小学校 総合

小学校 総合

「おやつだ~いすき!」(第3学年)
2014.06.10
小学校 総合 <No.003>
「おやつだ~いすき!」(第3学年)
東京都 小学校教諭

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。

1.単元名/時数・実施時期

「おやつだ~いすき!」/全18時間 9月~12月

2.単元設定の理由

 4月19日(金)に遠足で府中市郷土の森に行った。持ち物にある「おやつ」を子どもたちは楽しみにしており,多くの児童がたくさんのお菓子を持参していた。学校行事ということで,より自分好みのおやつを持ってきていた。中には,大好きな甘いお菓子に偏って持ってきている児童もいた。
 そこで,この遠足をきっかけとして,自分たちにとって身近な「おやつ」について取り上げることとした。食に関することであるので,児童が興味・関心をもち課題を設定することができると考えた。また,本学級には学童に通っている児童が多くいる。学童では「ヨーグルト」や「するめ」など,栄養を考慮したおやつが提供されているので,情報収集の際にはよい情報源となり,より探究的な学習になると考え,本単元を設定した。
 本単元では,よりよいおやつを「心も体も元気になるおやつ」ととらえ,今と昔のおやつを比較しながら,「心の元気」と「体の元気」の要素がたくさん詰まったおやつを手づくりする。日常のおやつを食べる生活の中で「体の元気」まで意識している児童はほとんどいない。「好きなお菓子」をおやつとしている児童がほとんどである。給食も好き嫌いがある児童も,自分の好きなことが食べられるおやつの時間を楽しみにしているようだ。この単元を通し,おやつは「心の元気」だけでなく「体の元気」も意識することが大切であることを知り,実際に,自分たちが考えた「心も体も元気になるおやつ」をつくる活動を通して,生き生きと健康な生活について考えさせていきたい。
 また,本単元は,総合的な学習の時間の初めの学習である。自分にとって身近なおやつについて,「課題設定」から「まとめ・表現」までの一連の探究学習の流れを体験的に楽しく学ぶことで,探究活動が楽しく進められるようにしていきたい。

3.単元の目標

 さまざまなおやつについて調べることを通して,心や体によいおやつについて考える。実際に,心や体によいおやつをつくることを通して,自分の生活に生かしていこうとする。

4.単元の評価規準

評価の視点

本単元で育てたい力

○評価規準 ・具体的な子どもの姿

学習方法に関すること

・課題を見つける力
・情報を集める力
・情報を整理する力
・まとめる力

○「心と体によいおやつ」を見付けるために必要な情報を収集し,それらの情報を整理していく過程で,自分の考えを見付け,表現している。
・遠足に持っていったおやつや,普段食べているおやつから,おやつに対する自分なりの課題を見付けている。
・自分の身近な人から,おやつについての情報を集めている。
・集めた情報を,視点に基づいて整理・分析している。
・自分たちの考えをレシピ集にまとめている。

他者や社会に関すること

・コミュニケーション力
・協同的に学習を進める力

○自分の身近な人や,おやつを提供している人と関わりをもったり,グループの友だちと協同的に話し合いを進めたりしている。
・家族との会話を通して,それぞれの時代のおやつについて調べている。
・おやつを提供している保育園の人たちから,心と体のことを考えたおやつについて聞いている。
・自分たちのおやつづくりのために,グループで協同的にメニューを考えている。

自分自身に関すること

・自分自身について考える力

○調べたことを,これからの生活に生かしたり,自分の食について考えたりすることができる。
・今後生活の中で食べるおやつについて考えている。

5-1.学習過程ごとの主な学習活動

学習過程

主な学習活動

課題設定

おやつっていったいなんだろう?[3時間]
・遠足のおやつに持っていったおやつについて振り返る。
・普段よく食べるおやつを振り返り,自分にとっておやつがどのようなものなのかグループで話し合う。
・栄養士さんをゲストティーチャーとして招き,おやつの役割について知る。

情報収集

心にも体にもいいおやつを探そう①
~どんなおやつがあるのだろう~[3時間]

・1週間のおやつ記録を持ち寄り,自分たちのおやつについての情報を集める。
・自分の家族(親世代・祖父母世代)が子どものころ食べていたおやつの情報を集める。
・集めてきた情報を「手づくり」「買ったもの」に分類する。

心にも体にもいいおやつを探そう②
~手づくりのおやつってどんなものがある?~[4時間]

・手づくりのおやつを提供していそうなところを考え,どんな情報を得たらいいか話し合う。
・インタビューの基本について知る。
・保育園の栄養士さん,学童の先生にインタビューをする。
・インタビューの結果を報告し合う。

整理・分析

集めてきた情報から心も体も元気になるおやつを見付けて,実際につくってみよう[6時間]
・自分たちがつくって食べてみたいおやつのメニューを決める。
・自分たちがつくって食べてみたいおやつのレシピを持ち寄り,どのレシピを採用するか話し合う。
・つくる計画を立てる。
・「おやつ先生」を招いて,自分たちが考えてきたことについてのアドバイスをもらう。
・実際におやつづくりをし,食べてみる。

まとめ・表現

これからのおやつとの関わり方[2時間]
・活動を振り返る作文を書く。

5-2.授業の実際

【課題設定】
心と体にいいおやつって,どんなものなのだろうか。

○「おやつ」にどんな役割があるのか知る。
 4月の遠足に行く前に,おやつカードを配布して,遠足に持っていくおやつを記入した。遠足から戻った日の宿題として,持っていったおやつについて,「全部食べた」「半分ぐらい食べた」「全く食べなかった」という振り返りをした。また,全部食べられなかったおやつについては,「どうして全部食べられなかったのか」という理由をカードに記入させた。 食べられなかった理由の多くは,「おなかがいっぱいだった」「持っていきすぎた」というものであった。
 そこで,「そもそもおやつとは何なの?」という根本的な問いを,学校栄養士にすることにした。栄養士は,カルビーの食育教材を活用しながら,おやつの役割について話をした。おやつは,「心の元気と体の元気」につながることや,「補食」の役割があることを学習した。
 遠足のおやつを振り返ることと,栄養士の話を聞いたことから,心と体にはどんなおやつがいいのか興味をもち始めた。

【情報収集】
心と体にいいおやつを探すために情報を集めよう

○家族から情報を収集する
 「お父さん・お母さん」「おじいちゃん・おばあちゃん」は身近で話を聞きやすいという児童の意見から,まずは家族を対象に情報を集めることとした。「子どものころ,どんなおやつを食べていましたか?」という質問をし,ワークシートに記入した。
 また事前指導として「集めた情報はあとで整理整頓するよ」と,情報の整理・分析段階を示唆し,学習の見通しを指導した。
 情報を集める途中で,「買ったおやつ」と「手づくりのおやつ」があることに気付いていったので,情報を集めながら両者を分類することにした。集まってきた情報を年代別にカード化し,「買ったおやつ」と「手づくりのおやつ」に分類しながら整理してみると,ある傾向が見えてきた。
 年代が上がっていくに連れて,「手づくりのおやつ」が増えていっているということであった。児童たちの中には,「手づくりのおやつの方が体によさそうだ」という感覚があり,「手づくりおやつを提供しているところ」にインタビューをしてみたいと動き出した。
 どこに行くか検討する話合いをしたところ「保育園のときにおやつが出ていたから,もしかするといい情報が得られるかも」「学童でおやつ出るよ」という意見が出てきたので,学区内の保育園にインタビューをしにいくこととなった。
 本単元は総合的な学習の時間の初めての単元ということを鑑み,ここで,インタビューの仕方について指導する時間を設けた。

○保育園の栄養士さんから情報を得る
 保育園でのインタビューの内容は,以下のようなものである。

  1. 保育園では,どんなおやつを出していますか?
  2. それは,買っていますか? それとも手づくりですか?
  3. 人気のあるおやつは何ですか?
  4. おやつのことで気を付けていることはありますか?
  5. アレルギーの人にはどうしていますか?

 2の質問については,「うちの保育園ではすべて手づくりです」という回答をもらい,子供たちからは「やっぱり手づくりって体にいいのか」という声が上がっていた。「手づくり」という観点だけではなく,4・5の質問からも,保育園の栄養士さんが,いかに体のことを考慮したおやつを提供しているのか,知ることができた。
 平行して,学童でも同じ質問で,インタビューを行った。学童では,保育園とは違い,手づくりのおやつはないようだった。しかし,共通点として,ただ子どもたちの好きなものを提供するだけではなく,みんなが好きなもので体の栄養にもなるものという部分は共通していた。
 集めてきた情報は,報告会を開いて,クラスで共有した。
 ここまでの活動で,おやつは「心の栄養」と「体の栄養」になることが大切であることや,手づくりおやつにはどのようなものがあるのか,ということが分かってきた。

○自分たちがつくるおやつを決める

【整理・分析】
心と体にいいおやつをつくる! そこでグループで何をつくるか決めよう!

 活動の最中にも,「おなかすいた~」とか「食べた~い」という声が上がっていた。また,その中には,「つくったことないから,つくって食べてみたい」という意見が多く上がってきた。そこで,校長先生に許可をいただき,つくる計画を立てていくことにした。
 たくさんの情報が集まったので,いざつくるとなると,その中から1つに絞らなければならない。子どもたちの次の課題は,「つくるおやつを決める」ということになった。
 たくさんの情報の中から1つに絞っていく話し合いの過程が目で見て分かるように,「ピラミッド型」の思考ツールを活用した。
 思考ツールを使うことが初めてなので,中段にはランチョンマット,上段にはトレーを用いて,イメージしやすいようにした。
 グループでの話し合いは,「1人1人がつくって食べてみたいおやつ」を4~5種類中段に上げ,最上段は,その中から「みんなが好きで食べたいもの」を選んでいた。
 あるグループでは,2つのものを融合させた折衷案を考え,「フレンチりんごトースト」という新しいメニューを生み出していた。
 メニューが決まると,それぞれでレシピを持ち寄り,どれだったら自分たちでもできるか話し合いをした。自分たちの算数の知識を振り絞り1人分の分量を考えたり,必要な道具を考えたりした。それを画用紙にまとめた。

○おやつ先生にアドバイスをもらう
 おやつづくりの経験がない中で考えているので,誰かに聞いてみたいということを子どもたちが言い始めた。そこで,いつも料理をしてくれているお母さん(保護者)を「おやつ先生」として教室に招くことにした。

 おやつ先生に自分たちが考えてきたことを発表し,アドバイスをもらった。アドバイスの中には,使う道具のことや分量のこと,手順のことなどがあった。
 この時間に新しく知って,計画を修正したことは,黄色の画用紙に箇条書きにまとめた。

《授業後の児童の感想》
○おやつ先生にアドバイスをもらったことで,自信がもてました。
○人に聞くことは大切だと思いました。
○おやつ先生が道具の安全な使い方を教えてくれたので,心配なことが減りました。

《おやつ先生の感想》
○一生懸命になって考えている子どもたちにアドバイスするために,私もいろいろと考えました。自分たちで考えて,分からないことを解決していったり,知りたいと思ったりすることが大切だということを感じました。とても楽しかったです。

○おやつづくり実践
 実践の時間もおやつ先生をお招きし,教えてもらいながらおやつづくりをした。
 つくるおやつは,「心にも体にもいいおやつ」ということが前提となっているので,食べているときには,「おいしい!」とか,「これなら元気に大きくなりそうだ!」という声が上がってきた。
 一方で,量が多く「これでは夕食が食べられそうにないな」という声や,「野菜ばかりでおやつのような気がしないね」という声も上がった。

《児童の感想》
 普段,おやつのことは何も考えていませんでした。でも,総合の勉強をする中で,栄養のことと笑顔のことが大切なのだと知りました。おやつづくりは,そんなことを考えてやりました。つくって食べるおやつもすごくいいです。つくるときは,おやつ先生がやけどをしない方法を教えてくれました。
 今度はフレンチトーストをつくってみたいです。おうちでつくって,お母さんや兄弟に食べてもらいたいです。

6.成果と課題

《児童にとっての成果と課題》
 本単元は,3年生にとってはじめての「総合的な学習の時間」であった。したがって,子どもたちにとって学習の見通しがもちやすく,楽しく探究活動が進められるように,単元構成を考えた。
 情報収集の段階では,たくさんの人とかかわりをもつことができた。入門期であることを鑑み,インタビューの仕方を指導する時間を設けたことで,自信をもって取り組むことができた。
 整理・分析の段階では,付箋を用いた。色を分けたり,貼るところを工夫したりすることで,たくさんの情報を,見やすく整理することのよさに気付くことができた。今回の経験をきっかけに,情報を整理するための手段や方法を増やしていけるようにしたい。
 おやつをつくる活動を取り入れたことで,学習に対する意欲を持続させることができた。自分たちの計画に自分たちで取り組んでいくことが楽しいということを体感できた。

《教師側からみた成果と課題》
 本単元では,思考ツールを用いて整理分析をした。本単元において,ピラミッド型の思考ツールでは整理する視点が不明瞭で,各班の好みによってつくるおやつが決定していった。楽しく活動を進めるために機能したとは思うが,栄養素に着目したり,つくる相手を決めたりすることで,より視点を明確にして,思考ツールを使えたと考えられる。
 ゲストティーチャーとして保護者をお招きしたことは,児童・保護者にとってよい経験となった。人と関わりながら探究を進められ,安全面にもより配慮が行き届くことから,今後とも保護者との関わりは大切にしていきたい。