使ってみよう!ずがこうさくの教科書

使ってみよう!ずがこうさくの教科書

「主体的・対話的で深い学び」って、どんな授業?
2019.05.24
使ってみよう!ずがこうさくの教科書 <第7回>
「主体的・対話的で深い学び」って、どんな授業?
山田 芳明(やまだ・よしあき)

「主体的・対話的で深い学び」という言葉を最近よく耳にしますが、実際の授業で、どのようなことを意識して取り組めばよいのかが分かりません……。

端的にいえば、題材を通して、また、一回の図工の時間毎といった内容や時間のまとまりの中で、「主体的・対話的で深い学び」を実現する次のような場面をどのように設定して授業を組み立てるか、ということを意識することが大切です。(*1)

  • 学習の見通しを立てたり、学習を振り返ったりして自身の学びや変容を自覚する場面
  • 対話によって自分の考えを広げたり深めたりする場面
  • 子どもが考える場面と教師が教える場面、及びその組み立て

といっても、やはり分かりにくいですよね。そういうときは教科書で具体的に考えるのが一番です。
「ちょきちょき かざり」(1・2上 p.12-13)を参考に、具体的に見ていきましょう。

1)主体的な学びの実現に向けて

主体的な学びの実現のためには、子どもが「学習の見通しをもつこと」と、「学習を振り返り、学びを自覚すること」が大切です。このような場面を授業の中に設定することを意識しましょう。

まず、「学習の見通しを立てる場面」は導入時ですよね。

例えば、絵や立体、工作に表す題材では、導入で「表したいことを見付ける」、「材料や用具を活用して、表し方を工夫する」、「どのように表すか考える」など資質・能力にそって、およその見通しをもてるようにします。
そうです、「学習のめあて」(資質・能力の三つの柱に基づいています)を基に子どもたちとめあてを共有するイメージです。

一方、「学習を振り返ったりして自身の学びや変容を自覚する場面」は終末時(振り返り)です。

友だちと活動の成果を確認し合ったり、教師が言葉かけをしたりすることで、子ども自身が成長や変容したことを自覚できるように導きます。
ここでは、「活動の後で」を基に振り返りをしたり、「学習のめあて」を改めて確認したりするイメージです。

2)対話的な学びの実現に向けて

「対話によって自分の考えを広げたり深めたりする場面」は主として展開時です。
友だちと互いの活動や作品を見合いながら考えたことを伝え合ったり、感じたことや思ったことを話したりできるように、活動場所や授業展開を構成したりします。
教科書の情景写真の子どもの姿のイメージですね。

3)深い学びの実現に向けて

「子どもが考える場面と教師が教える場面、及びその組み立て」を考える上で大切なのは、教師が指示しすぎず、子ども自身で考え、深めていけるように授業を構成することです。
実はこれ、「ちろたん」の立ち位置がヒントになります。ちろたんは、造形的な見方・考え方に基づく子どもの発言や行為を見取って、子どもの気付きを促すヒントを示したり、気付きに共感したりしています。

先生方も、教えたい気持ちをぐっとこらえて、ちろたんのセリフを参考に子どもたちの学びへの共感的な言葉かけを工夫してみてください。

山田先生からひとこと
さて、「主体的・対話的で深い学び」の授業を少しはイメージしていただけましたか。
今回は主体的・対話的で深い学びを、それぞれの学びを実現する場面に分けて考えましたが、実際にはこれらは相互に深く関連しています。
特に「主体的な学び」は全てに関わる重要な視点です。子ども自身が「面白そうだ!」「やれそうだ!」「やってみたい!」という気持ちをもって自ら活動を進めようとしなければ、上記の場面を設定しても「主体的・対話的で深い学び」は実現できません。「子ども自身が題材を進めていく」というイメージを大切していただけたらと思います。
また、「対話的な学び」における対話の対象は、子ども同士や教師だけではなく、保護者や地域の方々、専門家など広い視野で捉え、必要に応じて対話の場面を設定することも大切です。
★「主体的・対話的で深い学び」については、内容解説動画も参考になります。

*1:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 図画工作編 p.104-105

※2020年度版小学校図画工作科内容解説資料として扱われます。