社会科NAVI
(小・中学校 社会)

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小学校社会科とICTの活用
2013.12.12
社会科NAVI(小・中学校 社会) <Vol.05>
小学校社会科とICTの活用
ICT最前線
佐賀市立若楠小学校  内田明

1.知識基盤社会に生きる子どもたち

 知識基盤社会,情報化社会へ対応する人材の育成は学習指導要領や教育の情報化ビジョンでも述べられているところである。知識基盤社会に生きる子どもたちには,豊富な知識と柔軟な思考力,確かな情報活用能力に基づき,主体的にコミュニケーション,コラボレーションしながら新しい知や価値を創造し,平和・共存する社会をともに創っていってほしいと願う。その目的を達成するためのツールとして,学習者も指導者もICTを使いこなすことが必須であると考える。

2.若楠小学校のICT環境

 本校は,総務省「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」の教育情報化事業の採択校となっており,4学年以上の全児童に1人1台のタブレット端末と,4学年以上の全教室に電子黒板,指導者用デジタル教科書が整備されている。教師が児童に分かりやすい学びを提供するツールとして,児童が資料などの情報を活用して協働的に学び,思考力や表現力を向上させるツールとして,ICT活用を試みている。

3.授業で教師が活用

電子黒板でグラフを説明

電子黒板でグラフを説明

 教師が電子黒板を活用し,図表や写真,動画等の資料を提示している。授業の導入場面で学習問題を導き出し児童の解決意欲を喚起したり,分かりやすく説明し知識を確実に定着させたりするツールとして日常的に活用している。また,指導者用デジタル教科書やネット上の資料を大きく映し出しマーキングしながら説明したり,実際に体験することが困難な事象を動画などで児童に間接体験させたりしており,これらは分かりやすい学びを提供するうえで有効であると考える。

4.児童が活用

 「小学校学習指導要領解説社会編第4章 指導計画の作成と内容の取扱い」には,問題解決をする際,コンピュータを活用して,情報を検索・収集する能力,分析・選択する能力,検討・吟味する能力,加工・整理する能力などを習得することができると述べてある。また,コンピュータを活用して,調べたことや考えたことを分かりやすく発信・表現する能力を育てることにも言及している。つまり,情報を読み解き,自分の考えをもち表現する活動を通して,情報活用能力も育むことができる。これらは,ICTを児童が活用することで身につく力である。これらの能力をどのように育てているのか,実践例を元に紹介する。

タブレット端末の画像から 情報を読み取る

タブレット端末の画像から情報を読み取る

動画を視聴して情報を読み取る

動画を視聴して情報を読み取る

5. 実践事例

「情報化した社会とわたしたちの生活」(5年生 全5時間 2013年3月12日 若楠小学校5年1組にて実施)

①指導計画と本時の展開(全5時間)
(1)生活と情報とのかかわりについて話し合い,学習問題をもつ。
(2)情報化により生活がどう便利になったか話し合う。
(3)情報化の進展に関わる様々な問題について調べる。※興味を持った問題についてさらに調べ,その解決策を考える。(家庭学習)
(4)3人グループで話し合い,よりよい情報活用について考え発表する。(本時)
(5)下級生に伝える掲示物を作成する。

②本時の指導(表1参照)

表1 本時案

表1 本時案

 本時はまず,前時で興味をもった情報化に伴う問題点(デジタル万引き,電話番号占い,端末の紛失,なりすまし,ネットいじめ,フィッシング,ネット上の誹謗中傷)とその解決策について,休み時間や放課後の自主学習,家庭学習で調べ,自分の考えをもったうえで,同じ課題について考えてきた3人グループで話し合いを行った。そして,グループの考えをまとめた。表現する道具として,3人で1台の端末を活用して図表や言葉を使いながらまとめた。児童は,必要に応じてその場でネット検索をして考えを検討したり,友達の考えに質問をしたりしながらグループの考えを構築していた。みんなで一つの画面をのぞき込みながら,自由な雰囲気で活発なコミュニケーションが成立していると感じた。次に,発表ツールとして電子黒板を活用した。端末の画面を電子黒板に映しながら発表し,考えを学級全体で共有化した。友達の発表を聞いて初めて認識したこともあったようで,「ゲームや占いなど特に何も考えずに使っていたけれど,これからは個人情報に気をつける」「ネット上は,直接話をするのと違って一気に情報が広まってしまうので,とてもこわい。写真のアップロードは相手の許可を取ることと,人を傷つけるような言葉を書き込まないことを心がける」等の感想を述べていた。

グループの考えを端末にまとめる

グループの考えを端末にまとめる

グループの考えを全体で共有する

グループの考えを全体で共有する

6.おわりに

 知識基盤社会に生きるうえで役立つ思考力,表現力,コミュニケーション能力を育むためには,学習者主体の学びを授業の中に組み込んでいくことが重要であると考える。特に社会科は身近な社会問題を取り扱うことが多いので,みんなで知恵を出し合い,話し合いながら主体的に問題を解決していく学習形態が合っている。その中で,学習者がICTをツールとして使いこなすことに大きな可能性を感じている。公民的資質の基礎を養うために,有効な活用法を今後も探っていきたい。