小学校 社会
小学校 社会

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.単元名
開国と明治維新
2.目 標
黒船の来航,明治維新,文明開化などについて調べ,日本が廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めていったことを理解できるようにする。
3.評価基準
1.黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布などに関心をもち,それらを意欲的に調べることを通して,新しい日本の国づくりに関心を深めようとしている。【関心・意欲・態度】
2.廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことなどを,世の中の出来事や人物の働き,人々の暮らしなどを通して考え,表現している。【思考・判断・表現】
3.黒船の来航,明治維新,文明開化,大日本帝国憲法の発布などについて各種の基礎的資料を効果的に読み取ったりまとめたりすることができる。【観察・資料活用の技能】
4.廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことを理解している。【知識・理解】
4.本単元の指導にあたって
①児童の実態について
児童は,概ね歴史学習に興味をもち,授業以外でも歴史に関する資料を見たり,歴史上の人物の伝記等の図書資料を読んだりしている。授業においても,歴史的事象の起きた要因や社会に与えた影響に興味をもち,教科書や資料集等を効果的に活用して調べ活動を行う等,主体的に問題解決を図ろうとする態度が身に付きつつある。しかしながら,資料から何を見つけてよいか分からなかったり,語句の意味が分からないまま学習を進めてしまったりして,客観的事実を正確に捉えることができない児童も少なからずいる。また,複数の資料を見比べることが難しく,歴史的事象や歴史上の人物との関連を見いだしにくくなっている児童も多い。そのため,歴史的事象の起きた要因や社会に与えた影響を類推しにくくなることも見られる。表現力に関わっては,自分の考えをもつことは少しずつできるようになってきたが,調べた内容を根拠にして自分の考えを分かりやすく表現できる児童が少ない。友だちの考えと自分の考えを比べたり話し合いをしたりすることも苦手としている児童が多い。
②教材について
本単元は,学習指導要領第6学年2内容(1)キ「黒船の来航,明治維新,文明開化などについて調べ,廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い,欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かること。」に基づいて構成している。本単元で扱う時代は,江戸幕府が倒れたことにより,武士による政治が終わり,明治天皇を中心にした政治の仕組みがつくられた時代である。廃藩置県や四民平等などの諸改革を始めとして,様々な政治や社会の仕組みが整えられた。また,欧米から様々な文化が取り入れられたことにより,人々の生活が大きく変化した時代でもある。それらの諸改革や新しい国づくりに尽くした人物の業績や考え方,新しい文化などを調べることを通して,我が国は,天皇を中心とした諸改革を行い,欧米から文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かるようにすることがねらいである。
③指導について
本中単元では,調べたことをもとに自分の考えをもち,相手に分かりやすく表現したり伝えたりすることのできる児童を育てることを重視したい。具体的には,2枚の写真を比べたり変化の分かりやすい具体物を掲示したりすることにより,児童から気づきや疑問をより多く引き出し,学習問題を追及しようとする意欲を高めるようにする。また,教科書や資料集の中から必要な情報を探し,ノートやワークシートに考えを端的にまとめることができるように机間巡視しながら個に応じた支援をしていく。
本時の学習では,まず「つかむ」段階で文明開化によって食べ始めたアンパンや牛肉等の具体物を提示し,本時の学習への意欲につなげていく。「調べる」段階では,明治時代の日本橋周辺の絵図と江戸時代後期の絵図が載ったワークシートを配布し,グループで江戸時代と明治時代の変化や新しく始まったことを調べ,グループごとにノートや黒板に書かせ発表させていく。各班の発表が終わった後,班ごとに検証していく。その後,文明開化の「衣食住」などが整理された虫食いの年表を拡大したものを掲示し,虫食い部分をクイズ形式で考えさせることによって,より多くの技術や文化が発達したことに気づかせていく。「考える」段階では,調べたことをもとにして,「なぜ,明治政府は文明開化を急いだのか?」という学習問題を設定し,一人一人に追及させたい。その際,児童の考えが表出しやすいように,吹き出し式のワークシートを用意し,そこに自分なりの考えを書かせる。また,自分の考えをもちにくい児童については,既習事項を想起させることにより,自分なりの考えをもてるように支援していく。その後,意見交流・集団思考を行うことにより,「文明開化の目的は,欧米列強に追いつき,日本への進出を防ぐ」ことであったことに気づくことができるようにする。「ひろめる」段階では,文明開化で急速に発達した世の中での問題点を考えさせていきたい。そこで,本時の「考える」段階までを振り返り問題点を見つけて良いことばかりではないということを理解し,まとめを自分の言葉でノートに書かせたい。
5.単元の指導計画
時 |
学習のねらい |
子どもの活動と内容 |
評価規準の具体例 |
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1 |
世の中が大きく変わるきっかけになった黒船来航に関心をもち,鎖国を終わらせざるをえなかったことについて調べることができる。 |
・黒船が来航した時の様子について話し合う。 |
・黒船の来航について調べ,開国が日本に及ぼした影響について関心をもつことができたか。 |
2 |
勝海舟と江戸幕府の終わり |
・大政奉還の様子について話し合う。 |
・幕府が倒れるまでの動きについて調べ,鎌倉時代から続いた武士の時代が終わったことを理解できたか。 |
3 |
大久保利通と明治維新 |
・新政府の役人について話し合う。 |
・明治政府の取り組みについて調べ,天皇を中心とした新しい政治の仕組みを作ろうとしたことを理解できたか。 |
4 |
四民平等と解放令 |
・明治時代の身分別の人口の割合について話し合う。 |
・四民平等と解放令について調べ,新しい身分制度が確立したことを知るとともに,差別が根強く残った原因を考えることができたか。 |
5 |
富国強兵と人々のくらし |
・徴兵検査の様子について話し合う。 |
・明治政府の具体的政策について調べ,学制・徴兵令・地租改正などを行ったねらいを考えることができたか。 |
6 |
福沢諭吉について話し合う |
・福沢諭吉の業績について調べる。 |
・福沢諭吉の業績について調べ,諭吉の新しい世の中への願いに関心をもつことができたか。 |
7 |
幕末の江戸の様子と明治初期の東京の様子について話し合う。 |
・明治初期に欧米から取り入れられた文化や制度について調べる。 |
・欧米諸国から取り入れた文化や制度について調べ,文明開化が人々に与えた影響についてとらえることができたか。 |
6.本時の学習
①目 標
欧米の文化や技術,制度が取り入れられた文明開化について調べ,明治政府がそれらの導入を推し進めたわけについて考えることができるようにする。
②学習展開
学習活動・学習内容 |
指導上の留意点 |
資料等 |
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---|---|---|---|
つ |
○文明開化によって始まった新しい食文化のパンや牛肉の具体物を提示する |
○明治になってどのような制度や文化が生まれたのか関心をもつことができるようにする。 |
・アンパンや牛肉などの具体物 |
江戸時代と明治時代の人々のくらしの違いについて調べよう。 |
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調 |
○明治時代初期に欧米から取り入れられた文化や制度について調べる。 |
○明治初期の日本橋の様子と江戸時代の様子を表した資料を配布し,江戸時代の人々の様子と違うところを読み取ることを通して,新しい文化や技術,制度が多種多様であったことをとらえられるようにする。 |
・ワークシート①(比較絵図:省略) |
考 |
○10数年の期間に新しい文化や制度,技術を取り入れていったわけを考える。 |
・ワークシート②(大久保利通の吹き出し) |
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(期待する児童の考え) |
・外国よりも遅れてしまっていることに気づいて,早く追いつかなければとあせっていたのではないかな。 |
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○調べた内容をもとに,わずかな期間でたくさんの欧米の制度や技術,生活様式などを取り入れたことから,欧米諸国に早く追いつこうとした政府のねらいをとらえるようにする。 |
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ひ |
○文明開化が人々の生活に与えた問題について話し合う。 |
○欧米諸国の文化が積極的に取り入れられたのは一部の都市のみで,農村部などにはなかなか広まらなかったことや,古いものに対する軽視があったことを補説する。 |
文明開化年表

ワークシート②
