学び!とPBL
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年が明けて少し経つと、私のところには小中学校から次年度の総合的な学習の時間(以下、総合学習)についての相談が多く寄せられます。その中には、新年度を迎えるにあたり大きく変革を試みようとする学校も少なくありませんが、その際に度々話題に上がるのは、「現場の負担を増やさずに新たな試みを行う」ことだったりします。
私たち大学教員もそうですが、毎年授業をゼロからつくり直すことは相当な負担だと考えます。小中学校の現場の先生方もきっとそうであり、新たな試みをしようとした場合、その「負担」や「コスト」ばかりが気になるのは当然だと思います。他方で、現在実施している総合学習の内容を丸ごと変えるのではなく、その取り組みに探究的な視点や問いかけを加えることや、既存の取り組みを整理するだけで、探究学習として質的に向上していくことも大いにあります。
伝統的な「体験活動」は探究的な学びにできないのか?
中学校の総合学習では、「福祉体験」や「職場体験」といった体験活動が各学年に割り振られていることが多いです。また、地域の伝統芸能や伝統文化を学ぶような活動などが総合学習の中で組み込まれていることもあります。
そうした状況で、総合学習で探究的な色合いを強めようとした際に、現場の先生方から「でも、○○体験が二学期にあるので、そこで探究が途切れるんです」といったお話を伺います。こうした時に感じるのは、現場の先生方は年間の総合学習の中に、探究学習や体験活動など複数が混在するイメージを持たれているということです。確かに複数が混在し、一つを途中で中断し、別の取り組みを終えた後に中断していた取り組みに戻って再開するという流れは、先生方も生徒たちにとっても負担が多いように感じます。
他方で、こうした体験活動などもすべて探究的な視点で串刺しにすることができるのであれば、活動が行ったり来たりすることや、複数の取り組みが混在することによる負担感は軽減されるのではないかとも思います。
「活動」ではなく「人」にフォーカスを当てる
福島県広野町立広野中学校と福島県飯舘村立いいたて希望の里学園後期課程では、それぞれ二年生(義務教育学校は八年生)がそれまで取り組んでいた職場体験を探究学習の流れの中に組み込み、新たな取り組みを始めました。従来の職場体験をフィールドワークとして扱い、探究学習の情報収集や調査とし、受け入れ先の人に着目しながら探究学習を行っていくという取り組みです。広野中学校では、職場体験で知り得た情報をもとに地域で働く人を紹介する「The職業人」という冊子を制作しました。冊子には、職業人が大切にしている職業観などを伝えるポスターと、そのポスターに込めた思いを「編集後記」の二つの枠組みで構成しました。
いいたて希望の里学園では、「ふるさとの担い手図鑑」という冊子を制作し、地域の担い手をキーワードに地域で働く人を介して地域を学び、その人たちの原動力に着目して探究学習を展開しました。
「探究」で串を刺す
学校現場には、背景や理由が明確ではない状態で継続している取り組みなどが多く存在しています。これは学校に限ったことではなく、社会の中でも度々目撃したり体験したりすることだと思います。他方で、これらの取り組みを一つのテーマでつなぎ合わせることができれば、負担も少しは軽減するのではないでしょうか。総合学習においては、年間を通じて様々な取り組みが盛り込まれていることが多いですが、それらを「探究」でひとつなぎに串を刺すことができれば、現場の負担の軽減だけでなく生徒たちの活動にも納得感のある流れが創出される可能性があります。その流れはストーリー(物語)といった表現もできるかもしれません。一つのストーリーとして年間の総合学習を捉えた時に、中断するのではなくつなげていくことを意識できれば、負担を感じずに探究的な学びの質が向上するかもしれません。
【参考資料】
- 2021年度広野中学校二学年制作「The 職業人」
- 2022年度いいたて希望の里学園八学年制作「ふるさとの担い手図鑑」

