小学校 生活
小学校 生活

※本実践は平成20年度版学習指導要領に基づく実践です。
1.単元名/時数・実施時期
「がっこうだいすき ともだちだいすき」/全18時間 4月~6月

2.学校を取り巻く環境
本校は,40年ほど前に山の一部を開発してできた住宅地である。開校当時は,1000人ほどの児童がいたが,現在では,350人ほどとなっている。学校は,山の頂上近くにあり自然に恵まれ,天気のよい日には,校舎の4階から遠く横浜ベイブリッジや東京スカイツリーを見ることができる。校区には,幼稚園1園,小学校1校,中学校1校がある。住宅地の中の一角には商店が少しあり,自然を生かした公園が多く,四季の変化を感じることができる。地域では,見守り隊の方が多くいて,登校時や下校時となると横断歩道などに立って子どもたちの安全を配慮してくれている。
校庭が広く,校舎は,渡り廊下でつながっている。そして,廊下がとても長い。また新々校舎の1階には,デイサービスの施設が入っている。
入学当初は,級外の先生方や介助員さんのお手伝いが大いに助かった。そのため,子どもたちにとっては,多くの先生方と接していたことになる。また,入学式では,6年生が名札を付け会場の席まで案内してくれ,入学式の翌日からは,クラスに来て朝の準備のお手伝いや紙芝居を読んでくれたり,ゲームを教えてくれたりしていた。1年生にとってたくさんの人とかかわることができたため,すぐになじむことができたように思える。子どもたちは,とても元気がよく,休み時間ともなると外のアスレチックで遊ぶことが多い。廊下は,静かに歩くように始めに話をしたが,トイレ水飲み休憩となると廊下を走り出す子が多かった。一週間もしないうちに階段を駆け下り,角のところでけがをした子が出た。それからは,お互いに声をかけながら歩くようになった。しかし,日が経つにつれ,忘れかけているように感じた。そのため,たびたびこちらから声をかけた。だんだんと学校に慣れ,いつのまにか校舎の中を探検し始め,「がいこつをみた。」「どこにあるの?」「あとで行ってみよう。」と言う児童の言葉から,学校探検が始まった。
○単元について
「がっこうだいすき ともだちだいすき」の単元は,入学当初のスタートカリキュラムが含まれる。ここでは,児童が学校の施設を利用したり,先生や友だち,学校生活を支えている人々とのかかわりを深めたりしながら,学校生活を豊かに広げ,楽しく安心して遊びや生活ができるようにすることをめざしている。
学校生活では,学校の施設の様子や人々のことがわかるだけではなく,楽しく安心して安全に遊びや生活ができるようにすることが大切である。なお,学校の施設や人々とかかわる活動を行う際,学校の公共性に目を向けるよう配慮する必要がある。学校の施設は,みんなのものであること,学校にはみんなで気持ちよく生活するためのきまりやマナーがあることなどに気付いたり,学校生活のリズムを身に付けたりすることなどが大切である。
安全については,自然災害,交通災害,人的災害の三つの災害に対する安全確保に配慮することが大切である。これを踏まえ,以下についての安全が考えられる。
*交通安全・・・歩行,自転車での通行などで,交通ルールを守って事故にあわないようにする。
*災害安全・・・火災,地震,風・水害などから身を守るようにする。
*生活安全・・・日常生活で,転倒,衝突,落下など,けがをしないような行動をする。
*防犯安全・・・誘拐,痴漢,盗撮などの犯罪から身を守るようにする。
今回は,この中のうちの学校探検のまとめの1つとして,「生活安全」に着目した。「楽しく安心して遊びや生活ができるようにする」の中の「安心」には,「安全」という意味も含まれると考えた。学校の中で出会った人々の中で,用務員さんから,児童へのメッセージをいただくことにした。用務員さんの仕事の中で防護柵の修繕やアスレチック・校舎内での木のささくれなどによる事故やけがの予防について話してもらった。学校の中にはみんなの安全について見守ってくれる人がいることや安全に関するものが学校の中にはたくさんあることに気付くとともに,自分たちも学校の中での安全について考え,自分でできることをしていこうとする態度が身に付くようにしたい。

学校探検を行ったときには,「みつけカード」を書くようにし,その「みつけカード」をもとに友だちと交流した。1年生のこの時期,一人ひとり全員の前で話をしていくと,全員の話を聞き終わる前に飽きてしまうということと,まだ全員の前で話をするのが苦手な児童もいるので,少ない人数での交流がよいと考える。そこで,二人組で話すこととした。何度か交流をしていくうちに,だんだんと慣れてくるように思う。
学校探検を行っていくにつれ,初めは施設に目がいくが,何度か探検していくうちに人へと目がいく子が出てくる。施設だけでなく人との交流もしてほしいと思うので,人に目がいった児童をみんなに紹介すると,次の探検では人と交流する児童が増えていく。そこで,「みつけカード」のほかに,「さいんカード」も用意することでたくさんの人との交流ができると考える。
3.単元目標
○学校の探検や生活を通して,施設を利用できるようになったり,学校の人々とのかかわりを深めたりしながら,安心して安全に学校生活を送ることをできるようにする。
〈内容(1)〉
評価規準
生活への関心・意欲・態度 |
活動や体験についての |
身近な環境や |
---|---|---|
ア.学校生活へ関心をもち,人やものとかかわろうとしている。 イ.学校のことを知り,安心して安全に学校生活を送ろうとしている。 |
ウ.自分の行ってみたいところややってみたいことを見つけている。 エ.探検活動や日常生活を通して,楽しいことや気付いたことなどを目的に応じて自分なりの方法で表現したり,伝えたりしている。 オ.施設の利用の仕方や友だちとのかかわり方,マナーについて考えている。 |
カ.施設の位置や特徴,役割,学校を支えている人々の存在や働きなどがわかっている。 キ.みんなで施設を利用する楽しさやよさに気付いている。 ク.学校にある施設はみんなで気持ちよく生活するためのきまりやマナーがあることに気付いている。 |
4.事前準備
●職員間の意思の疎通
本単元は,小学校生活のスタートの大事な時期に行うため,学校全体で児童を見ていくという観点から,全ての職員に学校探検をする際大切なことを伝えておく。
○学校探検について
・探検をする際の約束を児童と一緒に決める。
(廊下は静かに歩く・大きな声を出さない・部屋に入るときは,挨拶をする・置いてあるものには触らない など)
・前もって,学校探検をやる日を職員に伝えておく。
・授業中探検を行うため他のクラスの授業の妨げにならないよう,児童には静かに行動することを話し,職員には気になるときは,その場で注意をしてもらうよう伝える。
・部屋に入る際は,あいさつをするよう児童に指導し,職員には児童ができていない場合はその場でやり直すよう声をかけてもらう。
・給食室を見せてもらうときの注意を,あらかじめ給食調理員や学校栄養職員に聞いておく。
○ゲストティーチャー
・事務の先生や用務員さんなどに仕事の話をしてもらうよう伝えておく。
●学習環境の設定
・どの教室や部屋へも行けるようにする。鍵がかかっている場合はそのままにしておく。後で,疑問をもったときに一緒に行くようにする。
5-1.単元の流れ
◇がっこうだいすき ともだちだいすき【18h】
1.がっこうは たのしいよ(1h)
○幼稚園や保育所と異なるところを見つける。
2.なかよく なろうね(3h)
○あいさつをしたり,自己紹介をしたり名刺交換などをする。
○2組の児童とも名刺交換を行う。
3.みんなで あそぼう(1h)
○校庭の遊具の使い方やルールについて学習し,みんなと遊具で遊ぶ。鬼遊びやドンジャンケンを行う。
4.どこへ いこうかな だれに あえるかな(2h)
○校舎の中を探検し,どんな部屋があるか見たり,先生や主事などの学校で働く人と話したりする。
5.みつけたよ きいたよ1(7h)
○グループで校舎の中を探検し,どんな部屋があるか見たり,先生や主事などの学校で働く人と話したりする。
○2~4人のグループで探検する。
○探検から帰ってきたら,3~4人に発表をしてもらう。
○ペアで2~3分間で見つけたことを話したり,聞いたりして「おはなしこうかん」(情報交換)をする。
○探検と情報交換を何度か繰り返す。
○多くの子が出会った人に教室に来てもらい,仕事の内容などを聞く。
○学校の中にある安全に関係しているものを見つける。
○安全に学校生活を送ることができるようにするためには,どうしたらよいか考える。
○学校のきまりやマナーを聞く。
6.みつけたよ きいたよ2(2h)
○校舎の外を探検する。
7.みてきたことを つたえよう(2h)
○学校たんけんで体験したことや発見したことを伝え合う。
5-2.単元での主な学習活動
小単元の目標 |
○主な学習活動・□子どもの反応・ |
主な評価規準 |
---|---|---|
◇がっこうだいすき ともだちだいすき【18h】 ○がっこうは たのしいよ(1h) |
○幼稚園や保育所と異なるところを見つける。 □学校は大きい。 *自由に発言させるようにする。 |
ア.学校生活へ関心をもち,人やものとかかわろうとしている。 |
○なかよく なろうね(3h) |
○あいさつをしたり,自己紹介をしたり名刺交換などをする。 □お友だちを増やしたい。 *自己紹介がなかなか言えない子には,教師がそばで一緒に言葉を添える。 |
ア.学校生活へ関心をもち,人やものとかかわろうとしている。 エ.日常生活を通して,楽しいことや気付いたことなどを目的に応じて自分なりの方法で表現したり,伝えたりしている。 |
○みんなで あそぼう(1h) |
○校庭の遊具の使い方やルールについて学習し,みんなで遊具で遊ぶ。鬼遊びやドンジャンケンを行う。 □これ,おもしろい。 *学校生活の滑らかな適応を図るため,幼稚園や保育所で経験したことのある活動をする。 |
キ.みんなで施設を利用する楽しさやよさに気付いている。 |
○どこへ いこうかな だれに あえるかな(2h) |
○校舎の中を探検し,どんな部屋があるか見たり,先生や主事などの学校で働く人と話したりする。 □この廊下の先は何だろう。 *学校探検の1回目は,クラス全員で1時間を使い,校舎全部を回った。 □もう終わり? *児童の,「もう,おわり?」「もっと見たい」という気持ちから,また学校探検をすることにした。 ○探検の約束やグループを決める。 *2回目からは,自分で行きたいところに行きたいというので,『約束』をみんなで決め,それから探検に行くことにした。 |
ア.学校生活へ関心をもち,人やものとかかわろうとしている。【関・意・態】 |
○みつけたよ きいたよ1(7h) 学校探検に繰り返し行く中で,もっと行ってみたいところややってみたいことを見つけることができるようにする。 探検を通して見つけたことや気付いたことを表現することができるようにする。 |
○学校探検に行く前に,みんなで決めた約束の確認をいつも行う。 *3~4人のグループで探検する。 ○探検から帰ってきたら,3~4人に発表をしてもらう。 *探検と情報交換を何度か繰り返す。 □調理員さんとお話したよ。 *何度か交流をしていくうちに,初めは施設だけに目がいっていた児童も人へと目を向けるようになり,「さいんカード」をもって行くようになった。 |
ウ.自分の行ってみたいところややってみたいことを見つけている。 エ.探検活動や日常生活を通して,楽しいことや気付いたことなどを目的に応じて自分なりの方法で表現したり,伝えたりしている。 カ.施設の位置や特徴,役割,学校を支えている人々の存在や働きなどがわかっている。 |
○学校探検で出会った人に教室に来てもらい,仕事の内容などを話してもらう。 □どんなお仕事をしているのですか。 *探検中の発言やみつけカードをもとに子どもたちから名前の出ている人に教室に来てもらい,話をしてもらう。 |
ア.学校生活へ関心をもち,人やものとかかわろうとしている。 |
|
○ゲストティーチャーの用務員の話から,安全について考える。 □窓の柵を直してくれたよ。 *2回目は,用務員に来てもらった。 ○学校の中にある安全に関係しているものを見つける。 |
イ.学校のことを知り,安心して安全に学校生活を送ろうとしている。 |
|
○みつけたよ きいたよ2(2h) |
○校舎の外を探検する。 □クリーム(鶏)ちゃんがいた。 *休み時間に鶏の世話をしている上級生に会い,鶏を触らせてもらう。 □草を刈っている人がいた。 *探検してきたら,「みつけカード」に記録をさせ,情報交換のときに役立てる。 |
カ.施設の位置や特徴,役割,学校を支えている人々の存在やはたらきなどがわかっている。 |
○みてきたことを つたえよう(2h) |
○学校探検で体験したことや発見したことを話し合う。 □図書室に本がたくさんあります。 *学校探検で見つけたことや感じたことを友だちや家の人に話すために,カードなどを用意しておく。 ○学年で発表会を行う。 *隣のクラスと見てきたことを発表し合う。少人数(4人×2)の中で一人一つずつ時間内で繰り返し発表していく。時間になったら,グループを交代していく。 |
エ.探検活動や日常生活を通して,楽しいことや気付いたことなどを目的に応じて自分なりの方法で表現したり,伝えたりしている。 オ.施設の利用の仕方や友だちとのかかわり方,マナーについて考えている。 ク.学校にある施設はみんなで気持ちよく生活するためのきまりやマナーがあることに気付いている。 |
6.評価について
●探検カード
探検に行ったときに児童がカードをかく。この時期はまだ字が書けない児童が多いので,絵からどこへ行ったか,何に関心をもったかを読み解く。
●職員からの情報
探検をしたときの様子を職員から聞くことで,児童の様子がわかる。
●教師自身のカード
児童名簿に,そのとき気付いたことをメモしておく(探検中・探検後)。
児童の探検カードや児童の話から,探検した場所や関心をもったことやもの,人をメモしておく。
7.教師の手立て
●児童のつぶやきをひろう
自分が思ったことを何でも話せる学級づくりが大切である。その中から,児童の「たんけんしてみたいな」「みてみたいな」「さわってみたいな」などのつぶやきから,できる範囲でやらせてあげることで次への意欲へとつながる。また,一緒に驚いてあげたり,喜んであげたりするなど共感することで児童は安心感をもつ。
●安全について
学校探検のまとめの1つとして,「生活安全」に着目し,安全についての学習を1時間設ける。
○避難訓練
○ゲストティーチャー
○学校生活の振り返り
○安全に関するものの探検
避難訓練を実施した後の学習だったため,自分たちの安全について考える際,避難訓練のことも出てきた。また,学校探検で見つけてきた中に廊下の真ん中にある点線については,右側通行できちんと歩くことを再度認識した。
「楽しく安心して遊びや生活ができるようにする」の中の「安心」には,「安全」という意味も含まれると考え,ゲストティーチャーとして用務員に,窓の防護柵の修繕やアスレチック・校舎内での木のささくれなどによる事故やけがの予防について話してもらった。
鍵のかかった部屋の一つに防災備蓄倉庫があり,中をみんなで探検し,校庭の探検では,防災倉庫も見ることができた。職員室で監視カメラを見つけた児童がいたので,みんなで確認し,学校の中には,非常口や消火器,防火シャッター,消火栓などがあることにも気付くことができた。
●探検カードの活用
この時期,まだ字が書けない子も多いので,探検から帰ってきたときに,カードの端に「おんがくしつ」「ほけんしつ」「かていかしつ」など教師が書いてあげると,後でカードを読み解く手立てとなる。
●活動を繰り返す
○何度も探検に行く
○「おはなしこうかん」(情報交換)
探検から帰ってきたとき,初めて行った場所や発見したこと・もの・人について2~3人に発表してもらい,新たに行ってみたい場所や見てみたいもの,会ってみたい人への関心を高める。
探検へ行く前に3分ほど,隣の子と学校探検で見つけたことや出会った人などについて「おはなしこうかん」(情報交換)をすることで,次に行ってみたいところや会ってみたい人への関心を高める。
●鍵のかかった部屋
始めから鍵を開けておかないことにより,なぜ鍵がかかっているのか,中はどのようになっているのかと考えるきっかけとなる(コンピューター室,防災備蓄倉庫など)。
●置いてある物に触らない
理科室や家庭科室には,危険なものもあるため,グループで自由に探検をしていると目がいき届かないので,置いてあるものには触らないという約束を決めた。
音楽室には,楽器がたくさんある。触ってみたいが触ってはいけないという約束から,「こんど,がっきをならしてみたいな」という言葉が出てくる。その言葉を拾い,みんなで音楽室へ行き,みんなで使うものだから大切に使うことを約束してから使うようにさせることで,楽器の使い方を学習することができる。