解を見付けてほしい ~突撃! 図工な企業(第4回)~
小学校図画工作科編集部(「学び!と美術」担当)

図工力(※1)を発揮して活動している(と編集部が感じた)企業などを訪問し、働く方々のお話を聞きながら、図画工作や美術を学ぶ意義を捉え直すシリーズの第4回目。

和歌山にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」では約120種、約1600頭の動物が暮らしており、動物と触れ合えるツアーやアトラクションなど多彩な楽しみ方を提案しています。

そんなアドベンチャーワールドで8年前からスタートし、毎年行われているイベント「ドリームデイ・アット・ザ・ズーinアドベンチャーワールド」の運営に関わっていらっしゃるお二人にお話を聞きました。

◎お話を聞いた図工な人々

  • 相田 拓道さん(株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)経営企画室企画営業課)
  • 岡崎 菜々子さん(株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)経営企画室広報課兼SDGs地域連携課)

左:相田さん、右:岡崎さん

◆「ドリームデイ・アット・ザ・ズーinアドベンチャーワールド」とは?

18歳以下の障がいのある方とそのご家族1200組を無料で招待し、周囲の目を気にせず思い切り楽しめる特別な一日を提供しています。2025年は11月5日に開催。

原体験から始まる学び

――「ドリームデイ・アット・ザ・ズーinアドベンチャーワールド(以下、ドリームデイ)」はなぜ始めたのですか?

岡崎:ドリデイの前身である「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」は、1996年にオランダのロッテルダム動物園で誕生しました。その想いにアドベンチャーワールドが共感・賛同し、本取り組みを開始しました。当初は夜間開催として実施していましたが、より多くの方に、少しでも長い時間楽しんでいただきたいという想いから、2021年より日中開催版として「ドリームデイ・アット・ザ・ズーinアドベンチャーワールド」を開催しています。

ドリームデイでは、「原体験」を大切にしています。

私たちも幼少期そうだったように、誰かから教えられて…というよりも、自分が体験したことを通して「自分はこれが好き」っていう興味関心を見付け、世界にはいろんなことがあるんだなって知っていくと思うんです。

けれど、特定の属性・特性をもっている子どもたちは、そういった学びの機会がどうしても制限されてしまっている実情があります。学びの選択肢自体が少ないんです。これまでだったら周りの目を気にしてできなかったことをここで体験してもらいたい。そうして始まったのがドリームデイです。

相田:「筆談ボードを用意してますよ」「車椅子を貸しますよ」というのはだいたいどの施設でも対応していると思うんです。でも「ハートの部分」でもう一歩踏み込んだフォローができるんじゃないかなと。動物園に限らず、美術館や映画館も同じ状況かなと思います。

――なるほど…。「動物がいる」ことで、ゲストの皆さまにどんな影響が感じられますか?

相田:アドベンチャーワールドには約120種の動物がいます。同じサルでもぜんぜん違うサルがいる。自分より体が大きい、匂いがする、違う動きをする…。実際に見たり触れたりして、体の感覚を通して「違う命に触れる」っていう体験をしてもらえたらと思います。

動物もいろんな種類がいて、一頭一羽それぞれ生きているなって感じがして、人間も同じだなってことを感じ取ってほしいなと。

ここが図工力!

☞ 「原体験」から学びが始まる。
☞ 多種多様な動物と出会い、「違う命」に触れることを実感する。

エデュテインメント(エンターテインメント×エデュケーション)の力

相田:動物と触れ合うときの、心がフワッてする感じ、ありませんか?「推しの動物を見付けた!」っていう喜びもあるんですよ。実はこの年になって鳥のかっこよさに気付きました(笑)。ペリカンとかめっちゃかっこいいなと。いくつになっても性別問わず、新たな気付きがあります。何かビビッとくる、動物のもつ「特別な良い違和感」がはまってるんじゃないかと思うんですよね。

相田:我々は「エデュテインメント」という概念を大切にしているんです。

岡崎:私は「エデュテインメント」という言葉に惹かれて入社したといっても過言ではありません(笑)。

私たちにとっての「エデュケーション」は、知識をただ教えるとか、誰かや何かのまねをするといった一方的なものではなく、自分で気付いて自分で疑問をもって自分で調べたくなる、主体的に考えていきたくなるような形をつくっていくことだと考えています。

相田:「この鳥って何食べるんだろ?」ってなったときに、「ネットで調べてみよう」「友だちに聞いてみよう」「共有したいな」っていう気持ちを後押しをするのが「エンターテインメント」の役割だと思っています。

パークであれば、パフォーマンスやBGM、イベントなどさまざまな方法で、まず最高のエンターテインメントを届けるんです。勉強しなさいよ、課題を提出しなさいよ、というんじゃなくて、自ら調べたくなるような雰囲気を醸しだすことが、我々「エデュテイナー」の役割だと思っています。まだまだ道半ばですけど…(笑)。

岡崎:実は私、もともと学校教員になろうとしていて。でも、大学時代に実際に授業をやったとき、なんか違うなって違和感を感じて…。

そんなとき、高校生の探求学習のプロジェクトがあって、それをサポートするスタッフに参加したんです。そうしたら、高校生がすごく前のめりに質問してきてくれて、私が分からないようなこともどんどん聞いてくれたんです。「じゃあ一緒に考えよっか!」でやるしかないみたいな状況になって。わからないことを教えてもらうのではなく、「一緒に考え始めよう」となる感覚がすごく素敵だなと感じたんです。

ここが図工力!

☞ エデュテイナーの役割は、自ら学びたくなるような雰囲気を醸しだすこと
☞ 「分からないから教える」ではなく、「一緒に考え始める」

心で繋がり、自分で見付けたことが「正解」

――ドリームデイの取り組みを通して、未来の社会がどんな形になってほしいと願いますか?特に、子どもたちに願うことがあれば教えてください。

岡崎:私たちが大切にしているのは、「だれもがキラボシ」という思いです。

個人の思い込みや価値観はそれまでの経験が影響していると思うのですが、「自分の当たり前は誰かの当たり前ではない」ということを忘れないでほしいなと思います。

「あなたも、私も素敵。」って、自分に対してもキラボシを認められる心を育んでいくことがまず大切だと思います。そうすることで、お互いを認め合い、「なかよくなれたら嬉しいな」って思える、そんな子どもたちが増えたらいいなと思います。

相田:今の子どもたちって、正解がもうすでに用意されているのかなって思っていて。ネットでもAIでも正解は出てくると思うんですけど、心で繋がって初めて分かることのほうを大事にしてほしい。

「自分以外はすべて他人」と思わずに、異なる他者と心と心で繋がることによって見えてくることを「正解」として捉えてほしい。

そうじゃないと、たとえば「障がいのある人には優しくしてくださいね」って言われたら、それを正解と思って受け止めちゃうんですよ。

ネットで調べればそれっぽい正解がすぐ見付かるけど、やっぱり自分で触れて初めて「そういうことだったんだ」という稲妻みたいなものが頭に降ってくる。それ「も」正解にしてほしい。特に子どもたちには。正解があるからこそ、「本当の正解」を見付けてほしい。

障がいのことだけじゃなく、自分が好きなスポーツでも、恋愛においても、人と交わることに関しては自分の正解を見付けてほしい。

…と、自分の息子にはいつも伝えています。

ここが図工力!

☞ 「正解」がすでに用意されている時代だからこそ、異なる他者と心と心で繋がり、「自分の正解」を見付ける。

◆参加されたゲストの声から

  • とにかく気が楽。多動や癇癪、パニックなどもお互い様精神のため心穏やかに対応できる。
  • 同じ立場の方が多くいらっしゃり、親子ともに気を遣いすぎることなく楽しめる。
  • 普段障がい児育児に孤独を感じることが多いのですが、他のご家族の姿を見て、自分だけではない、明日からも育児頑張ろうと思うことができたので(他の方にもドリームデイを)お薦めしたいです。
  • 人がたくさん集まる場所や、初めての場所が苦手で大きい声で叫んでしまうため普段は参加を諦めていたのですが、今回は挑戦することができ嬉しかったです。家族みんなで思い出をつくることができました。

相田:ゲストの皆さんがおっしゃっていたことは、「この空間はマイノリティとマジョリティが逆転している」。

あの空間には障がいのあるファミリーしかいないので、寝転がって泣いちゃったり、癇癪を起こしたりしても、周りに「ごめんなさいね」みたいなことを言わなくていいし、刺すような視線もとんでこない。それがないってだけで、ぜんぜん違うんです。

私には障がいがある子どもがいます。昔は、子どもを連れて街に行くときは、人の多い場所を避けて外出したり、急に癇癪などを起こしたらどうしようと常に考えて行動していました。映画であろうがバーゲン会場であろうが、楽しさは半減、いや、ほぼゼロになります。やっと到着した瞬間に癇癪を起こしたときは、もうその場で帰っちゃうこともたくさんありました。

刺すような視線も、謝る必要もない。それがないっていうことがもう、全てなんです。参加者にとって最大の恩恵です。

もう一つ、「きょうだい児」という言葉がありまして、きょうだいは常に我慢しているんです。同じように、自分のきょうだいが “障がい児っぽく” 扱われないってことも、きょうだいにとってたまらなくハッピーなんですよ。

★日本文教出版は、「ドリームデイ・アット・ザ・ズー2025inアドベンチャーワールド」にAdventureパートナーとして協賛しています。

※1:本シリーズでの図工力とは、図画工作や美術など造形活動を通して培われる「自ら考える力 決める力 やり抜く力」「多様な他者と協働する力」「よりよい未来を創造する力」です。図工力は「もの」をつくるときだけに発揮されるのではなく、社会の潤滑油となって楽しさや希望をつくりだせる原動力になるものだと信じています。そんな図工力を備えた人がいて、図工マインドが垣間見える活動をしている企業(組織)をここでは「図工な企業」と呼びます。