学び!と共生社会

学び!と共生社会

特別支援教育支援員について
2021.08.25
学び!と共生社会 <Vol.19>
特別支援教育支援員について
大内 進(おおうち・すすむ)

 幼稚園、小・中学校、高等学校において障害のある児童生徒に対し、食事、排泄、教室の移動補助等学校における日常生活動作の介助を行ったり、発達障害の児童生徒に対し学習活動上のサポートを行ったりするため、「特別支援教育支援員」の配置が進められてきています。今回はこの「特別支援教育支援員」を取り上げることにします。
 「特別支援教育支援員」の名称は、教育委員会によってさまざまで、「学習支援員」、「教育補助員」などの名称が用いられている場合もあります。その配置については、地方財政措置によって、都道府県・市町村に対して必要な経費が措置されています。平成19年度に小・中学校について地方財政措置が開始され、平成21年度に幼稚園、平成23年度に高等学校と順次拡大されてきました。平成23年度の地方財政措置は、幼稚園4,460人、小・中学校36,512人、高等学校367人でしたが、その後増え続け、令和2年度では、幼稚園7,900人、小・中学校57,000人、高等学校900人、計65,800人となっています。ニーズが高まってきているといえます。

 「特別支援教育支援員」の名称や職務内容については、基本的には文科省の「『特別支援教育支援員』を活用するために」(平成19年6月)(*1)に示されていましたが、法令上明示されていない状態が続いていました。それが、急転直下、この8月23日に公布された学校教育法施行規則の一部を改正する省令(令和3年文部科学省令第37号)によって、医療的ケア看護職員、情報通信技術支援員、教員業務支援員とともに教育上特別の支援を必要とする児童の学習又は生活上必要な支援に従事する職員として規定されました(施行規則第65条の6関係)(*2)
 「特別支援教育支援員」の職務内容についても、これまでに示されてきたものと変わらないのですが、この施行規則に明記されました。主に次のものが考えられると記されています。

  • 基本的生活習慣確立のための日常生活上の介助
  • 学習支援
  • 学習活動、教室間移動等における介助
  • 健康・安全確保
  • 周囲の児童生徒の障害理解促進


 「特別支援教育支援員」の適切な配置や確保、活用等については、中央教育審議会答申「「令和の日本型教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)(*3)や「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議報告」(令和3年1月)(*4)においても提言されており、規定が整備されたことは、インクルーシブ教育の推進という観点からも望ましいことだといえます。多様な支援を必要とする児童生徒が学ぶ学校において、「特別支援教育支援員」は、インクルーシブ教育システムの構築を目指す上で、「チーム学校」の一員として幼稚園から高校においてますますその役割が期待されていくことになると思います。
 他方、長期的な展望に立つと課題も多くあります。その資格については、特に定められているわけではありません。経験者や幼稚園教諭・保育士、教員の免許有資格、看護師資格を歓迎するとしている自治体が多いようです。また、多くの場合、採用は会計年度単位の臨時職員や非常勤職員となっています。チームとして機能するためには資質の向上が問われてくることになります。こうした課題を念頭に置いて「特別支援教育支援員」を活かしていきたいものです。
 なお、学校教育法施行規則の一部を改正する省令には、医療的ケア看護職員、情報通信技術支援員、教員業務支援員についても、その名称と職務内容が新たに規定されています。これらについては本稿では触れませんでしたが、医療的ケア看護職員については、インクルーシブ教育システムの構築とも深く関わっていますので、改めて取り上げたいと思っています。情報通信技術支援員、教員業務支援員も学校における働き方改革の推進やGIGAスクール構想の着実な実施等の課題に対応するために必要な支援スタッフです。こちらについては、改正された省令をご参照ください。

*1:「特別支援教育支援員」を活用するために(平成19年6月)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/002.pdf
*2:学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/mext_00034.html
*3:中央教育審議会答申「「令和の日本型教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(令和3年1月26日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm
*4:「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議報告」(令和3年1月)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/154/mext_00644.html