学び!とICT

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主体的・対話的に深く学ぶために 第6回 ~探究プロセス、情報活用スキル・思考スキルを軸とした単元・授業づくり~
2023.04.18
学び!とICT <Vol.10>
主体的・対話的に深く学ぶために 第6回 ~探究プロセス、情報活用スキル・思考スキルを軸とした単元・授業づくり~
桃山教育学院大学 木村明憲

 児童・生徒が主体的・対話的に学ぶには、情報活用スキルや思考スキルを発揮して学ぶ授業を構想する必要があります。情報活用スキルや思考スキルを発揮して学ぶ授業とは、教師が教室の前に立ち、発問したり板書したりする時間をできるだけ短くし、子どもたちが自立して学ぶ授業形態が基盤になります。このように子どもたちが、自立して学ぶ環境が確保されることで、子どもたちが情報活用スキルや思考スキルを発揮しなければならい状況を創り出すことができると考えます。

表1 学習プロセスと学習スキル

 しかし、子どもたちが情報活用スキルや思考スキルを発揮する授業を構想すると言ってもそれがどのような授業であるのかはある程度の枠組みながければ、構想することができません。そこで、子どもたちが学習スキルを発揮する学習プロセスとして、探究プロセスと単元縦断型プロセスを紹介します。探究プロセスとはご承知の通り「課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現」のプロセスであり「総合的な学習の時間」において基本となるプロセスとして示されています。私は、このプロセスが総合的な学習の時間だけでなく、各教科の学習においても適用されることが重要であると考えています。なぜなら、このようなプロセスで学ぶことを子どもたちが理解し、実行することで学習の主体者となり、自ら学習スキルを発揮して、学びを進めていくことができると考えるからです。しかし、各教科の授業を探究プロセスで進めると、どうしてもそれぞれの教科で身に着けなければならない知識及び技能が十分に定着しないという悩みに陥ってしまいます。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。それは、おそらく子どもたちがその教科・それぞれの授業で扱う情報を多面的に見ることができなくなるからではないかと感じています。教師が主体となって授業を進めていた際は、教科の目標達成に向かう情報を子どもたちに提示するとともに、その情報を多面的に見て、考えを深めることができるような発問をし、理解を深めていました。しかし、子どもが主体となって授業を進めると、課題に対する「答え」を探して、その「答え」が見つかれば課題が解決したと勘違いし、その教科で深めるべき知識や技能が十分に定着しないままに、授業を終えてしまうことになってしまうのだと思います。したがって、子どもたちが主体として学ぶ上で、探究プロセスを基本としながら、そのプロセスの中に、「本時の課題の達成に向けた情報を収集するプロセス」「収集した情報を整理し、理解するプロセス」さらに「整理した情報を、教科の見方・考え方を働かせながら多面的に見るプロセス」が組み込まれる必要があるのではないかと考えます。
 そのような考えから導き出したのが、探究プロセスを細分化して創り出した単元縦断型プロセスです。単元縦断型プロセスは、表1のように探究プロセスを9つのプロセスに分割し、それぞれのプロセスで発揮する情報活用スキルと思考スキルを明らかにしています。単元縦断型プロセスを基に授業を構想することにより、子どもたちは課題が単元を縦断する学習を体験することができます。課題が単元を縦断する授業では、子どもたちが単元の授業を通して課題を意識し、追究して学ぶ必要があります。このように課題を常に意識して、課題の解決に向かおうとする中で、子どもたちは自然に学習スキルを発揮して主体的に学びを深めていくことができるのです。
 単元縦断型プロセスについて詳しく説明すると、ここには書ききれませんので、これらのプロセスを解説した動画のリンクを以下に貼ります。単元づくりの参考になれば幸いです。

単元縦断型プロセス

  1. 問いを見出す
  2. 解決策を考える
  3. 情報を収集する
  4. 情報を関連づける
  5. 情報を吟味する
  6. 考えをつくる
  7. 新たな価値を創造する
  8. 創造した価値を発信する
  9. 単元の学習を振り返る

単元縦断型授業についての再生リスト

木村 明憲(きむら あきのり)
桃山学院教育大学 講師 博士(情報学)
専門分野は教育工学、情報教育
主な著書に『主体性を育む学びの型: 自己調整、探究のスキルを高めるプロセス』、『単元縦断✕教科横断―主体的な学びを引き出す9つのステップ』(さくら社)

【参考文献】

  • 木村明憲『主体性を育む学びの型: 自己調整、探求のスキルを高めるプロセス』さくら社、2022