学び!とICT

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教育現場での生成AIの活用 第2回 ~イラストで楽しむ~
2024.06.05
学び!とICT <Vol.14>
教育現場での生成AIの活用 第2回 ~イラストで楽しむ~
京都橘大学 池田修

 みなさんこんにちは。
 京都橘大学発達教育学部の池田修です。生成AIの連載は2回目になりました。1回目でご案内した画像生成は楽しんでいただけましたでしょうか?人にもよるのですが、このお絵かきは、ハマる方はかなりハマります。私も結構ハマりました。
 今回も画像生成をやりましょう。画像生成の楽しみ方を、ご案内しましょう。

画像生成の活用

 生成AIは、OpenAIのChatGPT-4か、MicrosoftのEDGEというブラウザーにある、Copilotの「より創造的モード」を使いましょう。

1.自分の書いた文章をイラストにする

 *読者の皆さんの中には、学級通信を書いたり、企画書を書いたり、プレゼンテーションをされる方は多くいるかと思います。その文章にイラストを入れる場合、今はどのようにしているでしょうか?著作権フリーのイラストから、書いてある文章に合っているものを探してはめ込むということをしているのではないでしょうか。これ、結構大変ですよね。
 パラダイムシフトしましょう。探すのではなく、作るのです。その文章にぴったりのイラストを生成AIに描いてもらいましょう。*

 ということで、*から*の間にある文章を生成AIで絵にしてもらったのが、上のイラストです(*1)
 出てきたものをベースにして、自分のイメージに合うものを作ります。描かせます。私は学会の発表のプレゼンテーションの文言をイラストにしてもらったことがあります。なかなか優秀ですよ。

2.物語の登場人物をイラストにする

 「文章を描く」の延長ともいえますが、小説で描かれた登場人物をイラストにすることもできます。
 「授業で生成AIを活用する」という点でいえば、描かれたイラストを題材にクイズにしても楽しいですね。
 たとえば「国語の教科書に出てくる物語や小説の登場人物の絵を描きましょう。その絵を見て、多くの人が当てることができた作品を優秀作品にしましょう」というように。
 次のイラストは、私が国語の教科書にある、とある作品のクライマックスシーンを描いたものです。さて、何の作品でしょうか。誰を描いているのでしょうか。どの場面でしょうか。答えは、この文章の最後にあります(^^)。

3.音楽のイメージをイラストにする

 音楽もイラストにしてくれます。これをクイズにして遊んでも楽しいです。「このイラストは、誰の何という曲を描いたものでしょうか?」という問いです。
 クラシックの有名な曲をイラストにします。著作権が切れている作曲家の作品がいいと思います。例えば、「ショパンのノクターンの絵を描いて」というと、次のような絵を描きます。

 ただし、第1回にも書きましたが、ここでもAnchoringの問題を回避する必要があります。人間は、最初に見た情報を正しい情報だと思い込む脳の癖ですね。ですので、1枚だけ描かせておしまいにするのではなく、複数枚を描かせて、その中から自分のイメージに合っているものを選びます。描くのが簡単になった今、頭を使う場所は描くことではなく、選ぶことに移動したと考えても良いでしょう。
 Copilotであれば、4枚の絵を同時に描いてくれます。ChatGPT-4のデフォルトでは2枚です。このような絵から自分のイメージに合うものを選んで、作品とします。
 「ショパンのノクターンの絵を描いて」だけでも、このレベルの絵は描いてしまいます。ですが、ここに自分が解釈したノクターンの世界を「言葉」で書き加えていくと、そこには生成AIを活用する人の世界観が表現されることになるでしょう。
 私たちは、言葉を筆にして絵を描けるようになったのです。
 言葉が豊かであればあるほど、生成AIはその能力を発揮することになります。
 私は2023年の1月にChatGPTに出会い、このことを直感的に理解しました。そして、「あ、これは国語の先生のお仕事だ」と思い、ChatGPTにのめり込んでいったのでした。

 あれ?既定の文字数になりました。まだまだお伝えしたいことはあるんですけど(^^)。
 では、この「イラストで楽しむ」は第3回にも続きます。

「2.物語の登場人物をイラストにする」の答え
森鴎外作『高瀬舟』の登場人物の喜助。婆さんが行ってしまった後、「それから年寄衆がお出になつて、役場へ連れて行かれますまで、わたくしは剃刀を傍に置いて、目を半分あいた儘死んでゐる弟の顏を見詰めてゐたのでございます。」(*2)のシーンです。

*1:生成AIはその性質上、全く同じプロンプトを入力しても都度異なる回答が生成されます。
*2:青空文庫 森鴎外著『高瀬舟』より引用
https://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/691_15352.html

池田 修(いけだ おさむ)
京都橘大学発達教育学部教授。
公立中学校の国語科教員を経て現職。「学級を楽しく経営したい」「作って学ぶ」「遊んで学ぶ」をテーマに研究・教育を行う。著書は『作文指導を変える つまづきの本質から迫る実践法』、『子供の「困った発言」に5秒で返す 教師の「切り返し」』(明治図書)など多数。文部科学省学校DX戦略アドバイザー。生成AI教育的活用の研究開発に取り組む。