学び!と地理
学び!と地理

日本の地域構成
「日本の地域構成」の学習については、国土の位置、世界各地との時差、領域の範囲や変化とその特色などをもとに、日本の地域構成を大観し理解することが求められています。都道府県の名称と位置、都道府県庁所在地名については、自分の描いた略地図に位置と名称を書き込むなどの作業的な学習活動が想定されています。世界の地域構成の学習と同様に、単に地名を覚えるだけの学習活動にならないよう配慮することが必要です。とりわけ、第1学年では日本の地名に触れる機会が少ないと思います。第2学年の学習においても都道府県の名称と位置などを適宜取り上げ、地理的分野の学習の全体を通して定着を図る必要があります。
国土の位置に関して、日本の絶対的位置(数理的位置)を捉える際には、日本を通過する主な緯線や経線を確認するとともに、それらが世界のどこを通っているか、地球儀や地図帳を使って調べることで、世界の地域構成と関連づけることが大切です。こうした活動を通して身につけた知識は、後続する大項目Bの学習において活用され、その後も生きてはたらく知識となることが期待されます。
例えば、屋久島の南、トカラ列島の口之島付近を通る北緯30度は、ユーラシア大陸ではヒマラヤ山脈と交差し、インド北部やイランを通り、エジプトのカイロ付近を通過しています。また、アメリカ合衆国では、メキシコとアメリカ合衆国の国境と交差し、南部のニューオーリンズを通過しています。したがって九州地方はアフリカ北部やアメリカ合衆国南部と同緯度に位置するということになります。
盛岡市や秋田市付近を通過する北緯40度は、中国では北京付近、アメリカ合衆国では本土の南北のほぼ中央を通っています。この北緯40度は、アメリカ合衆国の中西部から東部にかけて、温帯と亜寒帯の境界に近く、東アジアでも同様の傾向があります。
なお、ヨーロッパでは、北緯40度がギリシャやイタリア南部、スペイン中央部といった南ヨーロッパの国々を、北緯50度がイギリスのグレートブリテン島の南端やフランス北部、ドイツ南部、ウクライナのキーウ付近を通過しています。北緯50度は、日本付近では、北海道のはるか北を通ります。南北樺太(サハリン)の境界となっているため、歴史的分野の学習でも登場します。これらのことを確認することで、ヨーロッパの主要部が日本よりも高緯度にあることを実感することができるのではないかと思います。このことは、ヨーロッパの地域的特色や大陸の西岸と東岸の気候の違いなどについて理解する際に活用できる知識となります。
そして、北アメリカ大陸における北緯50度は、アメリカ合衆国とカナダの数理的国境(北緯49度)に近く、日本とアメリカ合衆国本土は、ほぼ同緯度に位置することがわかります。このことも、北アメリカ州を学習する際に生かしたい知識です。
各国との時差に関して、日本の標準子午線である東経135度は、ニューギニア島の東部とオーストラリア中央部を通過しています。しかし、オーストラリアには日本と同一の時刻帯はありません。日本と同一の時刻を採用している地域は、シベリアの一部、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、インドネシア東部などに限られます。
国土の相対的位置(関係的位置)を取り上げる際には、隣接する大陸や海洋、近隣の国々との位置関係によって捉えるなどの工夫が大切です。日本海や東シナ海を中心とした視点も有効です。なお、正距方位図法の仕組みについての理解が前提となり、少し複雑にはなりますが、(株)オンターゲットが提供する「どこでも方位図法」というサイト(https://maps.ontarget.cc/azmap/
)を活用すると、相手国・地域から見た日本の位置を捉えることができます。
領域をめぐる問題
日本の領域をめぐる問題については、中学校社会科の各分野の特質に応じて的確に扱い、教科全体の学習を通して理解を深める必要があります。地理的分野の学習においては、地図を活用してそれぞれの位置や名称について確認するとともに、自然環境の概要などを調べて整理することなどが考えられます。
図は、地理院地図の「計測」の機能を使って、北海道の納沙布岬の灯台と北方領土の貝殻島の灯台との間を計測している様子を示しています。ここでは、その距離は約3.6kmと示されています。例えば、この距離に相当する場所を身近な地域で当てはめてみることで、その距離の近さを実感するとともに、副次的に地理院地図を活用する技能を高めることが期待できます。合わせて津軽海峡や関門海峡などの海峡の幅や、離島との直線距離などを計測してみることで、日本を構成する主な島々の位置関係や国土の広がりを理解する手助けにもなるかもしれません。
「地理院地図」2025年11月26日閲覧 文字追記は筆者
(東京スカイツリーから上野公園までの距離とほぼ一致する。)
また、自然条件や景観などについて調べることで、対象地域への関心を高めるといった工夫も考えられます。北方領土の自然については、独立行政法人北方領土問題対策協会のホームページ(https://www.hoppou.go.jp/archives/basics/islands2.html
)などが参考になります。そこでは、北方領土の近海は、「世界の3大漁場の一つに数えられる魚の宝庫」として紹介されています。サケ、マス、ニシン、カニ、エビ、貝など寒流系の魚介類が多く棲息し、それらを餌とするトド、オットセイ、アザラシなどもいます。昭和10年代には、サケ・マス定置網漁、タラ、タラバガニなどの漁、コンブ採取などが主要産業でした。1945(昭和20)年8月15日現在の世帯数及び人口は、歯舞群島852世帯5,281人、色丹島206世帯1,038人、国後島1,327世帯7,364人、択捉島739世帯3,608人、合計3,124世帯17,291人でした。こうした基礎的なデータを確認することで、地域の具体的なイメージをもつことは、地理的分野の特質に応じた学習といえるかもしれません。


