学び!とPBL

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生徒国際イノベーションフォーラム①
2020.07.27
学び!とPBL <Vol.28>
生徒国際イノベーションフォーラム①
三浦 浩喜(みうら・ひろき)

1.フォーラムのプログラム

 2017年8月2日から4日にかけて、生徒国際イノベーションフォーラム2017(以下ISIF’17)が、東京の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されました。
 ISIF’17は、3つの柱から構成されています。一つ目は、国際間で構築する生徒たちの人間関係、二つ目は地方創生イノベーションスクール2030の実践の交流、三つ目が2030年の教育のイノベーションの探究、です。これらはそれぞれ色づけされ、シンボルマークにも表現されています。
図1 ISIF’17の会場づくりの様子 ISIF’17は、6つのクラスターを構成する8カ国・地域から、約300名以上の生徒・教員が、また、ボランタリークラスターから約30名、研究者、省庁、大使館、企業、そしてOECDなどから100名の関係者が参加した。
 ISIF’17のプログラムは、先に述べた3つの柱によって構成されています。すなわち、緑のセッション(開会式、閉会式、異文化交流)は、様々な国の生徒達が関係を築き、仲良くなることを狙って企画されています。黄色のセッション(ブースでのプレゼンテーション、グループワーク)は、プロジェクトの成果発表と、他のチームの取り組みも学び、どのような未来を創りたいのか、そしてそのためにどのような能力が必要なのかを生徒達が考える時間です。またピンクのセッション(生徒ラウンドテーブル、フォーラムディスカッション、パネルディスカッション)は、ここまで学んだことを振り返り、また学び損ねたことに気づき、そして、自分たちが欲しい未来を創るために必要な能力をどのように身に着けたいのか、そのための必要な「学びのイノベーション」を議論します。

2.開会

図2 開会セレモニーの鈴木寬代表の挨拶図3 国際色豊かな参加者たち 東北の高校生の司会で、開会式が進められました。オープニングムービーに続いて、主催者を代表して鈴木寬OECD日本イノベーション教育ネットワーク代表が挨拶を述べ、続いて来賓から祝辞をいただきました。本フォーラムの概要説明では、本フォーラムの目的やロゴ、参加者数が示されるとともに、いくつかのアイテムについて説明されました。「シンボルバルーン」は、「世界をこう変えたい」というイノベーションフォーラムに参加した生徒の意志でつくる、「もう一つの地球」であること、そしてこれが次のフォーラムが開催されるまでモニュメントとして残されること、「生徒共同宣言」は、これまでの地方創生イノベーションスクールプロジェクトと3日間のフォーラムの議論をもとにしてまとめ、閉会式で採択され、マスコミや関係者を通して、社会に発信され、次の社会を創るための道標になることなどが示されました。

3.クラスターのブース

図4 中央に飾られた地球のディスプレイ レセプションホールには、各クラスターの6つのブースが設置され、参加者は自分たちでポスターの展示や準備を行い、来場者に対して、自分たちの言葉で実践の概要やそこから学んだことを述べていました。世界各地からの生徒に自分のプロジェクトの説明をすることは、生徒達の自信にもつながり、また他のチームのプロジェクトを知ることで、今まで知らなかった、考えたこともなかった事柄を学ぶ機会となりました。生徒達は大いにこのブース発表を楽しんでいたようです。
 ISIF’17への参加クラスターは6つで、次のようなブース活動が繰り広げられました。

○東北・ドイツ(ハール)クラスター
 東北・ドイツクラスターは、当初環境問題を中心にして探究が進められました。東北クラスターは、東日本大震災及び原発事故からの復興を掲げ、自然科学及び社会科学において環境問題を避けて通ることはできません。探究学習を柱とするふたば未来学園高校と、環境先進国ドイツのエルンスト・マッハ・ギムナジウムの連携を軸に、農業と観光で復興を試みる福島市の中学生チームと、津波からの復興に取り組む気仙沼市の中高生チームが、東北クラスターに参加しました。

○福井・シンガポールクラスター
図5 福井・シンガポールクラスターのブース 敦賀高校は、地域課題に立脚して環境・エネルギー問題の探究を進めています。羽水高校は、福井市役所の方々と協働しながら特に「災害時の情報伝達手段はどうあるべきか」という課題について調査してきました。テマセック・ジュニア・カレッジと若狭高校はそれぞれの地域的特徴に基づきながら、地域の課題発見(設定)と解決に向けて挑戦しており、特に、生態系への影響が懸念されるマイクロプラスティックに関する研究を国際共同研究として行なっています。福井大学教育学部附属義務教育学校には、3学年でそれぞれのテーマ「心理」、「TV」、「日本文化」に基づきプロジェクト学習を進めています。

○和歌山・トルコ・ドイツ(コンスタンツ)クラスター
図6 和歌山・トルコ・ドイツクラスターのブース 移民、地方創生などの問題をテーマに取り組んできました。和歌山チームは日高高校、田辺高校、那賀高校、海南高校、星林高校から成り、それぞれの人口減少の激しい和歌山の地方創生について考え、活動を展開してきました。
 トルコは現在隣国からの難民の問題や国内問題が落ち着かない中での参加となり、国際社会の抱える深刻な課題を提示してくれました。彼らはプロジェクトの中でシリア難民の人たちともふれあい、支援の活動を行いました。ドイツ・コンスタンツチームも、ドイツにおける難民問題や、また若者における2030年の言語の変化や持続可能な社会のためのツーリズムなどの研究が報告されました。

○広島・米国・インドネシア・ニュージーランド・フィリピンクラスター
 本クラスターでは、広島、米国、インドネシア、ニュージーランド、フィリピンからの110名の生徒が協働してきました。
 広島では、2015年から四つのエリアチームに分かれ、地域課題の解決のために、地域の人々とイベントを開催したり、フリーペーパーを発行したりするなど、様々な活動に取り組んできました。海外パートナー校の生徒達は、環境問題や、ストレスマネジメント等に取り組みました。2016年夏に「グローバルスクールinハワイ」で国際協働を開始し、その後2017年夏に「グローカルスクールin広島」で再集結しました。そして、これまでの活動の集大成として「Students’ Innovation Fes」を企画・運営したり、クラスター独自の共同宣言を作成したりしました。

○隠岐島前高校・エストニアクラスター
 エストニア最大の島であり、多くの観光客が訪れるサーレマ島にあるSaaremaa Ühisgümnaasiumの生徒達は、観光が経済と環境に与えるポジティブ・ネガティブ双方の影響を調べ、原因の特定と、解決策を地域の人々に提案しました。
 隠岐島前高校の生徒達は、島で一番の問題である人口減少・少子化対策に取り組みました。彼らは、様々な結婚の形態を調べ、それらを紹介するイベント(劇や資料の展示)を実施しました。

○高専機構クラスター
 明石工業高等専門学校で実施した全教員と3学年全員が参加する学科・学年横断課題探求型授業、Co+Workと、Temasek Polytechnic、協働実施したOCP(Overseas Community Projectin Cambodia)についてポスターを展示しました。

生徒国際イノベーションフォーラム2020が図の通り開催されます。今回は新型コロナウィルス感染防止のために、ウェブ上で開催することになりました。誰でも参加できますので、ご興味のある方はリンク先をご覧下さい。
https://forum2020.innovativeschools.jp/jp/