学び!とESD

学び!とESD

アフリカの砂漠でサスティナブルライフ:地球にやさしいESD
2020.02.17
学び!とESD <Vol.02>
アフリカの砂漠でサスティナブルライフ:地球にやさしいESD
木戸 啓絵(永田研究室研究生、岐阜聖徳学園大学短期大学部専任講師)

NaDEETの外観 アフリカ南部のナミビアにある砂漠の環境教育施設であるNaDEET(Namib Desert Environmental Education Trustナミブ砂漠環境教育基金)は、2018年にユネスコ/日本ESD賞を受賞した団体です。2002年にNPOとしてスタートし、2003年より環境教育施設としてナミビア国内の小中学生、教員、地域住民などを対象に環境教育の学びの場を提供しています。活動は、国内のみならず、海外の大学ともつながりながら、持続可能な社会の構築について実践的な学びを支えてきました。例えば、小学生や教員を対象にしたプログラムには、エネルギー・水・ゴミなど資源問題、生物多様性、光害(ひかりがい)などのワークがあります。
水の使用量の測定の様子 2019年9月に聖心女子大学・教育学科開講のスタディツアーで、筆者はNaDEETを訪問しました。NaDEETでは、「教えていることは、自ら実践する!」というモットーのもと、高床式の小屋に寝泊りしながら、サスティナブルライフを体験する中で学びました。NaDEETのシャワーや洗面台には、水道の蛇口はなく、使う分の水はタンクから、必要な分を自分で運んで使います。黒く塗られた容器の中で、日光によって温められた温水も使用できます。使った分量は記録し、一日の使用量をふりかえり、有限の資源をどのように使ったらよいか自ら考える時間となりました。また、太陽光を利用したソーラクッカーやソーラーオーブンでピザやパンも作りました。
ソーラクッカーとソーラーオーブン エネルギーの授業では、SDGs7(持続可能な開発目標7)に掲げられている「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という目標の内容を踏まえながら、開発途上国の一般の市民たちの暮らしを事例に挙げながら、エネルギーの入手や貧困問題などについて学びました。
 ゴミ問題については、滞在中に出たゴミを全て分類し、極力再利用していく方法を探りました。紙ごみを、水で溶かし着火剤として再利用する体験も印象的でした。
 生物多様性をテーマにした屋外ワークでは、実際に動植物を観察したり手で触れたりしながら、砂漠の生き物の生態を学びました。過酷な砂漠環境で生き延びるために、動植物には様々な工夫が見られました。例えば、蒸散を防ぐための小さな葉や捕食を防ぐ棘、直射日光を反射するための白い枝、日中の暑さから身を守るため甲羅から白いワックスを出すトキトキ虫などが見られました。はじめは、虫に悲鳴を上げていた学生たちもワークが始まると、虫を探したり、手にのせたり、すっかり虫と友達になっている姿はとても印象的でした。
 星空観察のワークでは、産業の発達により、自然のリズムと相反する形で光が使われ、暗い夜が侵食されている実態を知りました。人工的な夜の光は、その土地に住む生き物の生体リズムを狂わせます。NaDEETのある自然保護地区は、国際ダークスカイ協会(IDA)からアフリカ大陸で一番初めに国際ダークスカイ地域(星空保護区)として認定されました。それは、光害の影響を考慮し、暗く美しい夜空を保護・保存するための優れた取り組みが評価されたためです。日没後、NaDEETでは、屋外での電灯など明かりの使用が控えられています。しかし、近隣のホテルの光が明るすぎるため、NaDEETは地域に対しても光害についての啓発と対話を今も続けています。この地域では80kmほど先にあるホテルの光が、肉眼で見えることにとても驚きましたが、このような努力で守られてきたナミブ砂漠の星空には、言葉が追いつかないほど圧倒されました。月が出ている時間は、月光が非常に強いため、星の印象はそこまで強くないのですが、月が沈んだ午前3時頃に見上げた満点の星空の迫力に思わず息を飲み、畏怖の念を覚えたことは今も忘れられません。
 最後に、NaDEETを創設したビクトリア・ケディングさんの小学生の娘さんの言葉を紹介します。
 「サステナビリティとは、母なる地球にやさしくすること。もらった分と同じ量を自然に返すこと。」