学び!とICT

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教育現場での生成AIの活用 第1回 ~生成AIに触れてみる~
2024.04.05
学び!とICT <Vol.13>
教育現場での生成AIの活用 第1回 ~生成AIに触れてみる~
京都橘大学 池田修

 みなさんこんにちは。
 京都橘大学 発達教育学部の池田修と申します。これから隔月で、「教育現場での生成AIの活用」というテーマで連載をすることになりました。よろしくお願いします。
 大学では、国語の授業の作り方などの授業を担当しています。その私がこの連載をお引き受けしたのは、実はICTと国語の授業づくりは非常に親和性が高いと考えているからなのです。また、2021年末に世の中に登場した、ChatGPTをはじめとする生成AI。これも実は国語の教師のお仕事だろうと考えています。その理由については、この連載の中でのちのち触れることとして、まずはみなさんにやっていただきたいことがあります。
 連載一回目は、「生成AIに触れてみる」ことにしたいと思います。

生成AIに触れてみる

 先ず、次のプロンプトをコピペして、生成AIに入れてみましょう。そうですね、Microsoft Edgeというブラウザから使用できるMicrosoft Copilot(マイクロソフト コパイロット)(*1)の「より創造的に」モードを使ってみてください。画像のように紫色の画面になると思います。

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ミッキーマウスとミニーマウスが、日本の京都で和服を着て街中を散歩している絵を描いてください。
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 どうでしょうか?何かそれらしい絵が「生成」されたのではないでしょうか?(*2)他にも、みなさんが持っているアイディアで、絵を生成することが可能です。あれこれ遊んでみてください。

実際に作成した画像の一例

 次に、文章を生成してみましょう。保護者会の案内を生成させましょうか。同じく、以下のプロンプトとをコピペして、生成AIに入れてみてください。

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京都橘小学校の、保護者に向けた校長からの授業参観の案内文を書いてください。日付は、2024年7月5日です。時間は、9:00から12:00の間です。
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 どうでしょうか?ダミーの時間割なども加えられた案内文が提示されたのではないでしょうか。これで少し、生成AIとは何かご理解いただけたでしょうか?

実際に作成した案内文の一例

生成AIを使うときに注意すること

 著作権や人権を大事にして使うというのは、当然のことかと思います。しかし、実はすでに生成AI側で、著作権や人権を侵害する可能性のあるものは、生成しないように学習済みの膨大な語彙は訓練されています。このことから、著作権や人権への配慮は大切なことですが、問題になるような結果が生成されるケースは少ないと私は理解しています。
 注意することは以下の二つです。

  • Hallucination(ハルシネーション)問題
  • Anchoring(アンカリング)問題

です。
 まず、Hallucination問題。
 生成されたものを見て、(この内容は、事実と違う!)と思われる方もいらっしゃるかもしれません。そうです。生成AIが生成する文章は、あくまでもドラフト(下書き)です。このドラフトを元にして、正確な情報に修正を加えながら、仕上げていく必要があるのです。
 生成AIは、正解のデータベースを持っていて、そこから正解を引っ張り出してくるものではありません。学習済みの膨大な語彙から、確率的に正しいと思われるものを選んで、文章に仕立てます。生成するわけです。
 その結果、確率的に正しくとも、内容的には間違っているものが提示されることがあります。これをHallucinationと言います。このHallucinationを減らすための工夫は色々と考えられていますが、それでも、現状では完全に無くすことは難しいと思われます。Hallucinationは避けられないという前提で、生成されたドラフトを磨き上げるということを、基本として使う必要があります。
 次に、Anchoring問題。
 人間の脳には、最初に見た情報を正しい情報だと思い込む癖があります。認知バイアスの一つです。これがAnchoringです。
 生成AIで生成された文章は、誤字脱字はなく読みやすい文章で提示されます。その際、一つしか生成を求めないと、その最初のものを良いものだと思い込んでしまい、それを採用してしまいます。しかし、これは危険です。
 特に、人によって主義や主張が分かれる文章を生成させるとき、一つの文章だけを生成させ、それを元に仕上げるのには無理があります。こんな時は、どうすればいいのか?私が勧めているのが、最初から「3つ提示してください」としてしまえばいいのです。
 こうしておけば、ユーザーは、その3つのうちからいいものを一つ主体的に選ぶことになります。Anchoring問題を回避することができます。

 まず第一回では生成AIがどのようなものか、その特徴と注意点についてお話しました。これらを踏まえて、どんどん使ってみることを強くお勧めします。
 では、また。

*1:Microsoft Copilot(マイクロソフト コパイロット)は、Microsoftによって開発された検索エンジン型のチャットボットで、生成AIの一種です。Microsoft Edge上では「Ctrl+Shift+.(ピリオド)」などで開くことができます。
*2:2023年からミッキーマウスは、著作権が切れ、パブリックドメインになったことから、こうして生成AIで生成することが可能になりました。

池田 修(いけだ おさむ)
京都橘大学発達教育学部教授。
公立中学校の国語科教員を経て現職。「学級を楽しく経営したい」「作って学ぶ」「遊んで学ぶ」をテーマに研究・教育を行う。著書は『作文指導を変える つまづきの本質から迫る実践法』、『子供の「困った発言」に5秒で返す 教師の「切り返し」』(明治図書)など多数。文部科学省学校DX戦略アドバイザー。生成AI教育的活用の研究開発に取り組む。