高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

「印象派を超えて ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」
2013.11.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.052>
「印象派を超えて ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」
「種まく人」フィンセント・ファン・ゴッホ作
「高校美術3」P.4掲載 クレラー=ミュラー美術館蔵

 本展覧会は、単に点で描かれた作品を紹介するのではなく、「分割主義」という理念に着目しています。スーラは、純粋色の点で描く「分割主義」という手法を考案し、色の組み合わせがもたらす視覚的効果を探求しました。こうして色彩は、何かを再現するための手段であることを超えて、独立した一つの表現へと自立していったのです。純粋色へと「色を分割する」という新たな発想には、20世紀に隆盛する抽象絵画の萌芽が秘められていました。本展は、色という観点で、スーラからゴッホ、そしてモンドリアンまでを検証するという、美術史的にも重要かつ、斬新なコンセプトに基づいています。
 今回の展覧会には、ゴッホがアルルに移った1888年以降の作品も何点か出品されています。中でも最も有名な作品が「種まく人」です。ミレーの「種まく人」にインスピレーションを受けて描かれたこの作品は、厚い絵具で丹念に塗り込められ、色彩の強烈な力にあふれています。
 印象派にせよスーラにせよ、その目的の一つは、光をいかに表現するかにありました。しかしゴッホの場合、光を目に見えるように表現するというよりは、むしろ艶やかな光を放つ絵具そのものの力が前面に押し出されています。
 「種まく人」でも、黄色に緑を散りばめて塗られた太陽と、オレンジ色と青色の絵具を力強く敷き詰めた地面の表現が、ことさら私たちの眼を惹きます。一つ一つ、ぐいぐいと力強く置かれた青とオレンジは、補色の関係にあります。その強烈な効果は、ゴッホの激しい感情のうねりをダイレクトに私たちに伝えています。「種まく人」以外の出品作においても、黄色と青、赤と緑など、補色あるいは補色に近い関係にある色彩の対比が、実に効果的に用いられています。
 ゴッホの絵画は、絵具が放つ艶やかな効果が大きな特徴であり、実物から得られる印象は圧倒的です。

(国立新美術館 主任研究員 長屋光枝)

<展覧会情報>

  • 「印象派を超えて―点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」
  • 2013年10月4日(金)~12月23日(月・祝) 企画展示室1E

展覧会概要

  • 本展は、純粋色へと色を分割する「分割主義」という理念に着目して、スーラからゴッホ、そしてモンドリアンまでを検証するという、美術史的にも重要で斬新なコンセプトに基づいています。色の力に魅了され、その魅力を伝えようと奮闘した画家たちの作品約90点を通して、色そのものが有する豊穣な世界を追求します。

国立新美術館ico_link

  • 所在地 東京都港区六本木7-22-2
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 毎週火曜日(祝日又は振替休日に当たる場合は開館し、翌平日休館)/年末年始(2013年12月24日~2014年1月7日)

<次回展覧会予定>

  • 未来を担う美術家たち 16th DOMANI・明日展
  • 2013年12月14日(土)~2014年1月26日(日)
    毎週火曜日および2013年12月24日(火)~2014年1月7日(火) は年末年始メンテナンス休館

その他、詳細は国立新美術館ico_linkでご覧ください。