学び!とICT

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主体的・対話的に深く学ぶために 第8回 〜主体的・対話的に深く学ぶために〜
2023.06.01
学び!とICT <Vol.12>
主体的・対話的に深く学ぶために 第8回 〜主体的・対話的に深く学ぶために〜
桃山教育学院大学 木村明憲

学習者の主体性とは

 これまで、学習者が主体性を発揮して学ぶ授業はどのようにすれば実現するのかということについて考えてきました。そして、このような授業を実現するために、情報活用・思考・自己調整のスキルを育成すること。そして、それらのスキルを発揮して学ぶことができる単元を構想し、授業を行うことを提案してきました。

図1 学習者の主体性

 学習指導要領には、学習者の主体性と関連して「主体的・対話的で深い学び」について示されています。このような学びを実現するためには、図1のように、主体的に学びを進める場面と対話的に学びを進める場面が設定された授業を実施する必要があります。ここで言う「主体的な学び」を実現する上で大切な力が自己調整スキル、「対話的な学び」を実現する上で重要となる力が情報活用スキル・思考スキルです。そして、これらのスキルを発揮しながら学ぶ上で、学習者が学習過程を把握するために学習計画を作成したり、自らの学習を確認・調節するために振り返りの時間を設定し、メタ認知をすることができるようにしたりする必要があると考えます。加えて、このような学びは単発で行っても効果はありません。図2のように、様々な教科・領域に波及させていくことで、子どもたちが主体性を発揮して学ぶことができるのです。

図2 主体性を発揮して学ぶ学習モデル(AK-Learning)
https://youtu.be/OJWJ3HG5qcc

主体性を発揮する学びのその後

 学習者が主体性を発揮して学ぶということは、人生そのものをより良くすることに繋がると考えます。例えば、学校教育の中で自己調整スキルを身につけることができた人は、就職した後も、仕事の段取りを考えながら仕事に取り組むことでしょう。そして、どのように仕事をすれば効率良く仕事が進むのかを考え、働き方を変えていくはずです。効率良く働くことができるようになれば、日常生活の中で自分の好きなことや挑戦したいことに取り組む時間を捻出することができます。これこそ、豊かに幸せにいるということではないでしょうか。また、自己調整スキルに加え、学校教育の中で情報活用スキルも高まっていたとします。すると、コンピュータを始めとする多様な情報機器を活用して短時間でうまく情報を集めたり、まとめたりすることができます。さらに、会社内の上司や同僚、または取引先の方々と上手くコミュニケーションを取り、協働的に仕事を進めることができるでしょう。さらに、これに加えて思考スキルも高まっていたとすると、受け手に伝わりやすい文章を書いたり、プレゼンテーションをしたりすることができたり、仕事がうまく進まないことの原因を冷静に考え、解決したりすることができます。このように仕事をすることができれば、きっと自らの仕事にやりがいを感じながら楽しく働くことができるのではないでしょうか。
 もちろん、これらのスキルが高まっているからと言って、その後の人生が全てうまくいくわけではありません。ただ、主体性を発揮して学べるということは、主体性を発揮して働ける、主体となって遊べる、主体的に楽しめるということにつながります。そのような力は、様々な困難に打ち勝ち、自らの力で人生を切り開いていく力であると考えます。
 これからの日本を、そして世界を担う子どもたちが、楽しくやりがいを持って新しい世の中を創造していくためにも、主体性の原動力となる学習スキルを育成し、それらを発揮する授業が広がり、発展していくことを願っています。

木村 明憲(きむら あきのり)
桃山学院教育大学 講師 博士(情報学)
専門分野は教育工学、情報教育
主な著書に『主体性を育む学びの型: 自己調整、探究のスキルを高めるプロセス』、『単元縦断✕教科横断―主体的な学びを引き出す9つのステップ』(さくら社)