小学校 総合

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自然の変化に敏感に気付く防災教育(第3学年)
2014.01.20
小学校 総合 <No.002>
自然の変化に敏感に気付く防災教育(第3学年)
新潟県三条市立保内小学校教諭 古田純

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

防災教育って,なんでしょうか?

「避難訓練のことでしょ?」
「9月1日に地域で行う防災訓練のことだよ。」
「災害から逃げ方を訓練する教育のことでしょ。」
「じゃあ,避難訓練以外に何をすればいいの?」
「安全指導と違うの?」
「不審者対応訓練と防災教育は関係ないでしょ。」

 私は,すべてノーと考えます。(もちろん,立場によってすべて正解です。)防災教育は,安全教育と本質を同じにしており,「自分の命を守る教育」であると考えます。

防災教育でめざすべき姿はなんでしょうか?

 ごく簡単に言えば,「自然や環境の変化に敏感に気付き,どう行動したらよいかを知っていて判断でき,実際に自分の命を守る行動ができること。」さらに,「他人の命を助けることもできること。」と考えました。

 これって,もともと教育でめざしている姿を多く含んでいると思いませんか。そうなんです。防災教育の本質は,普段の教育で取り上げていることを有意味的に関連させ,命を守る知識や方法として教え,理解させることです。その上で,逃げ方を確実に身に付けるために,避難訓練等として特別に行うことです。

では,どうやって教えればいいのですか?

 私の所属校は,水害に遭いやすい地域のため,洪水を取り上げました。担任している3年生の子どもが理解できるよう,次のようなポイントで実施しました。
1)防災教育プログラムで知識を系統的に教える。
2)普段の学校生活の中で,気付きを促す学習を行う。
3)社会科の校外学習で現場を観察する。
4)学習参観で,保護者の前で防災の学習をする。

 ~それでは,1)と2)について,実践を紹介します。

1)新潟県防災教育プログラムの実施
 新潟県では,防災教育プログラムが作成されています。小学校1年から中学校3年の子どもたちにプログラムを実施することで,どこにいても,どの災害からも,自分の命を守れる知識と判断力を付けることが目的です。(※注1)
 公開授業で実施した3年生の洪水に関する学習プログラムの概要と資料を示します。

【表1】授業の概要
◆ねらい 「雨の降り方や洪水について知る」~洪水災害に関する現象についての理解を深める。

学習活動

提示資料・留意点

1.大雨時の身を守る方法について,復習する。
高いところにいる
流れる水には近付かない
情報に注意する

・前時の学習内容の復習として,具体的な避難方法を提示する。

2.雨の日が多いのは何月か考え,雨の降り方の特徴を知る。
・梅雨 ・台風の時期

・洪水の時期を考えるため,新潟県の月別雨量のグラフを提示する。

3.街が洪水になる訳を考える。
・小川や側溝が溢れる。
・土地の低いところに水がたまる。
・大きな川が溢れる。
・上流の大雨で,大きな川が溢れることがある。

・所属校が遭遇した道路の流水動画を視聴する。
・五十嵐川決壊時の動画を視聴する。(三条市消防署作成DVD)
・山で大雨が降ると下流で洪水が起こる動画を視聴する。
・溢れる原理や現象について児童にわかりやすい言葉で表す。
・災害の複合性について,雷,たまり水,突風のニュース映像等を提示する。

4.大雨の際,洪水の他に起こる現象を考える。
・停電 ・落雷 ・渋滞

5.学習してわかったことをワークシートに記入し,確認する。


※新潟県防災教育プログラム洪水編(試行版)A-3中学年(1/2)の概要に使用した資料を加えたもの

【図1】平成23年夏 所属校前を水が流れる様子

【図2】防災学習(洪水)の板書

 「できるだけリアルな資料を用意し,子どもたちが生活感覚としてイメージしやすいようにする」,「知識が混在しないように,掲示物を工夫して提示し,視覚に訴えながら知識や判断基準が整然と理解できるようにする」とよいことがわかりました。課題は,学習がすべて頭の中での思考や理解の範囲にとどまっているということです。学んだことが生きてはたらく場を用意しなければなりません。そこで次に,自分で情報収集し,判断・実行し,うまくいったかどうか評価する活動を実施しました。

2)自然についての気付きを促す取り組み~「かさ当て名人の取り組み」の実施
 「学んだことを実生活で活用すること」,「自己決定・自己判断・自己評価をさせること」をねらうため,かさ当て名人の取り組みを行いました。

【「かさ当て名人になろう」のやり方】
 天気予報を見る,家の人に聞くなど,自分で情報収集し,登校時に傘を持ってくるかどうかを決めます。下校時に,傘のあるなしにかかわらず,天気と自分の朝の判断が合っていれば○とします。指導時間は,登校後と下校前の短学活の時間です。担任は記録カードを用意し,天気の話題をしながら,「きのうのかさ当てゲームは当たった?カードに記録しましょう。」と指示します。

【図3】かさ当て名人の取り組みに用いたカード

 その結果,こんな姿が現れました。
・子どもの言葉から…
 ―「天気予報を見て,かさを持たないって自分で決めたんだ。」
 ―「雨が降るけど,塾でお迎えが来るから,かさはいらないんだ。」
 ―「雨が強そうだから,長靴を履いてきた。」
・実践後,3年生は,傘の持ち帰り忘れが激減した。
・朝の短学活で,災害ニュースや自然現象の話題が,子どもからよく出されるようになった。
・突風,強い雨,虹などが発生すると,授業中でもみんなで注目するようになった。

 私の実践:「防災教育=自然の変化に対して敏感に反応して行動決定する子どもの育成」
 こんな考え方はいかがですか?現在,地域に残る伝説から,災害について考えさせる方法はないか探索中です。みなさんのご意見を聞かせてもらえると嬉しいです。

 

※問い合わせ先:古田純 
E-mail:togeso8313@hotmail.co.jp
※注1:財団法人新潟県中越大震災復興基金「新潟県防災教育プログラム洪水編(試行版)」(協力 新潟県教育委員会 新潟県防災局)平成25年2月