高校教科書×美術館
(高等学校 美術/工芸)

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三菱一号館美術館名品選2013 ― 近代への眼差し 印象派と世紀末美術
2013.10.01
高校教科書×美術館(高等学校 美術/工芸) <No.051>
三菱一号館美術館名品選2013 ― 近代への眼差し 印象派と世紀末美術

 19世紀末のパリは、成熟する都市の大衆文化とともに版画芸術が花開いた時代であり、多くの画家=版画家たちが互いに影響し合いながら、様々な技法とスタイルによる個性豊かなオリジナル版画を生み出していきました。とりわけ石版画(リトグラフ)技法は、画家自身が描いた線を石の板にそのまま写し取って大量に複製できるため、芸術作品をより身近なものにしました。パリの歓楽街モンマルトルのダンス・ホール「ムーラン・ルージュ」のポスターや、「ジャヌ・アヴリル」「メイ・ベルフォール」など、モンマルトルのスターたちを宣伝するポスターを制作したアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックは、浮世絵から影響を受けた大胆な構図と色使い、簡潔かつ斬新なデザイン性によって、それまで広告に過ぎなかったポスターを芸術の域にまで高めていると言えます。

 ロートレックと同様にパリに生きる人々を主題にしつつ、よりフラットで均一な色の面の効果をさらに追求したのが、フェリックス・ヴァロットンの木版画でしょう。スイスで生まれ、パリで活動したヴァロットンは、ナビ派の画家の一人に数えられますが、その木版画は白と黒のみを用いた独特のスタイルを有しています。ヴァロットンの木版画には、彼特有の風刺的なユーモアが存在すると同時に、現代のわれわれが見ても色あせないデザインセンスが感じられます。このほかにも、ナビ派のピエール・ボナールやモーリス・ドニ、象徴主義のオディロン・ルドンら19世紀末の重要な作家たちによる版画コレクションからは、当時の版画芸術の興隆と広がりを見て取ることができるでしょう。

(三菱一号館美術館 学芸員 杉山菜穂子)

 

<展覧会情報>

  • 三菱一号館美術館名品選2013 ― 近代への眼差し 印象派と世紀末美術
  • 2013年10月5日(土)~2014年1月5日(日)

展覧会概要

  • ルノワールら印象派、そしてルドン、ロートレック、ヴァロットン。19世紀末パリを中心に、美術史上大きな変革期を生きた29人の画家たちの、夢と理想、自由の輝きに満ちた149点の三菱一号館美術館所蔵品を展覧します。

三菱一号館美術館ico_link

  • 所在地 東京都千代田区丸の内2-6-2
  • TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • 休館日 月曜休館(但し、祝日の場合は開館し、翌火曜休館/12月24日は18時まで開館)/12月28日(土)~2014年1月1日(水・祝)

<次回展覧会予定>

  • ザ・ビューティフル ― 英国の唯美主義1860-1900
  • 2014年1月30日(木)~5月6日(火・祝)

その他、詳細は三菱一号館美術館Webサイトico_linkでご覧ください。