学び!とICT

学び!とICT

主体的・対話的に深く学ぶために 第2回 〜情報活用スキルを視覚化する〜
2022.11.29
学び!とICT <Vol.06>
主体的・対話的に深く学ぶために 第2回 〜情報活用スキルを視覚化する〜
桃山教育学院大学 木村明憲

 情報活用能力の知識及び技能を高めるということは、子どもたちが情報活用スキルを身につけることであると考えます。情報活用スキルとは、タブレットPCなどのICTを使いこなすことができる力であるとともに、情報そのものを集めたり、整理したり、まとめたり、伝えたりする力でもあります。このようなスキルを高めることにより、子どもたちはそのようなスキルを発揮して自ら課題を解決し、主体的に学ぶことができるようになるのです。

情報活用スキルを習得するには

 それでは、情報活用スキルを身につけるにはどのような指導・支援が必要なのでしょうか。情報活用スキルなどのスキルは、スキルを発揮して学ぶ経験をすればするほど高まり、短時間で多くの情報を効率よく処理することができるようになります。これは、武道や茶道、スポーツなどと同様で何度も繰り返して練習することが能力を高める上で重要なことなのです。つまり、情報活用スキルを高めるために情報を活用する活動を授業や家庭学習で何度も経験することが大切だということです。
 しかし、これまでの授業においても子どもたちは、情報を活用する活動をほぼ毎時間、何度も経験しています。にもかかわらず、子どもたちの情報活用スキルは必ずしも高いとは言い切れません。それはなぜなのでしょうか。その理由は、子どもたちが情報活用スキルを十分に認知しておらず、学習中に情報活用スキルを発揮することが意識されていないことにあると考えます。このことはとても大切なことで、何事も繰り返すだけでは上手くならず、うまくなる・できるようになることを意識して練習するからスキルが身につき高まっていくのです。

情報活用スキルの視覚化

 そこで、子どもたちが情報活用スキルを意識化するために考えたことが、情報活用スキルの視覚化でした(図1)。

図1 情報活用スキルカード
※クリック or タップでPDFが開きます。

 学校では、学期の終わりに教科学習の成果を通知票で視覚化して、子どもたちや保護者に知らせています。子どもたちは、通知票に視覚化されることによって、「国語はできた」「算数はいまいちだった」という判断ができ、「次の学期は算数を頑張ろう」といった目標設定ができるのです。私は、子どもたちが主体的に学ぶことが重要視されている今日においては、教科だけでなく情報活用スキルも視覚化すべきであると考えます。
 私が小学校で教鞭をとっていたときは、情報活用スキルを一覧表にまとめた「情報活用スキルカード」を子どもたちに配付し、情報活用スキルを視覚化していました(図1)。このカードでは、探究的な学習過程を「集める」「整理する」「まとめる」「伝える」と表現し、それぞれの過程で情報活用スキルを発揮して学ぶ学習活動を示しています。また、チェック欄を設け、子どもたちが経験した活動を記録することができるようになっており、自らの情報活用スキルを視覚化することができます。私は、このカードを授業や家庭での自主学習の際に参照したり、経験した活動を記録したりするように指導し、子どもたちは自ら情報活用スキルを意識しながら学習を進め、スキルを高めていました。
 情報活用スキルカードを活用して学習を進めることで、子どもたちは授業はもちろん家庭での自主学習においても創意工夫をしながら、主体的に学ぶ姿が見られるようになりました。図2は、情報活用スキルカードを活用した自主学習への取り組み方をまとめたサイトです。

図2 情報活用スキルカードを活用した自主学習を提案するサイト Self-Study

 このサイトには、子どもたちが情報活用スキルを発揮し、探究的に取り組んだ自主学習ノートの静止画を掲載しています。探究的に学ぶ際のヒントになると思います。情報活用スキルを発揮する授業、家庭学習を実現するために、ご活用いただけたら幸いです。

木村 明憲(きむら あきのり)
桃山学院教育大学 講師 博士(情報学)
専門分野は教育工学、情報教育
主な著書に『主体性を育む学びの型:自己調整、探究のスキルを高めるプロセス』、『単元縦断✕教科横断―主体的な学びを引き出す9つのステップ』(さくら社)

【参考文献】

  • 文部科学省(2017)小学校学習指導要領
  • 木村明憲(2021)主体性を育む学びの型、さくら社

【参考情報】

【本稿について、さらに深めたい方は以下に解説動画を掲載しておりますのでご視聴下さい。】